「インタビュー 上田先生に訊く」上田先生と上田研は謎が多いのですが II

前回に引きづつき、上田先生にお話を伺います。

研究室では何を?

上田先生は大学の研究室として研究を追及している事ってなんですか?

上田: 私ですか?私が。

訊き手: シェル芸はまた別です?

上田: シェル芸ではなくて、こっちですね。確率ロボティクスですね。元々専門って言ったらこれですね。確率論でロボットを動かすという事です。

何故、確率論がロボットに必要か。なんででしょう?

訊き手: 何でですか?

上田: 例えばロボットがカメラで周りをパッと見ました。さて何処にいるんでしょうかって言った時にこの建物は皆、部屋の形が一緒ですね。私の部屋かもしれないし、太田先生の部屋かもしれないし、藤江先生の部屋かもしれないし。三分の一の確率で、どこかの部屋にいるという話になる。じゃあ、その三分の一という知識に、別の知識を混ぜて、どれかを1にして他をゼロにすれば自分の位置がわかるという事じゃないですか。

その為にどうするかって言ったら廊下に出るとか周りをもう少し観察するとか。わかんないと動くんですね。人間は。ロボットもそうした方が良い。

1995年あたりからドイツの先生達がこれやり出して、皆偉くなってスタンフォードとかに行ったんですけど(笑)

で、2005年にその先生たちが英語の教科書を出して。その前にロボットモーションプランニングって凄い有名なロボットの教科書があったんですけど、それと同じくらい必読の教科書になりました。

その教科書が出た時に、私まだ27でしたけど、その研究の一部は23歳くらいからやってたので、これ見た時にあっ翻訳しようって思って一人で翻訳したんです。

訊き手: はー。

上田: 実はこの分野はfuRoの友納先生が日本の第一人者なんです。翻訳するときに少しだけですが面識のあった友納先生に相談すべきだったのですが、若いから一人でガメちゃって一人でやっちゃって・・・

もう、翻訳したいと思ったらもうすでに手が翻訳を始めちゃってて、私からいくつか出版社に接触して出版が決まって・・・

翻訳している時、何が辛かったって、自分がこれやっていいのかなあと後ろめたい気持ちで。

訊き手: へー。

上田: この確率の話は、僕が卒論やりつつ先輩の仕事を引き継いで実装していて、その時国内でやってたのが阪大の三浦先生と友納先生と僕とあと何人かて言うような状況だったんですけど。今もうみんなこれですね(笑)

訊き手: そうすると上田先生の師匠ていうのは誰先生なんですか?

上田: 師匠というニュアンスだと、当時博士の学生だった、静岡大学の小林祐一先生です。指導教官については、学部は湯浅秀男先生、修士は太田順先生、博士以後は新井民夫先生です。研究室は変わったわけではなく、同じ研究室にいて。

訊き手: その先生もロボット?違うんですか?

上田: みなさんロボットの先生です。研究テーマは、小林先生のチームから卒業していく先輩のを引き継いだものが多いです。

訊き手: はい。

上田: ただ、何かこれをやれと強制されることはなかったです。今の私も、学生さんには自由にテーマを選んでもらってます。

訊き手: なるほど。

上田: 学生の時の私はもう、好き勝手やってたって感じですよね。ええ。

訊き手: う~ん。

上田: で、新井先生に「こんなん考えましたー」って数式を殴り書いた紙を持って行って教授室に乗り込んで行って、「わからん」って言われて、「先生なのにわからないの?」みたいな。私の説明が悪いんですが。すごい失礼な学生(笑)

ただ、その後こってりとディスカッションさせていただきました。あと英語も泣かされながら直接指導を受けましたので、私の何が運がいいかっていうと、そういう教育を受けたことですね。

訊き手: え~なるほど、なるほど。

研究室っていうと、だいたい先生が研究されてることを学生もさきに興味があって、そこいって勉強するって感じですが。

上田: 僕それやっても、いいことはないんです。5年ブランク空いちゃったので、若い人の視点でテーマを見つけて、それを自分の馬鹿力で補うという作戦以外、ないんではないかと。ブランク以前も事務仕事ばっかりでもう、化石研究者ですよ(笑)

訊き手: う~ん。

上田: 今とは忙しさのレベルが違う、えぇ、レベルが違いますんで(笑)

鼻血出そうな位、忙しかったんで。で、プレッシャーがすごかったですね、はい。

訊き手: う~ん、う~ん。

上田: そして同じ忙しいでも、みんなこう、同じ事やってるのと、隣の研究室に遊びにいったら全然違う事やっているのとじゃ、もう全然違いますもんね。

訊き手: あ~なるほど、ん~。

上田: やっぱり、ロボティクス学科って、すばらしいんですよ。統一感が。

訊き手: あ~なるほど。

上田: そうなんですよ。だから働きやすいです。

訊き手: あ~なるほど。

上田: で、話を戻すと、今の研究テーマについては、翻訳した手前とりあえず確率ロボティクスと。

訊き手: う~ん。とりあえずですか?

上田: いや~でも~ほんと、だから、5年いないともう僕の知識なんかもまったく役に立たないんですよ。ほんとに。教えるくらいは出来るんですけど、要は世界で戦おうと思ったら、今の僕のレベルじゃもう全然だめです。

ほんと今、ヒィヒィ言いながら論文書いてて、まったく戦えない事はないですけど、しんどいです。研究のトレンドも変わっちゃってるし、ロボット動かすのも、どんどん難しい事しないと、またそんな簡単な事やってるのって言われるし、厳しいですね。うん、でもこれは一番高いレベルで戦おうとしているから言っていることであって、泣き言ではありません。現状確認ができないとダメです。

 

専門が麻雀からロボットになった学生時代

訊き手: もともとはこういったロボットに関連するいろんな研究をして行きたいなっていうのは、いつ位から芽生えてたんですか?

上田: そうですね、う~んと・・・学科は精密機械工学科で、麻雀バカだったので成績ビリで滑り込んだんですけど、その中で何をやるかな~っていったら、ソフトウェアなんだけど、やっぱり、体があると無いで、出来ること違うんで、プログラミングはやりたいけど、ロボット使ってやりたいなと・・・

訊き手: あ~なるほど、そこが繋がるんですね。

上田: そうですね。えらいもんですよ、もう4年の時に、配属された時に、やっぱりこれからはハードウェアとソフトウェアを融合させて、もっと面白い事しないとアカンと思うんですよっみたいなことを生意気に言ってて(笑)

訊き手: なるほど。

上田: やってた事はずっと、RoboCupでAIBO動かしてただけなんですが。ええ・・

訊き手: RoboCupは学生さんの時から?

上田: そうですね。4年のときから。だから私、RoboCup生抜きの教員です。

訊き手: え~え~

上田: 林原先生はもう先生だったから、学生からずっとやって、大学の先生やってる人間はそんなにいないんで、ちゃんとしてないと(笑)

そんな感じですね。

訊き手: そうすると、大学生になってからって事なんですかね。

上田: そうですね。コンピュータ触ったのも大学に入ってからで、Software Designで、何月号だっけ、インタビューが載ったんですけど、そのシリーズ二十何回続いてて、インタビュー受けた中で僕が一番コンピューター触ったの遅かったんです。みんな小学校の時からやってましたとか言ってて・・・

なんで本読まないでそんなもん触ってんのって正直思いました。僕が言うの何ですけど(笑)

えっと、ちょっと待ってくださいね、2月号。2006年2月号・・・2016年・・・?

訊き手: あっ若い、これ去年ですか、今年?

上田: 今年(2016年)です。若い格好をしてる、顔にも力をいれてる。

訊き手: ビールを飲んでるし。これをちょっと参考にさせてください。

上田: どうぞ、お貸しますよ。

訊き手: お借りしていいんですか?ふ~ん・・・。

他の先生が、世代的には、いろいろ、なんだろ、アニメの話を振ると、ガンダム世代とか、あと何とかって言ってたな、結構なんか幅広くしていらっしゃって、やっぱり物作りが凄く好きで・・・

上田: そうですね。

訊き手: あっやっぱり一緒ですか?

上田: いや、文学青年だったんで。筒井康隆とか安部公房とか寺山修司とか(笑)

僕は作らない人なんで、学生がCADいじって作ってるの見て、わ~すごいなぁって(笑)

すごいんですよ、みなさん、すごいんです。私は古いカリキュラムの人間なんで、製図も手でやったし。課題はいつも一番先に終わってましたけど(笑)

訊き手: え~え~

上田: 何か作るっていったら逃げてたし。

訊き手: ずっと神奈川ですか。

上田: 住んでるのはずっと神奈川ですね。

訊き手: 出身も?

上田: 出身は富山県ですね。西の端の農村。

田舎です。田舎だから、コンピューターなんて情報が無いので触れません。

訊き手: 話題を変えて、ありきたりな質問をいいですか?

研究室はどんな人に来てもらいたいですか?私の後ろに高校生や中学生達がいるって感じで。

上田: はい、なんでも来いです。幅広く対応できます。勉強できる子にも、できない子にも幅広く対応できる・・・

訊き手: はは。なるほど。

日経Linuxの連載は、ラズベリーパイでなんとかという・・・

上田: ラズパイですか?(箱を取り出して)ラズパイは、学生にすぐあげちゃうんですよ。買っても買っても・・・

これ一個一個がラズベリーパイです。これ一個が6千円位ですかね。6千円位で買えて、これが何かっていうとコンピューターです。えっとこれ(ノートPC)と同等です。これがLinuxで動くんですね。これがあの~全部電圧で信号出せるピンで、これロボットにつなぐと、どうなるかっていうと・・・あっ・・・これは写真で見せましょう・・・こんな感じで、ロボットになるわけですね。

訊き手: え~え~

上田: 私は工作しないので、このロボットについてはハードウェアの設計は私関与してないんですけど、RTさんっていう会社の人が作っていて・・・こんな感じで動きます・・・どれが一番面白いですか。これ、あのそこの廊下で走らせたやつ・・・壁づたいに行くんです。

訊き手: ほ~ほ~

上田: ギリギリ・・・

訊き手: なるほど、ギリギリ・・・

上田: で、このセンサーで制御して・・・

訊き手: 制御してるんですね。なるほど。

上田: ちゃんと計算してプログラムしたわけじゃないんですけど、カンで(笑)

訊き手: なるほど、へ~、すごい・・・

上田: 最後ぶつけるっていう(笑)

訊き手: これなんですね。

上田: Linuxを使うとセンサとモータのついたものもプログラムから簡単制御ができる、というような話を連載でしてました。それは一般の読者さん向けに、ホビイスト向けですね。

で、今度出る本はこれを大幅に強化したものです。こちらは大学生を恐怖に陥れるほど厳しい内容です。

訊き手: おお。

中高生は何をするべきか

次、何質問しようかな(笑)なんかすごく文章にすると難しいような感じになってきました。

上田:
専門的な事になると難しい(笑)

訊き手: そうですよね。すごく・・・

上田: 新橋の変な人の話でも(笑)

訊き手: いえいえ、全然そんな・・・。え~と~、若い子たち高校生とか中学生の子たちに伝えたい事って何かありますか。

上田: 高校生、中学生ですか?まあ、当たり前ですけど、しっかり勉強してください(笑)

で、そうですね、そんなに長く言えないので、言葉を選びだすとすごく悩むんですけど・・・やっぱり、抽象的に物事考えるっていうの大事で、数学ですね。で、1年の時からロボット触るっていうのがいい事だとは言ったんですけど、やっぱり物を見て組み立てるのって、限界があるんですよね。それ以上なんか、新しいことやろうとした時に、頭の中でいろんな事考えなきゃいけないんですけど、そういう時に物理とか、数学とか、国語もそうですね。効いて来ます。

学校の勉強っていうのは、ちゃんと考えられてああなってるので、しっかりやって下さいっということですね。作りたいんだったら、うちの学科くれば、そこからスタートでも、私個人としては構わんと思ってるんで・・・しっかり勉強してほしい。

訊き手: う~ん、なるほど。

上田: いろんな情報入りすぎるんですよね、今。ああいうことやっておけば受験や就職に有利だとかそういう話になるんですけど、やっぱり学校の勉強をしっかりやっといて・・・が大事。応用は、まあ、間に合うので、後からやっても・・・

で、私とかコンテストによく出てるので、コンテスト万歳人間のように見えるんですけど、コンテストは何か目的があって出るものなので、そういう所で活躍してても大人になってから、あんまりっていう場合もあるので(笑)。なにしろ17年関わってましたので、正直に厳しく言わなければならない立場だと思って言いますけど。

あんまりこの学科の志望者には、言いにくいんですけど、要は、コンテストって勝とうと思えばいくらでもその最短距離でいけるので。で、最短距離選んで勝つこともすごく大事なんですけど、決められたルール、決まってるとこで最短距離で行ってもいろんな事できる人間にはならないので、そこは注意したほうがいいかなって思うんですね。

で、飛躍しますけど学校の勉強をしっかりやると(笑)

訊き手: そこ大事ですね。おっしゃる通りだと思いますね。なんか、これからこの研究室でこの先、将来的に目指してるとことかってあるんですか。

上田: 将来的には何かまあ、そうですね、その話の延長なんですけど、やっぱり学生さん自身が、いろんな事を発信できるようになって欲しいなあというのがあるんですね。

作ってるだけで満足しちゃうんですね、みんな。そうじゃなくて、これ何の為にやっていて、誰の為に、で、どれだけ金になるか。そういうような事をちゃんと自分で説明して。とにかく、そういう事が出来る人、できるようにみんなを仕向けて、その結果なんか、面白い事が出来ればいいなあと思ってるんですね。

理屈の難しいこともやりつつ、まあブームみたいなものを作ってくと面白いかなぁと思ってるんですよね。例えば、小中学生向けにこの前講習会やったんですけど、ちゃんと五教科勉強しろとかいいつつ、そうじゃない事やってて、ちょっとあれなんですけど(笑)

ええと、タミヤのマウスの模型を改造して、デジタル回路の勉強をしてもらおうと。学生さんに設計してもらいまして。みんな勘が良くてですね、これ技術的にも結構面白くて、部品点数最少なんですよ。これ以上簡単にならないですよ(笑)。マウスの上に乗っちゃうから、3千円位で作れちゃうので、子供に持ち帰ってもらえるんですね。

で、作っただけじゃダメで、学生さんにちゃんとウェブサイト作って、説明をちゃんと書いてってお願いしてやってます。作ったらちゃんと説明書かないと誰もできないでしょと話しをしていて、そのへんの、記述力をちゃんと鍛えるということですね・・・。あと、最近だと動画作成能力も。YouTuberになれとかよく冗談言ってますが。

訊き手: なるほど。

上田: 最初にオープン系って言いましたけど、こういうのをしっかり発信して、面白い事やってるね、と口コミで広がっていくのが、その世界の流儀です。国がなんか計画を立てて、というのと正反対の世界。面白い事を誰かがやっているとわーっと人がやってきて、もっと面白くしてくれる、そういう世界なので、そういうのも着火点になれるようにして欲しいなと。そういうものが、ぽんぽんぽんぽん研究室から出ていけばいいなと思ってるので。

訊き手: たしか以前に「オタクで終わらせない」と、どこかで書かれていたのですが、そういうことですよね?

上田:そういうことですね。いやオタクでもよくて自分も大概オタクなんでお前が言うなって感じですけど、やっぱり何がおもしろいのかちゃんと、お客さん相手に伝えないといけない。

訊き手:そうですね。

上田: 大学の研究室でやることって社会で役に立たないみたいな論調ありますけど、オタクに走っちゃうとそうなっちゃうんですね。そうじゃなくて、ちゃんと発信しようとすると、結局論文のフォーマットになるんです。結局それが一番洗練した形なんですね。だから、論文の書き方をちゃんと教えれば、それも出来るようになる。ので、だからやっぱりそこが一番大事かなって思ってるんですよね。サラリーマンやってたとき、自分のやりたいことややったことを伝えられない人が大半で残念な場面を大量に見ました。逆に何にも考えてないゆえに舌ぽう鋭い人が目立って無意味に評価されることもよく目にしますけど、ものすごい社会的損失だなと思って。学問が役に立たないと思っている人は、自分自身が無駄に溢れていることに気づいてないんです。

「スポーツは?」「囲碁やってました」

訊き手: 何か運動とかされてましたか?

上田: ぜんぜんしません(笑)。中学校の時、バスケ部でしたが、去年スポーツフェスティバルに駆り出されて、2分走ったら足もつれて動かなくなっちゃって。シュート打ってもなんか2メートルくらい手前で落ちるし。ダメ。

訊き手: そうすか。なるほど。

上田: 部活動でいうと高校ん時に囲碁を始めて、富山県やる人全然いなかったから初段で県代表になりました。先輩によると2段くらいの強さはあったそうですが、単なる初段です。けど、女子の部に五段の子がいて、全然勝てなかったから何が県代表かっていう話ですけど。
男子と女子に分かれていたので、どっちが本物の代表ってことは無いんですけど。

訊き手:あーへー。なんとなく煮詰まってきましたね。大体聞きたいなって思う事は聞かせて頂いたんでこのへんで終局ということで。

上田: はいどうも〜。

 

「インタビュー 上田先生に訊く」上田先生と上田研は謎が多いのですが I

場所: 上田准教授室,日時:2016年秋

異例の経歴

訊き手: 一時間くらいお話し伺えたら。

上田: はい。ネタは豊富なんで。

訊き手: ネタは(笑)そうですよね。上田先生のことちょっと検索させていただくと、いろいろ写真がドバーッと出てきて。

上田: 全部私でした?

訊き手: 全部ではないですけど。

一回お話を伺って私の方で原稿起こしをして、上田先生に見ていただいて、これちょっと使えないなとか、言えない話とかもあるでしょうから。

上田: 分かりました。じゃ突っ込んだ話を(笑)

訊き手: むしろ、上田先生は執筆活動とかやってらっしゃるので文章とかも上手いと思うんで、そこらへんは、また。

上田: 分かりました。以前インタビュー受けて、全部自分で書き直すというズルをした事もあります。

訊き手: ほーー。たしか専門雑誌に執筆連載されてましたよね?

上田: そうですね。やってました。この前まで日経Linux(日経BP社)でやってて・・・

訊き手: あ、そうですね。拝見しました。

上田: その前はSoftware Design(技術評論社)ですね。

訊き手: 大学のお仕事の他に、学外の事ってかなりやるんですかね?幅広く色んな事やってますよね?

上田: はい、そうなんです。大学の勤務に関係ないことは時間外にやるようにしていますが、ぜんぶつながってるので区別がつかないですね(笑)

訊き手: それはもう随分昔からなんですか?

上田: 一般誌で書き出したのは、サラリーマンの時ですね。

訊き手: えっと、USB?

上田: USP。

訊き手: あっUSPでした、USP研究所っていうのは?

上田: 研究所と言っても、私が入った頃は8人くらいの会社で、面白い会社でしたがその当時はこじんまりと。

訊き手: じゃそこになんかこう、引き抜かれたみたいな感じ?

上田: いやあの、自分から行ったんですね、ふらっと・・・

訊き手: へーっ。

上田: もともと東大で働いてて、若かったんで、我慢が効かず嫌になっちゃって・・・

訊き手: えー(笑)

上田: 嫌になっちゃったので、1、2年位なんか面白いところで遊んで来ようって・・・。知り合いの慶応の先生にいろいろ紹介いただいて、なんか一番勢いあるなと(笑)

訊き手: でもすごくお仕事的には、研究してることに関連してるような・・・

上田: ロボットとは直接は関係ないのですが、Linuxというものを扱っていて、そういう点では深く関係してますね。

上田: ソフトウェアの世界って、大きく分けて、オープン系とそうでない系とがあるんですよ。

訊き手: はい。

上田: 要は、UNIXとかLinuxとか、公開されたコードを使ったり作ったりしてやってる人等と、Windowsとか使ってる人たち、あとは銀行のメインフレームとかですね。文化が全然違うんです。

訊き手: はいはい。

上田: 僕は研究でずっとWindows使ってたんですけど、UnixやLinuxの世界のほうが実はメインストリームで、全然仕事の考え方が違う。これからたぶん、どんどんそうなってくだろうなと思っていて、なんかそういう仕事やってる所ないかなぁと・・・

訊き手: あーあー、なるほど。

上田: で、あとプログラミングに自信があったんですけど・・・

訊き手: えーえー

上田: 腕自慢しているのが、コードを人に見せながら仕事をしているUnixやLinuxの世界の人たちで、そうでない自分がどれだけ力あるかも、分からなかったので。

訊き手: あっ、てことは、すべて含めて、一回外出て、ちょっとってことなんですね。

上田: そう、ちょっとね。

訊き手: あっ、それで「新橋のサラリーマンだ」といつかの自己紹介のときに名乗ってたんですね?

上田: 名乗るというか、正真正銘の新橋のサラリーマンです。ほんとに。プログラミングだけでなくて、外回りもしてストレス溜めて営業の人とニュー新橋ビルで飲んだくれてましたので。SL広場で酔っ払ってインタビュー受けるような。毎日あんな感じです。

訊き手: あーあー、なるほど・・・(笑)

上田: 最初、会社入ったとき、これくらいの事務所ですね、私の部屋と学生の部屋の中間の大きさですね。

訊き手: でも、ちょっと会社の概要ちらっと見させて頂いたら、取引先は大手ばかりですね。

上田: そうですね。それだけの規模でも大手の一次受けができる力のある会社です。ただ、肩書きにこだわるわけじゃないけどぶっちゃけ東大の上田先生からいきなりただの上田さんになってしまったんで・・・。正直に言うと転職当時は背筋が冷たかったですね。

訊き手: ええ。

上田: で、話が長いんではしょると、今の連載とかの仕事は、その後いろいろあって、いろんな人のおかげで舞い込んだもので、やっぱり自分がうまく他者と関わりあって、力を出していれば、どこにいようが人がちゃんと仕事もってくるんで・・・

訊き手: ははは・・・なるほど・・・

上田: 大丈夫なんですよ・・・私クビになって、明日から放り出されても別に・・・。あぁでもやっぱり辛いですけどね(笑)

訊き手: (笑)

上田: もうアカデミアに砂かけて出るつもりもないですが・・・。いや、どうでしょう?

訊き手: ぜんぜん書けない。話が(笑)

上田: いやいや、いいんです書いて。戻るのに結局、何年かかったんですかね、5年だ5年。

訊き手: 5年はすごいですね。

上田: 東大では助手だったんですが、僕が独法化した年の最初の助手だったんですね。昔って見所のある奴は博士課程中に助手にしちゃって、教授が研究というより研究室運営の英才教育して。その流れで博士2年になりたての時に。退学届に「本校に勤務するため」と書いて。こうなると、独法化前は、国家公務員なんで絶対首にならないんで、地方大に行って助教授やって東大に戻るとか他の大学行くとかそういうルートだったんです。けど私の時、独法化でそれがほんの少し怪しくなっちゃったんですね。

訊き手: あー

上田: でまぁそれは大した話でないんですけど、国立大の中にいるとですねぇ、今、予算がけずられたとか、いろいろ問題が取り上げられていますけど、もう、その予兆がすでにあったんですよ。そのまま他の大学で働いてても良かったんですけど、なんか大学に向けられる行政とか社会の目がすごくいやらしいものに感じたので、働いててもなんか誇りがない。それならまだ30歳だし、一回外に出るなら今しかないと思って。で、新橋に行ったんですね。と言っても他にも理由は多々ありますけど。

訊き手: なるほど。新橋5年位でしたっけ?

上田: 5年。正確には4年半ですね。

訊き手: でも非常に有益だった5年じゃないですか?

上田: 有益でしたね。研究者としては一旦終そこで終わっちゃったんで、今大変なんですけど(笑)。追っかけなきゃいけないんで。行って帰ってきたらディープラーニング、ディープラーニングってみんな言ってて「何それ?」って、そこからスタートですから。いま学生さんが優秀で自分でやってくれているから僕も横にいて勉強になるんですけど、いやどうしようかなと思っていて。責任もあるし。

(補足: とおっしゃっていますが、2016年度だけでこれだけ研究をされています。)

訊き手: 千葉工大に来られるきっかけって何かあったんですか?1年半位ですよね。

上田: えーとまぁ公募に。その前2年間が産業技術大学院大学でこちらも公募です。

訊き手: そうですか。

上田: 4年半、研究から離れてて戻れないなって思っていたら社会人大学院の公募が出てて、ここなら力になれるなと。実は知り合いの方もいらっしゃったので、どんなとこか話を聞いて、産技大だけに公募を出したら、やっぱり昔の研究と、その時の企業経験を両方評価いただいて拾っていただいて。

訊き手: そうなんですか。

上田: で、産技大で研究を再開して、幸いなことに割と早く研究成果が出て、論文書いてとやってたら、1年半目で、ある学会の集まりで・・・

訊き手: あーロボット学会ですか?

上田: ロボット学会のなんとか委員会ですね。

訊き手: あぁ委員会。

上田: ある先生が千葉工大で募集が出てます。どうですかっておっしゃられて。

訊き手: あーそうなんですか。

上田: 私立向きですよって言われて・・・(笑)。で公募出したら何故か選ばれて、そんな感じでした。何故かと言うとよろしくないので、過去やってきたことと、産技大で書きためた論文や書籍で評価いただいたというところでしょうか。

訊き手: じゃもう入る前にはこの未ロボの事、知ってるとかそう言う事ではなくて?

上田: いやいや知っておりました。個人的にはつながりはなかったんですけど、業界じゃあやっぱり有名なんで。fuRoもあるし、千葉工大イコールロボットみたいなのがやっぱあったので・・・。未ロボ自体も有名ですし。あれ、ところで未ロボって10周年ですかね?

訊き手: そうですね2016年で10周年。

上田: 10周年ですよね。未ロボが出来たちょっと後くらいで私がドロップアウトしてるんですけど、ロボットの先生いっぱい集まってるって業界ではザワザワしてたんで(笑)

訊き手: あーなるほど。

上田: あと、ここでロボット学会やった時に私来てます。1回だけ。

訊き手: あっはいはい。やりましたねぇ。

上田: あっなんか手伝われたんですか?

訊き手: え~と私は(誰かバレるので割愛)

上田: (笑)。6号館でやったんですよね。私、6号館は覚えてるんです。

訊き手: あっそうですか。

上田: まだここ(2号館)無かったですよね。

訊き手: 無いですね。

上田: そうですよね。あの建物(6号館)だけ覚えてる。

訊き手: あっは、なるほど。じゃなんだかんだ接点はすごくあったんですね。

上田: そりゃまぁそうですよね。

千葉工大や未来ロボティクス学科の印象は?

 

訊き手: なんかあれですか?未ロボに着任されてなんか印象とかってなんか。

上田: う~んと そうですねぇ・・・綺麗だな(笑)

訊き手: (笑)

上田: 過去の職場がどうのこうのという話ではないですけど、新橋のサラリーマンだとタバコ臭い人との仕事が多くて、たまにイベントとかでニフティさんとかヤフーさんとか行ったりしたら、あぁこんな綺麗な所で俺も働いてみたいな、と。その前の東大も当時は鉄サッシが歪んで蚊が出入り自由なところでロボット動かしてたので。そのあとちょっとだけほどほど綺麗なビルにいましたが(笑)。もっと綺麗なところで働いてみたいなとか思っていたら、あ、働けたみたいな(笑)そんな感じです。まあ第一印象なんてそんな感じです。

訊き手: 第一印象は…なるほど。

上田: まぁあとは、そうですね。やっぱり先生達。あっ米田先生だ!とか(笑)

訊き手: 有名?

上田: そりゃそうです。あと南方先生とはよくRoboCupで一緒に仕事してました。

訊き手: あーはいはい。

上田: 林原先生も。たぶん2000年からずっと同じ会場にいたんですけど、チーム活動に集中されていて、着任直前に初めて話しました。で、お話ししたらご近所同士だったという・・・(笑)

訊き手: たまたまですか?

上田: 偶然も偶然です。

訊き手: (笑)RoboCupの方は林原先生の方とは違うリーグで?

上田: そうですね。私AIBOのリーグにいて、ずーっとAIBOばっかりさわってました。で、東大から出た時も、他なんにも出来なかったんで、これ研究者として食ってけねえや、と思ってました(笑)

訊き手: (笑)なるほどね。

上田: 今思えばそんなことないんですけどね。ほんとにね。自信が無かったんですね。

訊き手: 今年(2016年)もRoboCup行かれたんですね?

上田: 行きましたドイツ。

訊き手: 世界大会。あれは、えっと、どのチーム?

上田: えっと@homeリーグと言って、家事のロボットをやるチームですね。

訊き手: ちょっとみたんですけど、学生さんを連れて行く為の費用のために寄付を募ったとどこかに書いてあったんですけど。

上田: そうですね。そのためというより、工学研究のために募り、その中でこういう活動もあるよということで。

訊き手: あれやっぱ集まったんですか?

上田: ありがたいことに。

訊き手: すごい。

上田: いや、でもまあ、そんなこと言ったら他の先生の方がもっと外部資金は獲得されています。私の場合はルートがおもしろくて、サラリーマン時代にイベントで名刺交換した、いや、名刺交換どころじゃない。一緒によく飲み食いしていた方々からいろいろ助けて頂いて。

訊き手: 何人ですか?学生さん。

上田: ドイツに行ったのですか?6人です。

ドイツ大会のメンバー

訊き手: なるほど。結構そういう繋がりって大事ですよね。

上田: 繋がり大事ですね。

訊き手: サラリーマンの時代があったっていうのは、かなりじゃあ今、有意義ですね。

上田: 有意義は有意義ですね。この歳になって思うのは、「失うものがあったら、得るものがある」という(笑)

訊き手: ほんとそうですね。

上田: どうなんでしょうね(笑)

訊き手: 何人か先生方にインタビューさせて頂いて、大体皆さん暇がない忙しい学科だって仰って。

上田: あ、そうですね。ただ私はいろんな条件が重なってまだ楽させていただいてます。

訊き手: あ、そっか。タイミングが。

上田: ただ、学科の仕事が忙しくないのにつけこんで、別の仕事を目一杯詰め込んでしまい、今にっちもさっちも行かないです(笑)。でも、忙しいというのも、どうなんですかね。サラリーマンよりはっていう所もあるので。納期が迫ったときのお客様、かなり怖いですよ(笑)

訊き手: でも私他の学科もちょっと出入りしたりしてるんですけども、多分この学科の先生が一番忙しいんじゃないですか?

上田: 忙しいと思いますね。

訊き手: 他の学科の先生も忙しいと仰る割にはけっこうゆったりされてますよね。

上田: え~(笑)そうですか?そうか。まぁロボット屋は忙しいですからね。特に自分で作りだすと。

訊き手: そうですよね。一年生からロボットすぐ作らせるって言うのは他ではなかなか無いって聞きますけど。

上田: なかなか無いですね。

訊き手: あれはやっぱりいい事?

上田: いい事だと思います。ただ、いいことと悪いことは表裏一体なので、研究室でどれだけシバキあげる、もとい、補うことが出来るかっていうのは、考えてることです。

訊き手: なるほど。

上田: いや、いい事しかないですね。その後ちゃんとやれば、ですが。やっぱり大学1、2年生で座学やっても何のためにやるか良く分からない。私もそうでしたけど。私麻雀ばかり打ってました。

訊き手: (笑)そうなんですね。

上田: まぁ私がもしこの学科に入学してきたら、たぶん逃げると思いますが。

訊き手: (笑)そうですか。

上田: ただまぁ、さすがにほとんどの方が無事に卒業されるわけで、とてもいいと思います。ちゃんとやるべきことが時期ごとに適切に設けられていて。

訊き手: 4年間頑張ったらほんと力つきますね。

上田: いや力つきますよ。もう。さっきも言いましたけど千葉工大の学生さんは何故か自虐的なんですけど、社会出たらもう引っ張っていく方なんで。頑張んないといけないんです(笑)

中小企業だと大学生なんて新卒でとれないんで、貴重なんですよ。それを誰もわかってない!(笑)

規模の小さい会社から上場企業まで、いろんなところに行って、時には常駐していろんな人たちと働いたんですが・・・。結論としては鍛え上げられた千葉工大生は即戦力です。

訊き手: 自信持った方がいいですね。

上田: 自信持った方がいいんですよ。自信ないとか言いますけど、そんな事は決してないので。

訊き手: よく一生懸命みんなやってますよね。

上田: やってますね。

大学の先生わかんないと思うんですね。千葉工大の学生さんがその先どんなふうに仕事するのかって。大卒がいないっていう仕事場が世の中の大半なのですが。見たことないでしょう。大半でもないか。

訊き手: 多いですね。

上田: 最初は大きい会社に勤めて大卒ばかりのところで働くんでしょうけど、そういう現場で働いたら、やっぱり引っ張って行かないといけないので。もっと自分を大事にしてほしいなっ、とか思ってます。

訊き手: (笑)なるほど。

 

シェル芸って何ですか?

あの上田先生のブログ?「上田ブログ」っていう名前で、皆さん結構閲覧してる方が多いって。

上田: そうですねー。まだまだです。

訊き手: もう何年位されてるんですか?

上田: あれは3年くらい前からですね。

訊き手: そうなんですか。上田先生のファンがかなりいるって事ですよね?

上田: 私のファンですか?私自身と言うよりはコミュニティーがありまして。USP友の会っていう。まあUSPの社員では今無いんでスタンスが難しいのですが。USP友の会というのは、シェルスクリプトのコミュニティーでして。社長がそういう会やったら面白いみたいな感じになって、んで、広報だった人が凄く力のある人でグイグイ会を引っ張って、私がなぜかお飾り会長に据えられて、ずーっと活動してるんです。もう8年くらいやってるんですよ。

訊き手: それはリアルな所で集まるとかそういう事もあるんですか?

上田: ありますあります。最初は定例会って2か月に1回、ひたすら酒を飲むという。パソコン開いて(笑)

訊き手: 今もですか?

上田: そうですね。今は2か月に1回勉強会やってまして。大体募集かけると1日で満員になっちゃう。

訊き手: 何人くらいですか?

上田: 40人くらいですかね。それ以上増やすと参加者全員に目が届かなくなるので限定してます。あと大阪と福岡でサテライト会場を用意していただいております。

訊き手: じゃあ出張されるわけですか?上田先生。

上田: いいえあのYouTubeで中継して。向こうは向こうで集まってワイワイやってるので、逆に中継してもらうこともあります。

訊き手: なるほど。なんか面白そうですね。

上田: 面白いです。何やるかっていうとLinuxの使い方でコマンド使って色々出来るんですけど、それをやるみたいな。

訊き手: 年齢層とかはどんな感じ?

上田: 年齢層は学生さんから・・・

訊き手: 大学生ですか?

上田: そうですね千葉工大の人がやたらと多いです。私が千葉工大来る前から多いんですよ(笑)

情報の学生さんとか(笑)

訊き手: あーはいはい。

上田: で、学生さんからおじいさんまでいらっしゃっしゃいます。定年された方は何回か来てちょっと若い方に圧倒されて来なくなるケースとかありますけど(笑)

訊き手: (笑)

まれに中学生が来てとかそういう事はないんですか?

上田: 中学生は・・・さすがに。うちの子がいっぺん出て小学生が来たとか言って(笑)

訊き手: (笑)

なるほど。

上田: 何やるかっていったら、え~とこんな事をやるんですね(パソコンのキーボードを叩く)。これMacですけど、そうですね 、たとえば1から10まで足し算したりとか。あの、UnixとかLinuxとかは、お使いになりますか?

訊き手: いや、まったくです、すみません。

上田: これWindowsだとこういう使い方しないんですけど、もともとコンピュータってこうやって使うんですね。たとえば素数出したいっていったらfactorって打つと因数分解してくれて、で素数だから二つこっちが元の数こっちが因数分解だから・・・これ一個だけの奴、素数ですよね?でこれが二列しかない奴ったら2, 3, 5, 7て出てくる。

訊き手:(何が何だかわかりません。)

上田: こういう問題をやるんですよ。

訊き手: へーなるほど。

上田: でこれ何がいいかっていうと、乱暴なこと言うと、ロボットはみんなこれで動くんですよ。ROSって今あるんですけど、こういうのも基本的にLinuxで動いて、研究者はコマンド叩いて操作するんですけど。

訊き手: へー。

上田: プロになるほど、こっちの方が楽になるんですよ。

訊き手: あっそうなんですね~

上田: マウス使ってると面倒とか。

訊き手: はいはい。

上田: 論文とかTeXとかで書きますよね。それも、例えば、じゃちょっとこれを(パソコンをいじり出す)。これ、こないだ査読でボロクソ言われて落ちてしまった論文。こうやってmakeってやって、make cleanってmakeってやると・・・で、openってやると。あエラーが。エイッ。エラーが。なんて間が悪い。別んとこでmake clean、makeと、こんな感じで変更できるんで。マウス使わないです。

訊き手: なるほど。

上田: これ達人になってくると、仕事がめちゃくちゃ速い。

訊き手: すごい。実践型で効率的ですね。

上田: で、今は皆いきなりWindowsから入るから、これ分かんないんですよ。物凄い時間無駄にしてて。なのでこれをもう一度復権しようって言う事でやってるんですね。会社でやってたのもこれなんです。こういうやり方で皆やっちゃいましょう。で、企業のシステムもこれに似た方法で作る。

訊き手: ほーなるほどら、ひとついいですか?シェルゲーっていう言葉を上田先生が考えた。

上田: ええ。そうです。シェル芸です。

訊き手: シェルゲーって言うのは、なんなんですか?

上田: 今のやつです。

訊き手: 今のが。あ、なるほど。

上田: 昔はこれコマンドワンライナーって言ってたんですね。で、一種のマーケティングで、なんと言うか微妙な名前をつけて再定義するとみんな楽しく勉強し出すという(笑)

訊き手: (笑)

上田: 勉強会では、こういう問題出していくんですね。

訊き手: なるほど。

上田: こんな風にコマンドぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃって書くと答えが出てくる(笑)

訊き手: へー。そういう事なんだ。

上田: 昔はみんな習ったんですよね。

僕も大学生の時ちょっとやりましたけど。すぐ嫌になっちゃいました。計算機センターってとこ行くとWindowsじゃないマシンが並んでて、先生から、コマンドというものがあって、これでこうやって三つ繋ぐと印刷できるんだとか習うんですけど、そん時僕、Windowsでアイコンクリックすればいいじゃんとか思って。先生もなんか退屈そうで、熱がない。クソつまらない。

つまらないなら、面白くするのが商売人でも先生でも、つとめじゃないですか。ということでシェル芸です。

訊き手: ふ~ん。なるほど。

上田: 本が今あっちの部屋行っちゃてる。その本が・・・少々お待ちください。

訊き手: おっ。えー。

上田: これがシェル芸の本です。

訊き手: わーすごい。

上田: ひたすらコマンド地獄。

訊き手: わぁ。すげえなこりゃ。へー。あちゃー。

これ何処からですか?

上田: 技術評論社さんです。

コンピュータの世界って実は字の世界で、それの処理が、情報処理の世界ではほとんどです。この字をこの字に換える、そういうのが全部、この黒い画面にバーッと出来ちゃう。

訊き手: なるほど。そういう。

上田: で、こっちの本が、これの前の年にKADOKAWA/アスキーメディアワークスさんから出した奴。ウェブサイトをこのテクニックで作るっていう。

訊き手: ふ~ん。

上田: こんなわけのわからんコマンドの羅列でウェブの画面ができる。

訊き手: へ~。

 次回へ続く

「インタビュー 藤江先生に訊く」 藤江研究室ってどんな研究をしているの?ⅠI

場所:藤江研究室,日時:2016年秋

前回に引き続き藤江先生にお話を聞いていきます。

訊き手: なるほど。さて、研究室の方のお話を少し具体的にうかがいたいと思います。

藤江先生: 始めに説明しました通り、音声を研究している学生、画像を研究している学生、ロボットあるいはシステムを研究している学生がいます。研究の内容としては音声とか画像を扱っている学生は音声から感情を読み取ったり、画像から表情を読み取ったりしています。システムを扱っている学生は、対話システムや会話ロボットを実際に作って、人と自然な会話ができるかを確認するといった研究をやっています。

訊き手: それらの研究は、どちらかというと研究内容としては遠い未来に形ができあがる基礎的な研究というよりも、近いところで形になっていくイメージの研究ですね。

藤江先生: そうですね。

訊き手: ちょっと前までは見たことのなかった画像認識や音声認識も、最近では生活の中で見かける場合も出てきましたね。そういったところのさらに進んだ部分の研究をされているのですね?

藤江先生: そうですね。今まさに巷で、人工知能ブームで、今の技術でやれば何でもできると思っている人も多いと思うんですけど、そう簡単ではありません。問題を見つけるセンス、観察力というものが必要ですし、実際に物を作って使ってみて初めて分かる問題点というのもたくさんあるわけです。例えばPepperをはじめとして市場にロボットが出てきていますが、使ってみて全然ダメだねと言ってポイと捨てちゃうような感じでは研究になりません。その何がダメなのか、ダメとわかったところを埋められるかどうかというところが勝負ですね。とは言え、そのような場当たり的なことだけやっているだけではなく、遠い未来を見据えて研究をすることも大切だと思いますね。

学生時代に身につけたいこと

訊き手: なるほど。藤江先生の研究室の学生さんが頑張っている姿をガラス窓越しに拝見することが多いのですが、研究をするにあたって、これは大事だよって伝えていることは何かありますか?例えば忍耐力とか?(笑)

藤江先生: はい…(かなりの間があって)「疑い」ですかね。

訊き手: 疑いですか。物事に対して常に疑うという視点を持つということですか?“常識”と言われるものにとらわれない、ということですね?

藤江先生: そうですね。ちょっと夢の無い話かもしれませんけど。研究者にとっては大事な視点です。何にでもそういう視点を持つというのは、学生にも必要だと思いますね。1年生の初めに話すときも、伝えるようにしているのです。教科書を信用するなと。教科書すら信用するなって(笑)。

訊き手: 「教科書を信用するな」それは面白いお話ですね。学生さんはどんな風に聴いていますか?うなずいていますか?

藤江先生: 残念ながらうなずいてはいないですね(笑)。先生から「なんでこうなるの?」と質問をされたときに「ここにこう書いてあるから」と答える学生がいることは、他の先生もよくおっしゃっています。多くの人は、大学に入るまでは失敗することや疑問を持つ機会が少なくて、教科書に書いてあることや先生が言ったことはすべて「正しい」と信じ込むというのに慣れてしまっていると思うんです。研究を始めるといろんな論文を読むことになりますが、論文はいろんな人が主張したいことや、実験をやって証明してみましたみたいなことが書いてあるわけです。でもその実験がどれくらい信用できるものなのか?という視点が大事で、絶対鵜呑みにしちゃいけない。

訊き手: 厳しい指摘ですが、おっしゃることは同感します。

藤江先生: だけども、疑問を持たずに鵜呑みすることに慣れてしまうと、「そういう意見もあるかもしれないけど私は違うと思う」とか「私は違うやり方があるのじゃないかと思う」と考えることができなくなってしまうと思うのですよ。そこのところはちょっと鍛えないといけないなって思います。ではどうやればいいかってところは難しいところではありますね。

訊き手: 意図的でも物事に疑問を持つってことを習慣づけるって意外と大事だと思います。

藤江先生: 大事ですねー。

訊き手: 無理やりでもやっていけば、だんだんそういう視点になってくるのかもしれませんね。

藤江先生: バランスが大事だと思うんですけどね。

フィールドにはヒントが隠されている

訊き手: 藤江研究室の紹介ボードが廊下に大きく貼り出してありますね?あそこに介護が必要な高齢者に「漢字の問題を出して回答する…」あれはどんな狙いがあるのですか?

藤江先生: 会話ロボットでフィジカルなサポートは難しいので、会話を活かしてやりましょうという方針がありました。そこで実際、僕と博士課程の学生がいっしょに施設に一日お手伝いに行って、ロボットにできることがないか探しました。そこでやっていた、介護士の方が司会をやって本を見ながら「これは何と読みますか?」と質問をして、高齢者の方が「漢字の読みを当てる」というクイズゲームを見て思いつきました。このゲームは、これをきっかけにみんながワイワイしゃべって欲しい目的があるはずです。ロボットをこの中に混ぜて「盛り上げる」ことはできないか?と考えたんですね。ロボットを司会にして何かやらせるっていう発想が普通だと思うのですが、それは技術的にも難しいし、本来の目的はゲームの進行をするというよりは、面白い雰囲気、楽しい雰囲気をつくることだから、ロボットは高齢者側に入れて「ちんぷんかんぷんな回答」をしたりとか「変なことを言う」と雰囲気が和んで、他の高齢者の方たちが回答しやすくなったりするなどの効果があるんじゃないかって仮説を立てたんです。

訊き手: おもしろいですねー。和ませるのも計算は入っている?

藤江先生: そうですね。今どの問題を出されているかは、人間の司会者がiPadで選んでいるのでロボットはわかっています。その問題に合わせた「面白いエピソード」とか「ちんぷんかんぷんな回答」とかっていうのを適切なタイミングでしゃべるような工夫をしています。みんながじゅうぶん盛り上がっている時は、無理に割って入って変なこと言う必要もないので、ちょっと静かにしています。

訊き手: それは空気を読むってことですか?すごく難しそうですね。

藤江先生: そんなに難しいことはやっていないです。高齢者の方たちはマイクを付けているので、その声が入っているとか、発言が減っていないかとかを見ています。あとは、司会者から話を振られたら言いましょうとか、最低限、参加者としては守るべきことは守ったうえで、ちょっと盛り上げられそうだったら、盛り上げる振る舞いをするようにしています。そういうのはロボットならではだと思います。

訊き手: それは、プログラムを作って実現するのですか?

藤江先生: プログラムですね。もともとロボットはあって、動作などは一通り揃っています。あとは、どういうことを言わせたいとか、どういうタイミングで言わせるかっていうことをプログラムしていくことになりますね。

訊き手: いろんなデータを取ってそれをもとに作り上げていくっていうことですか?

藤江先生: そこまでできれば立派ですね。

訊き手: そこまでは難しいのですか?

藤江先生: 会話のデータをたくさん取って、こうしたときにはこうした方がいいねということを見ていくのが理想的です。音声認識なども大量のデータを集められるようになって発展してきました。しかし、現場に持っていける機会は限られているので、たくさんデータを集めるという方法は取りづらいです。これは会話ロボット、対話システムを研究している皆さん共通の悩みだと思うんです。特に学生の研究の実験では、所属する研究室の学生二十人にアンケートを取ることが限界だったりします。

訊き手: なるほどー。時間とお金がかかるのでデータをとるのが大変だと言うことですね。限られた中でどのように工夫をするか。

藤江先生: そうです。不特定多数の人にお願いをした場合、ありがとうございましたとお礼を言うだけではやってもらえません。限られた条件の中でどうやっていくのかがこれからも苦労するところでしょうね。

訊き手: おじいちゃんやおばあちゃん方との「漢字クイズ」は盛り上がるのでしょうか?先輩方は博学ですから。

藤江先生: そうですね。大変盛り上がります。ただ以前、漢字がとても得意な方が一人いて、うまくいかなかったときがありました。どんなに難しい問題を出してもその人がすぐに答えちゃう。ロボットが用意した面白い回答を言う暇もないぐらい(笑)。

訊き手: なかなかの想定外ですね。今後はどのような方向を考えていますか。

藤江先生: いま研究室にいる3年生の学生のおばあちゃんが、高齢者や認知症の方がいらっしゃる施設で、傾聴という「話を聴いてあげる」ボランティアをしているんです。

訊き手: 最近流行っていますね。

藤江先生: はい、それをロボットにさせられないかな?という話をしていて。

訊き手: なるほど、それはなかなか面白い視点ですね。

藤江先生: それはもともと僕もやろうと思っていたことです。ロボットに「うなずき」をさせたり「相づち」を打たせたりする研究を以前からやっていたので。傾聴のとき、そういったことをどのようにやってあげれば満足するか?ということが分からないので研究テーマとして魅力的です。他の研究者の人達も一生懸命頑張っていて、何かを言ったらそれに対して「適切な質問を返してあげる」とか「感心してあげる」とかそういうことを進めています。

訊き手: そこには、うなずきの他に、顔の表情とか身体の動きとかの関わってくるのですか?広がり過ぎるときりがない?

藤江先生: そこは難しいところですね。人の数だけ様々ですし、表面的に聴いてあげてるよってゆうふうにしていればそれでいいのかも分かりません。

訊き手: 満足度ということですか?

藤江先生: そうです。少なくとも、ボランティアが必要ということは、ぬいぐるみに対して話しかけて満足するということではないはずなので、何かしら反応を返してあげなければいけないということはわかります。しかし、人によっては今まで話したことに対してどう思いますか?と適切に返してあげないと「この人ちゃんと聴いてくれない」と不満を感じるかもしれません。その学生が言うには認知症の程度によっても変わるということです。認知症が重い人は、質問をしたときに満足しているかどうかがはっきりとはわかりません。でも、それでも話しているからそれでもいいかもしれない。一方で、本当の意味で会話をしたいと思っている人は、もしかしたら適当に反応しているだけでは、満足してもらえないかもしれません。

訊き手: 対象が人間である以上、現実を見据える厳しさと優しさを兼ね備える必要があるのですね。

藤江先生: 感心したりすることが機械にできるのかっていう疑問はあって、最終的には人の手が入らなければいけないのかなと思っています。現実的には、人がずっとしゃべるのに付き合っていると時間がどんどん奪われてしまいます。一時的な相手はロボットにしてもらって、録音なり録画したものを自動的にダイジェストにして、今日は太郎さんがこんなことをしゃべりました、花子さんはこんなことしゃべりましたよってことを、職員さんが見て感想を書きとめておくと、それをロボットを介して返してくれるといったこともできるかもしれないと思います。必ずしも高齢者とロボットの一対一で共有した時間だけじゃなくて、周りにいる人たちとうまく連携して高齢者のクオリティ オブ ライフ(QOL)を 全体として上げられるような仕組みですかね。そういう風に考えていかないと、変なものを作っちゃうと思うんですよね。ロボットなのだから何でもやってあげなきゃいけないって発想だと凄く狭いものになるし、満足いくものがなかなかできないってことになっちゃう。

訊き手: そうですね。これは必要な研究であることがわかってきました。

藤江先生: これからますます高齢者が増えるし、人手も足りなくなりますからね。最後は人同士が繋がりたいっていうのがあると思うので、ロボットはクッションのような働きをするのがよいと思います。いまはどうしても相手ができないのだけどっていう人と、今どうしても相手をしてもらいたいっていう人の間にいて、時間をずらして繋がれるように。空間を超えるという発想もよくありますよね。

訊き手: ぜひ良い成果がでることを願っています。

ロボットをもっと勉強したい中高生へアドバイス

訊き手: 中学生とか高校生で、ロボットを勉強したいなと思っている人たちに、中学・高校の時はどんなことをしたらいいよっていうアドバイスはありますか?

藤江先生: どうでしょうねー。さっきの話の続きじゃないですけど、世の中に売っているロボットのキットとか、そういうものを作って、経験するっていうのはいいと思ういます。でも、そこでいろんな失敗とか、いろいろ疑問を持ってみるといいと思うんですよね。例えば電子工作とかで、ここに何オームの抵抗を付けましょうとか、LEDをつけましょうかとか、いろいろ手順は書いてあると思うんですけど、なぜここにこういうものを付けなきゃいけないかとか、なぜここをこう繋げなきゃいけないかって考えられるともっといいと思う。それを取ったらどうなるかとか、切ったらどうなるかとか、そういうことをたくさんやって、壊してみてもいいと思うのです。僕もパソコンを壊したりしました(笑)。そういうことをやっておくと、勉強が楽しめるきっかけにもなりますね。あの時のあれは、こういう理屈で壊れちゃったのかということがよく分かる。

訊き手: その他に何かありますか?例えば大学の研究室に配属されると体力勝負になるから今から身体を鍛えておいた方がいいよとか(笑)。

藤江先生: 人付き合いがけっこう大事ですよね。当たり前なことかも知れませんが、やっぱり友達は大事ですね。天才以外は、友達と協力し合いながら、教えてあげたりとか、教えてもらったりしないと先に進めないと思います。会話のロボットは、たくさんの技術を詰め込んだものなので、1人で作るのは不可能に近いということもあり、私自身もその大切さを痛感しています。ただ人付き合いが得意である必要はないと思う。そこも疑問を持ってほしいですよね。自分が友達をつくるのが苦手だったら、何でできないのかなって。

訊き手: なるほど、それは大事ですね。社会に出た時にそれは身に染みてわかります。企業に入ってものごとを進めるときに個人プレーはないですね。チームがあってプロジェクトがあって。いろんな分野の人が集まってということを考えるとコミュニケーションは目標達成への大事なファクターですね。

藤江先生: そうです。自分が実際になる前は、研究者は実験室にこもって研究をして、論文を書けばいいのかなって思っていたんですけど(笑)、そういうわけでもないです。結局、人に認めてもらうには、人に伝えなければいけない。みなさん、得意・不得意はあると思いますけど、人付き合いを一生懸命やっていらっしゃる。

訊き手: なるほど。いま目の前にいる友達を大切にするということですね。実感としてそのことが良くわかります。今日は研究のご苦労話やプライベートなことまで楽しくお話くださりありがとうございました。

藤江先生: こちらこそ、ありがとうございました。

千葉工業大学 藤江真也研究室 http://www.fujielab.org

 

「インタビュー 藤江先生に訊く」 藤江研究室ってどんな研究をしているの?Ⅰ

場所: 藤江研究室,日時:2016年秋

今同士の会話に自然に溶け込むことで、人から‹仲間›として信頼され、様々な仕事をこなすロボットの実現」をめざして日夜研究に励む、藤江研究室の藤江真也准教授にお話をうかがいました。

訊き手: 藤江先生、こんにちは。今日は日ごろ研究室で行われているロボットに関する研究のことや、藤江先生ご自身のことをざっくばらんにうかがいたいと思います。先に断っておきますと、興味を持ってここをご覧いただく小学生や中学生、高校生に比べて、訊き手である私にはロボットに関する知識がまったくございません。彼らの中に素人の大人がぽつんと一人参加しているイメージで(笑)、お話しいただければと思います。

藤江先生: わかりました、よろしくお願いします。

訊き手: 最初に、藤江先生の研究室はどんなことを研究しているのですか?

藤江先生: 人とロボットが楽しく会話をする、快適に会話をするという研究をしています。

訊き手: ロボットと楽しく快適にといいますと?私はロボットがしゃべるだけで、感心しちゃうのですけど。

藤江先生: 会話というところがポイントです。コミュニケーションには様々な手段がありますが、その中でも言葉、声を使うことが中心になります。声でコミュニケーションを取るというと、音声を聞いて理解する能力だったり、しゃべる能力があればいいですよね?ちょっと難しい言葉でいうと「音声認識」と「音声合成」という技術さえあればできるかなと思うかもしれません。しかし、実はそれだけではできません。

訊き手: それだけではできない?それはどういうことでしょうか?

藤江先生: 実際に僕が今しゃべる時も、体や手を動かしたり、相手の人をちらちら見たりします。逆に、僕の話を聞いている人も、うんうんとうなずいたり、「おや?」と思うことがあれば表情を変えてみたり、時には驚いてのけぞったりとかしますよね?

訊き手: そうですね。無意識のうちに体や表情など、どこかしら動いています。

藤江先生: 人同士の会話は、場所とか時間を共有しながら、言葉だけじゃないもののやりとりがあって成り立っています。そういう意味で「快適」という言葉を使ったのです。ロボットやスマートホンなどの機械と会話をする機会は多いと思いますが、その会話はどこかぎこちなく「快適でない会話」ではないでしょうか。

訊き手: なるほど。場所や環境、その場の空気を含めて「快適」ってことですね。

藤江先生: そうですね。すぐに人と同じ能力持たせるのは難しいと思うので、「音声認識」や「音声合成」などの技術を中心に、どう能力を拡げていけば「快適な会話」に近づくか?ということを一つ一つ進めています。

訊き手: その「快適な会話」が藤江研究室での基礎的な研究になるわけですね。そこのところも後ほど詳しくお訊きしたいと思います。

千葉工業大学に着任して思ったこと

訊き手: 藤江先生は、2014年に千葉工業大学に着任されましたね。

藤江先生: はい、千葉工業大学に着任して2年半になります。

訊き手: 2014年というと「ロボットの千葉工業大学」というのが社会的にも注目を集めていたと思いますが、着任されて印象はいがかですか?

藤江先生: 研究室を構えるのは初めての経験なのですよ。それまでいた早稲田大学では、自分が学生の時の先生の研究室に所属して、先生が見ていらっしゃる学生の一部、指導教員の先生の研究室の学生のうち10人くらいの学生を受けもって、いっしょに研究したり発表したり面倒を見ていましたなどしていました。千葉工業大学では人数も増えましたし、3年生を受け持つのは初めてです。未来ロボティクス学科の印象ですが、ここの学科は色々な意味で、かなり特殊ですよね。

訊き手: かなり特殊?それはどんなところでしょうか?

藤江先生: 僕は電気工学科で学んだのですが、実習っていうのはあまりなかったですね。電気工学科だというのにハンダゴテを持って電気工作をやることがほとんどありませんでした。ロボットを作るにはそういった工作は避けて通れません。着任してすぐ、1年生の始めの授業「ロボット体験実習」を担当することになり、いきなりこういうことをやるんだなと思い意外でした(笑)。

訊き手: 初めてハンダゴテを持つ1年生は意外と多いと聞いていましたが、それを聞いたら1年生も安心して授業に向き合えますね。

藤江先生: あと、早稲田大学のロボットは比較的大きいですね。ロボットの研究をしている機械系の学科の人たちも、何人かのチームで1体のロボットを製作していました。例えば、二足歩行ロボットとか、発声ロボットとか、1人ではとうてい面倒を見切れないようなものを、チームを組んで作っていることが多かった。ロボットの研究は全てそういうものなのかな?と思っていたら、この学科では米田先生や青木先生、他の先生の研究室でもそうかもしれませんが、1人1体、自分のロボットを製作している。そういうスタイルもあるのだなと思いました。

訊き手: 研究内容にもよりますけど、たしかに1人1体が多いかもしれません。1年生のスタートからロボット製作だったり、研究室で1人が1体のロボットの製作に取り組んでいるのは、藤江先生のご経験からは特殊だったのですね。

藤江先生: そうですね。僕の研究室では、1人1テーマはあるんですけど、みんなで協力して研究を進めることが多いです。例えば、製作する会話ロボットで「音声を担当する人」もいれば「表情の認識を担当する人」もいる。いろいろな技術を集めるので、それぞれ分担しています。僕や大川先生の研究室を希望する人は、基本的にはパソコンを使った情報処理に関係したことをしたい人だと思いますが、中には機械製作の得意な学生もいて、会話ができる小さめのロボットを製作したりもしています。僕自身はあまり機械加工などをやってこなかったので、新しいロボットを製作するのは難しいのではと思っていましたが、学生の得意なところを活かして、会話に役立つしぐさを仕込んだ新しいロボットの製作ができています。色々な特性をもった学生がいることは、研究の幅も拡がるのでとてもいいことだと思いますね。

訊き手: なるほど。だんだん研究室のことがわかってきました。研究室の学生さんはご自分の担当を熱心に頑張っているでしょうね。卒業生はもう出ましたか?

藤江先生: はい。みんな個々に頑張っています。卒業1期生の1人は音声認識の会社に就職しました。研究してきた音声認識の分野で仕事をすることを選んでくれたのは嬉しいと思います。

訊き手: そうですね。研究したこと、好きなことを活かして就職するのは理想的ですね。

子供の頃はどんなことをしていましたか?

訊き手: さて、話題を変えて藤江先生ご出身はどちらですか?

藤江先生: 埼玉県です。

訊き手: 小さなころはどんな子供さんでしたか?

藤江先生: 期待されるような面白いエピソードはないですけど(笑)。どうだろうなー。コンピュータは比較的小さい頃からいじっていましたね。

訊き手: えっ?失礼ですが、その時代は今みたいにコンピュータが一般家庭に普及していない時代ではないですか?

藤江先生: そうですね。父親が買ってきたのが、僕が小学校の5年生ぐらいの時だったと記憶しています。当時はファミコンなどのゲーム機はあっても、コンピュータがある家庭は少なかったかもしれません。

訊き手: ちなみにどこのコンピュータですか?

藤江先生: NECのPC9801という機種です。

訊き手: なるほど懐かしい響きですね。あの時代の匂いがしてきます。

藤江先生: 僕らの世代だと、ぎりぎりフロッピーディスクを知っているか知らないかの世代ですね。大学に入った時は「データを記録する時に使うのでフロッピーディスク1枚持ってきてね」と呼びかけがあったり、なかったり(笑)。PHSやインターネットの登場もそれぐらい。「大学生になってからコンピュータを触った」という人がほとんどで、それより前に触っていたというのはめずらしかったと思います。

訊き手: そうですね、私の住む町でも「あそこの家にはコンピュータがあるんだって。へえーそうなんだ。すごーい。」みたいな真面目にそういう時代でした(笑)。そのコンピュータでどんなことをしていたのですか?

藤江先生: 専門雑誌を買ってきて、その雑誌の中に載っているプログラムを打ち込んだりして。ゲームですけど(笑)。

訊き手: 何事も導入部分は、楽しさから入らないと長続きしないものですからね。

藤江先生: 自分で考えて作ったりもしましたけど、デザインとかゲームをつくるというセンスは無かったので、それはものにはなりませんでした。でも、プログラムに必要な知識は一通りそれで得ましたね。

訊き手: では小学生の時は、家にコンピュータがあってそれに夢中だったと。ロボットとの関連はその時はまったくないのですね?

藤江先生: そうですね。正直に言うと、SFはあまり好きではなくて、ガンダムとかは見ていないです。スターウォーズも見てないし。「ガンダム好き」とか「スターウォーズ好き」の先生がわりと多くいらっしゃいますよね。僕はどちらかというと「鉄腕アトム」が好きです。アトムって人間臭いじゃないですか。捨てられたり、泣いちゃったりとか(笑)。ロボットって言ってもアトムだとかドラえもんだとか、ちょっと抜けている感じの、人と接するロボットみたいな。そちらのストーリーの方が好きですね。

訊き手: 手塚治虫先生の作品には人間を見据えた哲学的なものを感じますしね。では子供のころの夢は何になりたかったのですか?

藤江先生: コンピュータそのものに興味があって、大学で研究室を選んだ時も、「人工知能」というキーワードはありました。今でも人工知能の勉強がしたいという学生は、ひとりでに勝手に育つ知能や機械みたいなものを想像しがちですけど、同じようにそういうものを想像していましたね。そんなものをやりたいなっていうのはぼんやりとありましたね。

訊き手: 藤江先生は、運動とかスポーツはされていましたか?

藤江先生: 中学生の時までバスケットボールをしていました。

訊き手: バスケットボールをやっていた、あるいは今もやっているという先生がなぜか多いですね?大久保先生は研究もされていますし、青木先生も菊池先生も太田先生もやってらっしゃいますね。

藤江先生: 去年のスポーツフェスティバルに出場しましたよ。藤江研チームと教員チームの両方で出ました。しっかり1ゴールずつ得点決めていますから(笑)。小学生の頃は、当時はやり始めていたサッカーをやっていました。バスケットボールを始めたのは、中学の時に兄がやっていたので僕も中学になったときにやってみようかって。人口でいうと、サッカー・野球は多くて、バスケットボールは僕らが中学、高校に入るぐらいの頃、スラムダンク(マンガ)で人気が出てきたような感じでした。

訊き手: 小中も運動をされていて、コンピュータをいじるのも好きだし、バランスがとれていますね。どちらか一方に偏ってとか、閉じこもってとかじゃない?

藤江先生: そうですね。ただ最近は運動不足ですねー。

訊き手: それは先生がた、みなさん同じことをおしゃっていますね。お腹触りながら太ったーとか(笑)。運動してきたことやコンピュータを触っていた、そしていま教員をされているというのは、ご両親の影響を受けたとかありますか?受け継ぐものってあるじゃないですか?

藤江先生: 家にあったコンピュータは、小学校5年とかだったから10歳ぐらいですよね。兄はそのころ大学受験を控えていたので僕ほど触っていなかったと記憶していますが、今はその関係の難しい研究をやっていますね。

訊き手: ある日、お父さんが買ってきたコンピュータ。家にあった1台のコンピュータからご兄弟の将来まで広がってくるお話ですね。高価なものだから触るなよとか、壊すなよって言われなかったことも凄いと思います。

藤江先生: たしかにそうかもしれないですね。

訊き手: お父さんもまったく使わないものを買ってくるわけがないから、ご自分でも興味があったのでしょうね?そういう意味ではお父さんの影響を受けていらっしゃる?

藤江先生: そうでしょうね。単純に理系という意味ではそうかもしれませんね。大学に入るときの学科選びで、自分の中で数学・情報・電気みたいな順番がありました。数学は就職先を見ると、専門家になるか、あるいは全然関係ないものになるかしかなくて、これはちょっと将来不安だなと思って避けました。コンピュータに興味があるので情報が一番自分には合っているとも思いましたが、コンピュータだけだとやはり就職先が限られてしまうのではないかと思いました。じゃあ電気にするかということで、電気工学科にしました。

訊き手: 電気工学科を選んだっていうのは、その先に先生になるという選択肢はあったのですか?

藤江先生: 大学の先生ですか?どういう気持ちだったかはっきりは覚えていないですけど、大学に入る時点では修士課程を終えたら就職すると言っていましたね。僕らの時代は修士課程に半分以上の学生が行っていましたので。その先に博士課程に進むことは考えていなかったかもしれません。

 

IIにつづく

千葉工業大学 藤江真也研究室 http://www.fujielab.org

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