トップinterview-08

インタビューシリーズ:interview-08

「卒業後の進路は?」第1期卒業予定者のみなさんに聞く

司会:先川原 千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)室長
出席者:千葉工業大学未来ロボティクス学科4年生;和久敬哉、河野涼子、北條隆大、中村圭佑 (敬称略)

出席者全員の写真
向こう側左から、先川原室長、北條君、中村君。   手前左から、和久君、河野さん。

先川原:このたび未来ロボティクス学科がめでたく初めての卒業生を送り出すことになりました。そこで第1期卒業生のみなさんに、4年間の感想などを聞いてみたいと思います。

卒業後の進路は?
先川原:顔写真まず、それぞれの卒業後の進路と、どうしてそこを選んだかを教えてください。
和久 :顔写真未来ロボティクス専攻で大学院に進学します。未来ロボティクス学科って、実際になにかを作ってそこから学んでいくというスタイルを取っている学科なんですけど、3年生から研究室に入って、自分で実際に作ってみて、このままもっと作っていきたいなと考えました。いま研究しているのは、4cm弱くらいの大きさの小型四足歩行ロボットです。これを災害時の被災者の発見に使おうと考えていまして、小さくて安いロボットを大量にばらまいて探そうという目的です。
先川原:4cm! それは本当にちっちゃいよ。将来はやっぱりそういう小さいものをつくりたいんですか。
和久 :そうですね。大きいものを作るよりは、こまごまとしたものを設計したい。家電なんかでも小さいものをやってみたい。大きなロボットでもその中の小さい部分をやりたい。そういう感じです。
河野 :顔写真私も未来ロボティクス専攻で大学院に進学します。勉強は前から好きなんで、もっと勉強してみるのもありかなって。研究しているのは木製のアーム型ロボットです。自分が家の中で使いたいってものを考えたときに、金属で作るよりは親しみがあるんじゃないかなって思いました。
先川原:ああ、男の子はガンダムを作りたいって言って入ってくるんですが、やっぱり女性はそういうものなのかな。学科の他の女性もそうですか?
河野 :他の人がどうかは聞いたことがないです。
先川原:これからはどんな勉強をしていきたいと思っているんですか。
河野:知らないことを知っていくというのがすごく楽しいんで、今までやってきたことを深めていきたいとも思うし、そうじゃない違った分野にも興味があります。
北條 :顔写真JR東日本に就職します。中島先生って元JR東日本の先生がいらっしゃるんですが、学科の講義中によく当時のお話をなさるんです。保守のときにこういう体験があったとか、列車がこういう曲がり方をするときに車両にこういう力が加わってこういう風に曲がっていくんだとか。その話を聞いているうちに保守に興味を持つようになって、JR東日本を志望しました。ロボットと列車ってちょっと関係なさそうなんですけど、いまの列車というのは接触センサーや人感センサーなどがいろいろ使われていて、アクチュエーター(駆動部)はその情報を受け取って動きます。そう考えるとこれは大きなロボットだって感じました。
中村 :顔写真セガに就職します。大学1年のときに知能ロボットコンテストというものに参加しておりまして、そのときにお世話になった林原先生に、3次元CADのAutodeskのInventorを紹介していただきました。これがおもしろくて、家にあるいろんなものをモデリングしたり、自分で設計してみたりしてみました。そうするうちにだんだん設計関係の仕事がやりたいなと思うようになって、どうせ作るならおもしろいものを作っていきたいということで、セガを志望しました。
先川原:そのCADソフトというのは、メーカーなどの会社でも使われているものなのですか。
中村 :そうですね。CATIAとかNXとかいう名前のソフトが使われています。未来ロボティクス学科にあるのはInventorなんですが、千葉工業大学にはCATIAもおいてあるので、それもいじりに行ったりしました。
先川原:そういう高価なソフトを学生のうちから使えるというのはいいですね。会社に入ってもすぐCADの技術を活かせそうですね。

未来ロボティクス学科流面接のコツ
先川原:北條さんと中村さんはこの就職氷河期に見事就職したわけですが、合格のポイントというのはありますか。なにが面接官の心をとらえたんでしょう
北條 :もともと車両機械がやりたいって考えてたんですけど、エントリーするときに弱気になりまして、駅員だったら募集多いんで入りやすいんじゃないかなって思いました。でも、それではJRに入るってことが目的になってしまう。自分を見つめ直して、やっぱり自分はこの会社で車両設計に携わっていきたいんだって気がついて、車両機械でエントリーしました。そしたら、グループ面接では周りはみんな駅員志望ばっかで、自分ひとりだけ技術士。それで、ああ「北條くんは車両機械志望なのね、うんわかったよ」って、合格になりました。もし、入ることだけを目標にしてたら落ちてたかもしれないですね。
先川原:なるほど。やりたいことをガツンと言ったことが面接官の心を動かしたんでしょうね。
中村 :自分も、早い段階からやりたいことが固められたのが一番大きかったって気がします。企業のことも表から調べられることはだれにも負けないくらいに調べました。 また、面接の際には、現在している研究内容とかを聞かれるんですが、そこで、今研究している窓掃除ロボットのことをきちんとプレゼンすることができたんで、それは学校でやったことが役に立ったと思います。
先川原:一般の人は、ロボットの学科を出るとロボットを作る会社に入るって思ってるんですよね。でも、実際には産業用ロボット以外はなかなかロボットの会社ってない。でも、JR東日本やセガや一見ロボットとは関係なさそうなところでも、実は列車そのものがロボットだったり、アミューズメントやゲームにロボットの技術が入ってたりする。ロボットの要素というのはいろんな会社に深く関わっているということなんですよね。

未来ロボティクス学科での4年間
先川原:未来ロボティクス学科の4年間はどうだったでしょう。実践的って意味でけっこう特徴的な学科なんで、他の学科と違ってどうだったかなど。他の学科って言っても実際に通ったわけじゃないからむずかしいかな。
和久 :実は僕ふたごなんですよ。弟が電気電子系の学科に行ってまして。
先川原:えっ!そうなの!呼んできて欲しかったなあ。
和久 :それで他の学科の話とかも聞いてるんです。弟の話だと、実験をやっててもそれが実際の仕事とどう結びつくのかというのはわかりにくいらしいんですよ。技術がどんなふうに使われるかというのもよくわからない。でも、うちの学科って、作りながら勉強するんで、これがこんなところに使われるんだよというのがわかりやすい。これは将来役に立つんじゃないかなと感じました。
先川原:1年生の前期から、何も知らないうちにロボットを作らせるあの授業ですね。
和久 :あの体験演習はすごくためになったと思います。
河野 :いろんなことができて、すごく楽しかった。授業もそうだったし、そのあとのプロジェクトみたいなのも。
先川原:この学科には、授業とは別にいろいろなプロジェクトがあります。Robocupのように参加するものとか、あるいは深く勉強していくものとか。河野さんが入ったのはどんなプロジェクトですか。
河野 :
小写真
ひとつは勉強のプロジェクトです。富山先生のところについて、英語の本で数学をやりました。授業より進んだZ変換とかやったり。もうひとつは自分たちみんなでロボットを作るプロジェクトを立ち上げました。ゴミ箱を自動化してみようって。完成はしなかったんですけど。
北條 :自分はちょっと心残りがあって。自治会の体育会本部の副会長をやってたんで、時間的にそういうプロジェクトに参加できなかったんです。知能ロボコンやRobocupなんかのプロジェクトというのは、大人たちや一般の技術者の中で自分の技術を活かせる機会で、そういうものに1年生2年生のうちから参加できる、そういう場が用意されているっていうのは、ちょっとうらやましいなあと。
先川原:でも、そうやって学内の活動をしていてプロジェクトに関わらなくてもちゃんとJR東日本に入れたんだから、いいですよね。やりたいことがあるっていうのが重要なんでしょうね。
中村 :
小写真
僕は悔いというものはないです。やはり早い段階から学びのいろいろな場というものが提供されているのが魅力的です。ソフトからハードまで平行していろんなことを一気にやっていくんで、その中で自分に適したこと、自分のやりたいことを探せるのがいいなと思いました。
先川原:すばらしい。ロボットをやる上での一番のメリットがそこにあります。学校を選ぶ時って、まだよくわからないままに、なんとなく良さそうだとか好きそうだとかいうんで、電子工学とかデザイン学科とか決めてしまいがちです。でも、実際に入ってみると思ったのとは違って、これはどうかなって進路変更したくなっちゃう人も多いんですね。そんな中で、ロボットっていうのはいろんな要素があるから、一通りやってみた上で自分の得意分野を見つけてそれを突き詰めればいい。でも、それだけでもダメで、他の分野も一緒にやっていって、そうやって一体のロボットができるわけです。

3年生から研究室に入る
先川原:
小写真
千葉工業大学の中でも未来ロボティクス学科だけは、3年生から研究室に配属されるんですが、それはどうでした? 忙しくなかったですか。
和久 :
小写真
より研究を進めて、突き詰めることができるんで、それはいいと思います。授業のカリキュラムも午後はだいたい空くように組まれていて、午前中授業で、午後研究室みたいなことができるようになってるんで、そんなに大変ではなかったです。
北條:
小写真
就職の面接などの時、どんな研究をしているのかをより具体的に話せます。4年生から研究室ですと、入ってすぐ就職活動になるので、1ヶ月2ヶ月程度の内容しか話せないんですが、こっちはすでにすでに3年生の1年間研究をしているので。
和久 :そうですね。やっぱり研究が1年分多い分、そういう研究の深みを企業側にもアピールできて、企業側も話に食いついてきてくれます。
先川原:なるほど。早く専門に入るのは就職にも有利なんですね。そういうメリットがあることには気づきませんでした。
みなさんは未来ロボティクス学科の第1回の卒業生として、これからも研究室や企業で大いに活躍し、News CITが取材にいくようなおもしろいものを作ってください。楽しみにしています。本日はありがとうござました。