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インタビューシリーズ:interview-09

機構+制御+研究者=ロボット の概念を基に,人間の持つ能力を超越する「超人技ロボット」の開発を目指す「機能化ロボット創出学研究室」の太田准教授に訊く


出席者全員の写真
学生と懇談する太田先生

聞き手本日は「機能化ロボット創出学研究室」の太田准教授にお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
太田 :
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こちらこそ。

未来ロボティクス学科の印象
聞き手 : 太田先生が,本学の未来ロボティクス学科へ赴任されたのが2年前の2008年でした。 太田先生からみて未来ロボティクス学科の印象はどうでしたか?
太田 :
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まず学生は,非常に環境的に恵まれていると思いますね。結果,我々にとってもそうでが,設備をとってもこれだけ充実した大学はなかなかないと思いますよ。
聞き手 : ここ新1号棟3階には,広い工作室がありますし,芝園キャンパスもすごいですよね,通称ロボットファクトリー(11号館2階)の広さと設備には,私も驚きました。
太田 :
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そうなんですよ。こーゆうのがあるといいですよ。
聞き手 :ちょっと他の大学にはないんじゃないですか?
太田 :
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毎年5月の終わりから6月にかけてロボット学会の行事があって,今年は私が担当なので,千葉工大の未来ロボティクス学科としての特長を生かした何かをやろうと考えたときに,せっかく工作機械もいっぱいあるし,これを活かさない手はないと思いまして・・・。一般向けの行事だったんですけど,ロボットを作るといってもマイコンを使ってちょっとプログラムとかやって「はい出来上がりました」っていうのもイヤだなと思いまして。
聞き手 :なるほど,プラモデルみたいなパッケージ化されたモノではなくということですね?
太田 :
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そうですね,アルミの塊とかそういうのを切ってもらってとか(笑)。そういう本当の「ロボット工作」がやりたくて,企画したんですよ。参加者は50名ぐらい。みんな半日ぐらいかけてアルミの板に穴あけたり,切ったりして(笑)。
聞き手 :まさにハンドメイドですね。参加したみなさんは工作機械を触るのも初めてでは?
太田 :
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そうですね,多少はやったことはあっても,ガッチリ触ったっていうのは皆さん初めてで。先生方から「あの企画は千葉工大じゃなきゃできないな」と。一般の参加者も「これだけの環境があるのはいいですね」という感想で,やって良かったなと。それを考えてみても,こんなにいい環境があるということはものすごく恵まれているんですね。ですから,もっともっと学生には活用してもらいたいですね。

太田先生の子供時代
聞き手 :そうですね,ところで太田先生は小さい頃からロボットがお好きでしたか?
太田 :
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そうですね,私はモノを作ったりとか好きでしたね。いろいろ工作はやりましたよ。プラモデルとか組み立てるのも大好きでした。その後の色を塗ったりとかは興味がなくて,パチパチッと組み立てたらもう終わり。バラしたり組み立てたりするのが好きでしたね。
聞き手 :小学生の頃,クラスで秋葉原で部品買ってきてラジオを組み立てたりしましたね。
太田 :
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そうそう。だからそういうパーツ屋へ行って,いっぱいパーツが並んでいるわけですよ。見ているだけで面白い,楽しいなーと。わからずにいろいろやっていましたね。
聞き手 :実際にロボットに関して志したのは大学からですか?
太田 :
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ロボットをやろうって決めたのは高校に入ってからですね。モノを作ることをやりたかったので,モノを作れる大学がいいなあと思って。いろいろモノづくりをやってみるとロボットって面白そうだなと。機械だけじゃなくて,電気も好きだったんで,電気系も機械系の両方があるロボットだと決めました。
聞き手 :先生になろうとの希望はあったんですか?
太田 :
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実は学校の先生にもなりたかったんですよ。
聞き手 :へえー,そうだったんですか。
太田 :
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中学校のときの将来の夢は?「学校の先生」って書いた覚えはありますね。でも幼稚園のとき将来の夢は?ってあったんですけど,その時は「自動車になること」って。
聞き手 :自っ,自動車ですか?!
太田 :
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そうです,自動車になること。自動車工場の人に,じゃなくて自動車になることだったんですよ。好きだったんですね,自動車が。自動車工場の人になりたいわけじゃなく自動車になりたいと。いまだに覚えてますよ(笑)。
聞き手 :・・・わかります!なれるとか,なれないとかじゃなくて,なりたい訳ですね(笑)。
太田 :
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それで幼稚園のときに「自動車になりたい」って夢を書いたんですけど,幼稚園の卒業アルバムには「自動車工場の…」って修正されていて,違うのになーって思ったんですね。幼稚園のとき(笑)。
聞き手 :なるほど,作ることへの興味は,誰から影響を受けていらっしゃるんですか?お父さんとか,叔父さんとか,本との出合いとか?何から影響を受けていますか?
太田 :
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それはわからないですね~。
聞き手 :太田先生は朝から夜遅くまでオフィスでお仕事をされているイメージがあるんですが,趣味とかは?
太田 :
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昔からいろんな人に趣味はなんですか?とか聞かれるんですけど,あらためて考えると,何が趣味なんだろうなっていうのがあって,趣味って難しいですよね?これが趣味です!っていうのはないというか。
聞き手 :好きなものが幅広くあるんですね?
太田 :
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そうなんですよ,いろいろやらないと気が済まない。何かやるぞっていうとき,パッとやるんで,そういうのは好きですね。幅広くはやるけれども,ひとつのことを深くはやらないですね。
聞き手 :好奇心が旺盛なんでしょうね。いろんなことに目を向けたいと。研究にも反映されているではないですか?
太田 :
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そうですね,いろんなことをやりたいですよね,世の中にいろんなことがあって,それを知らないってもったいない気がしますからね。ひとつだけず~とやっているのは性に合わない(笑)。
聞き手 :それは食べ物の嗜好にも反映していますか?
太田 :
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食べ物はいろんなものを食べるのは面倒なんで,ひとつのモノを食べたりとかしますね。 だから2つの相反することって,けっこう同居してたりするんですね。矛盾しているような,していないような。
聞き手 :うまくバランスとってるんでしょうね,きっと。。
太田 :
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片一方では,一つのことずーっとやっていて,片一方ではいろんなことやって,平均取れば,ちょうどいいかもしれないですね。

研究内容
聞き手 : さて,太田先生の研究室「機能化ロボット創出学研究室」ではどんなことを研究しているんですか?
太田 :
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いよいよ本題ですね。私がやっているのは,簡単に言うと,例えば生物の形態と機能を似せることによってその動きをする昆虫型のロボットがあったり,人間の動きだったらヒューマノイド型の二足歩行のロボットであったり,作り方には一つのスタンスがあるわけです。私の研究室は,それとはまったく違って・・・。
聞き手 :まったく違う?具体的に教えていただけますか?
太田 :
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つまり「何をゴールにするか」というところなんです。人間とまったく同じ動きができるロボット作りたいということであれば,ヒューマノイド型のロボットを作る。それが最終の目的ではなくって,例えばある作業をするところにおいて,サポートをするとか,人間の動作の代わりをするとかのロボットを創るのであれば,その必要なものはロボットの機能なわけです。その場合,ヒューマノイド型でなくてもいいと。まず機能を追究して,どういう機能が必要で実際に創るためにはどういうロボットを作ったらいいか,どのような構成にしたらいいか,生物の形態を真似るだけではなくて,完全にオリジナルで形も考えてみようと。そういうスタンスで研究をしてきました。形態から入っていくのは,最も最適化されている設計方法のひとつなので,それはものすごくいいんですけど,それ以外の方法はないか?というスタンスで研究しています。
聞き手 :
・・・なるほど。
太田 :
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そのかわり,機能は実行できるんだけども,最初に機能を絞る段階で失敗するとそれ以外のことにまったく使えないわけです。そこのところが難しいというのがあります。
聞き手 :幅広い知識に加え斬新な発想,しっかりとした視点も必要に感じますね。
太田 :
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そうですね,最初に戦略を決めてしまうので,ほとんどそれが勝負になってしまいますね。
聞き手 :それに他の先生方とは,たしかに違う切り口ですね。守備範囲も広いですし。
太田 :
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ひとつのロボットが10個仕事ができて,それを3体創れば30個の仕事ができるわけですね。私の場合,30体ロボットを創って,全部1個の仕事をやらせる。機能を限定してしまって単純なことをやりますから完成は早い。ただ,機能は1個なので同じことを10個やろうと思うと10体創らなければいけないと。トータルして考えれば,時間的には同じだと思うんですけど。
聞き手 :研究室のHPには「エアホッパ」とか「ファルコン」とかありますが,それらはいま太田先生が説明してくださったロボットですか?
太田 :
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あれは東工大の時に研究していたモノです。どんなロボットを創ろうかと考えて,設計の大事な部分の方針はこうしていきたいと,先生に組み入れてもらって,ああいう形になっていくわけですね。エアホッパですと,試行錯誤して途中から東工大のドクターが,引き継いで研究しています。
聞き手 :ほかにはどんな研究がありますか?
太田 :
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やろうとしている,あるいは進行中はいくつかあるんですけど,同じ自由度を使っていくつかの違った動作をさせるロボットですね。さっき言った設計理念とは逆になってしまうんですけど。ある一体の機械を創って,そのアクチェータの使い方,運動のさせ方を変えると,システムとしての動きが変わるロボットです。具体的に言うと,歩行と車輪移動が同時にできるようなロボットです。何通りかやり方があって,これが今一番力を入れているところですね。
聞き手 :SF映画なんかにでてくる機械を想像しますね。
太田 :
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たしかにスターウォーズの中に近いモノは出てくるんですよ。歩くロボットの腕が車輪型になっていて,ガチャって車輪になって車輪が移動して,戦場の方に行くと変形して・・・。他の研究室でも脚を車輪型にして車輪を移動させてというのはあるんですよ。ただ私の研究しているモノの場合は,変形させて何かやるというのではなくて,形はそのままであって運動の形式を変えると車輪の移動ができたり,歩行っぽい移動が出来たりというモノです。
聞き手 :なるほど,形態が想像できないだけに,面白そうですね。
太田 :
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本当に実用的なロボットを作るというスタンスで行くと,機能一つに付き一台のロボットという感じで,開発していくのがいいと思っています。でも,これ以外に運動生成など理論的なところもやってみたいというのもあるし,要素技術の使い方とか,原始的なところもいっぱいやりたいことがありますね。
あと,さっきの機能化ロボットの話しからするとちょっと違うフィールドなんですけど,名古屋の大学にいた頃に,体内の手術をする時に使うロボットなんですけど,能動鉗子の研究をやっていたんですね。能動鉗子って,基本的にワイヤー使って,作動させることが多いんですがそのワイヤーが実は曲者で,ワイヤーの挙動って言うのは,実はモノすごく難しい。それを解析しないとさらに細かい動きができなかったり,ワイヤーが滑らかな動きにならないわけです。また,お腹の中に入れるわけですから小さくしなければならない。でも小さくすると一番の敵は摩擦になってきて,どうしても金属の部分で摩擦が起きる。摩擦が発生するので,摩擦を上手くコントロールするというか,事前に計算でどれくらい摩擦が発生するか解析したりとか,そういうワイヤーの挙動の研究をこちらでもやり始めようと計画しています。
聞き手 :それはまた違う分野も同時進行してますね。太田先生の興味は尽きない。
太田 :
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ある意味,ものすごく細かいところでターゲットを絞って,深く掘り進めていくのが大学の研究としてはいいんでしょうけど,今はもっと幅広くいろんなこと,興味があるところをどんどんやってみようと。
聞き手 :なるほど,いいですね。ところで,太田先生は多くの論文を出してらっしゃる中で,米田先生といっしょに出されている論文がいくつかあったんですが,米田先生とのご関係は?
太田 :
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米田先生は,私の指導教員なんですよ,東工大時代からの。私は大学院修士から東工大に行ったんですけど,最初にこれをやろうと入ったのが米田先生のテーマだったので2年間やってその後博士課程へ行ってテーマをかえて3年間また同じ研究室で。そのころからずっと指導していただいています。
聞き手 :そうだったんですね。ところで太田先生の授業は英語でやる場合もあるって聞いたんですけど本当ですか?
太田 :
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英語でやるのではなく,試験の問題文が英文で書いてある程度です。これは未来ロボティクス学科の特色として,英語を使ってその他の科目をやるという伝統になっています。授業中ずっと英語でやっているわけではなくて,黒板も日本語と英語を併記しますし,専門単語を英語で書いて,日本語も書いて説明しています。どうせ初めて出てくる単語なんですから,日本語で覚えても英語で覚えても一緒ですよ。あと,問題文に書いてある英語って,高校の英語の教科書に書いてある難しい文章が続くだろうって思うかもしれないんですけど,ぜんぜんそんなことはないですよ。単純な英語です。「計算せよ」だったらコンピュートしか思い浮かばないでしょうが,もっと何種類か単語があるので意味合いによって使い分けている。それが順番に書いてあるだけです。
聞き手 :今研究室には,全体で何人いるんですか?
太田 :
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27人ですね。
聞き手 :今年から3年生が入りましたからね。学生さん対してモットーとか,ここだけはこだわってほしいとか,日頃どのようなことを伝えていますか?
太田 :
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自分で「何がやりたいか」って言うのをハッキリして,自分のこだわりを通してもらうのは非常にいいですよね。「私こうやりたいからこうするんです」って。自分のオリジナリティを出してもらったほうが圧倒的いい。「僕はこうだと思うんですけど」って口ごたえしてくるぐらいの方が私も教えがいがあって楽しいですよね。私はそういう方が好きなんですよ。言われた通りにやらなければダメなんて決まりはない。むしろ考えて考えて試行錯誤して,本物の力になる。
聞き手 :・・・なるほど。
太田 :
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学生は若い分,今まで自分の糧となるような失敗や経験,試行錯誤が少ないわけですから,研究室ではそういうヒントになるような話をするようできるだけ心掛けています。 あとは,本人の意識、感覚の問題なのでそこに任せていますね。人間どれだけパワーを持って出せるか,若いうちは失敗を恐れず,勇気を持ってエネルギー全開で頑張ってほしいですね。

高校生へのメッセージ
聞き手 :おっしゃる通りですね。さて,これから受験を目指す高校生の皆さんにメッセージをお願いできますか?
太田 :
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私は元気な学生が好きです。スマートにパパッと問題が解けるとか,解決できるとか,そういうのもいいでしょう。でも私自身が,足掻(あが)いて足掻いて,やっと一つの答えを見つけたら,間違ってて,また頑張ってていうパターンが多かった。決してスマート派ではない。どちらかというとそういうのが好きなんですね。だから不器用でもいい,一つの答えを見つけるために,それこそ死に物狂いで頑張れる人,元気を出せる人,そこを大切に思っています。将来,凄い武器になると思うんですよね。
聞き手 :そうですね。粘り強さは最大の武器です。成功の鍵は,能力じゃない情熱だ,とおっしゃる方も多いです。
太田 :
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ただそれをいつ養うんだとか,その力は何処で養うんだって話になると,大学に入る段階で身についていますという人もいるでしょう。大学入ってからそういうのを身につける人もいると思うんですね。どっちかっていうと大学入ってからそういうのを身につける場合が多い。そういうのやらせてほしいとアピールできる学生さんが私は好きですね。ぜひそういう人に来て欲しい。大学時代いろんな経験をしていると,徐々に徐々にこう上手くなっていくんですね。最初からスマートなんか目指す必要はないと考えます。ものづくりの原点なんて自分の手や身体を汚して,もう汗水たらして油まみれになりながらやっていくっていうのが基本ですから。
例えば,自分で旋盤回すんじゃなくて,スマートな加工機に入れてボタンを押してモノが出来上がる。結果同じですよね,という人もいます。だけどそれは根本が違っていて,スマートな加工機に入れてボタンをパッと押せば確かにモノはできますけど,その人について何が身になったかというとただボタンを押しただけと。結果としてこういうものが出てくるんじゃなくて,モノを創る時にどうしようかって悩んで削ってみて違ったとか,何回も繰り返してやったっていう方が,頭の中もクリアになっていく。そこで学習が行われるわけですから,次のときの知能とか知識の蓄積になるわけなんですね。だからそういうのを苦労して苦労して苦労していくと,ある日突然目覚めてパッてところが出てくるんですよ。
聞き手 :研究の醍醐味ですね。
太田 :
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そして苦労のプロセスは全部自分自身の財産になるわけですね。今の時代に合わない考え方かもしれないですし,今はいかにスマートに答えを出すかという方法を教えて下さいという人の方が多いも事実です。古いままのやり方をやっていくのが正解というわけでもないので,大事なものを残しながら,時代を取り入れていかなきゃいけないでしょうが。
聞き手 :すごく大事な話です。飛躍するための土台作り,基礎作りは今なんだから,自分自身に挑んで頑張れと。太田先生の思いを強く感じます。
太田 :
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ありがとうございます。
聞き手 :まとめますと,受験生には,努力を惜しまない元気のいいやつ集まれ!ということですね。
太田 :
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そうですね,何をやるにしても人間体力,元気や活力が無いと何にも出来ないですからね。それさえあれば,何でも出来ると信じているので。
聞き手 :そうですね,それは他の先生も同じことをおっしゃっています。
太田 :
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一番大事なのは,やる気を出すか,出さないか・・・走り出してしまえば,あとは何とかなるんですから。本当に,何とかなる。走った先でだんだん困難にぶつかってきて,いつかやる気が失せてしまうことがある。でもそこさえ上手くカバーし,いつまでもやる気をもって走ることが大事で,私も気が付いたら走っているパターンが多いですね。ずーと続けるっていうのは実は非常に大変なことですけどね。
聞き手 :太田先生ご自身がやってきたことを振り返ってみると,結果としてこれが一番いい方法だったと。
太田 :
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そうですね,何だかんだいいながら,コツコツやるというのは私はできないですけど(笑)。
聞き手 :いえいえ,雰囲気とはまったく違って,気骨で人間味溢れる太田先生を知ることができました。本日は貴重なお話しをありがとうございました。
太田准教授 http://www.robotics.it-chiba.ac.jp/ja/subject/staff/11-profile.html