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インタビューシリーズ:interview-11

「海外留学インタビュー」阿久澤 拓巳さん(未来ロボティクス学科院生2年)、 山本 名津美さん(他大学) アビーさん(Abi Machun/ペンステート大4年)に訊く

今日はペンシルバニア州立大学(*以下ペンステートと称す)へ、一年間の派遣留学を終えた阿久澤拓巳さんにお話を訊いてみたいと思います。(取材 2011/9/23 新1号館18F)

出席者全員の写真

インタビュー出席者

聞き手: 阿久澤さん、今日は楽しいお話を期待していますね。
阿久澤さん:よろしくお願いします。
聞き手: まず、留学から戻ってきた阿久澤さんにお会いして、見違えるようにたくましくなって戻ってきたなというのが第一印象です。その前がたくましくないとかじゃないですよ(笑)。精悍な顔つき、見違えるようになって戻ってこられビックリしたというか、凄く嬉しかったというのが正直な気持ちでした。
阿久澤さん:顔写真 嬉しいです、ありがとうございます。
聞き手:今日は、留学時のお友達も駆けつけてくださいましたね。紹介していただけますか?
阿久澤さん:まず、山本名津美さん(他大学4年)です。同じ時期に交換留学していました。昨日東京でのインターンシップを終えて今日ここに参加してくれました。それから、アビー・マチュンさんです。ペンステートの4年生でフィルム学科に在籍しています。現在はシンガポールの大学に留学しています。
聞き手:お二人とも今日はお越しいただきありがとうございます。少しの間よろしくお願いします。
お二人:こちらこそ。よろしくお願いします。
聞き手:まずペンステートにはいつから留学をしましたか?
阿久澤さん:昨年の2010年9月14日から今年の9月6日に帰国しましたから、約1年間ですね。

留学先について
聞き手:ペンステートはどのような大学ですか?
阿久澤さん:総合大学ですね。いろんな学科があって、それこそ通常の学科の他に、詩を学ぶ人もいたり、アートがあったりフィルムがあったり。あと学生が学科を作ることもありらしいです。何でもありですね。
山本さん:キャンパスもペンシルバニア州各地に20個とオンラインのワールドキャンパスも中心的なキャンパスで約4万5千人です。
聞き手:そうなんだ。学生数は全体で8万人?とか。
阿久澤さん:全体で約9万人いて、僕らの通ったキャンパスは約4万人です。

留学の不安は?
聞き手:まず去年留学が決まったときに留学に対する不安とか無かったですか?
阿久澤さん:ビザと住むところが決まってなかったことですかね。それが決まってからは「やった!」って思って(笑)。
聞き手:学科で留学生としてはさきがけ第一号ですね。意識はしましたか?プレッシャーは?
阿久澤さん:ないですね。第一号イコール何やってもいいんだ、と思ったので(笑)。
聞き手:なるほど、阿久澤さんらしいね(笑)。山本さんはどうでしたか?
山本さん:顔写真 かなり不安がありましたね。寮とかは決まっていたんですけど、私このまま行って大丈夫かなって漠然とした不安はありましたね。
阿久澤さん:あっ!味噌汁食べられなくて大丈夫かな?って、心配はありましたね(笑)。
聞き手:最終的にはどこに住みながら生活をしたんですか?
阿久澤さん:9月14日~5月7日までは大学の寮です。大学院専用なので、僕は4人でいっしょの部屋でそれぞれ個人の部屋と大きいリビングとキッチン、バスルームとトイレ2個ずつ、それぞれ2人でシェアしました。
聞き手:なるほどね、寮生というよりも、自由な雰囲気のシェアリングなわけだ。
阿久澤さん:そうですね。僕はいま日本でもシャアしていて22人で住んでいます。ルームメイトいないと寂しくて(笑)。

どんな研究室?
聞き手:なるほど(笑)。大学ではどこの研究室に配属になりましたか?
阿久澤さん:機械・原子力工学科で群ロボット制御チームの一員として研究室に入りました。ルンバっていう丸いお掃除ロボット知っていますか?あの掃除機機能の付いていないものが研究用に販売されていて、それを動かすように別のコンピュータを積んで、1体でなくて多数が協調して動くロボットの研究です。例えばそこにモノがあるっていうのをAロボットが知らなくてもBロボットが感知して情報を共有する、そういう協調ロボットですね。そのロボットの環境構築ですね。
聞き手:
研究室の教授はどなたですか?
阿久澤さん:Dr.アソック レイ(Ashok Ray)です。世界的に有名な成果をあげている科学者でインド人の先生なんですけど、顔がめっちゃ怖いんですよ(笑)。でも、話していると親身になってくれて「何か困ったことはあるか?」とか「研究どんな感じだ?」っていつも聴いてくれるんですよ。
聞き手:それは恵まれましたね。1年間という限られた時間ですけど、研究室に入って成果はありましたか?
阿久澤さん:
僕のフィールドはロボットを作ることではなく、ルンバを使って新たにロボットの中身をどの様につくっていくかっていう、自分はハードウェアが専門なので、 専門外のところを勉強しながら 学ぶことでした。後期からは僕の下に学部生が2人付いて、自分でも解らない分野を教えていった訳です。論文出したとかは無いんですけど、彼ら2人がロボットをまったく知らないところから、ロボットの中身をある程度つくるところまで成長させたっていうのが僕にとって一番の成果ですね。

語学習得法
聞き手:アビーさんとの会話を聴いていても英語が凄く上手になりましたね。コツはある?
阿久澤さん:
どうですかね。留学前に外国人がいそうなお店に行って話しかけたり、東京案内を買って出たりして会話を勉強しました。文法と単語、語彙力はあまりないんですけどね。
聞き手:
研究では専門的な単語とか出てきたときはどのように対処したんですか?
阿久澤さん:
研究は基本的にパソコンを使いながらなので、わからなかったら即辞書ですね。そこに時間を使いたくなかったので。同じ研究室の仲間もあまり無駄な時間を使いたくなかったと思うし。

キャンパスライフについて
聞き手:ちょっと話しを変えて、大学の環境も魅力的だと思うんだけど勉強以外の時はどのように過ごしましたか?
阿久澤さん:オフはずっと友達作りに励んでいました。飲みにも行きましたしね。それと、イベントがいっぱいあって、たとえば・・・。
アビーさん:顔写真 ハロウィンとサンクスキビング、ニューイヤー、ステート・パティ・デイ、ソン、アートフェスティッバルなど大きなイベントは6個ぐらいあります。(同時通訳は阿久澤さん)
聞き手:少し具体的に教えてくれますか?
阿久澤さん:ハロウィンは知っていますね。サンクスギビングっていうのは日本語で言うと感謝祭で、 それぞれ家に帰って家族とか親戚があつまってお互いに「元気にしているの?」っていう集まりです。クリスマスは家族で集まる日です。ステート・パティ・デイって日は3、4年前に作られたんですが、もともとセントパトリックデーっていう、ヨーロッパから来たキリスト文化で、みんなグリーンのものを着て着色料たっぷりのグリーン色のビールを飲むというのがあって、ただその日は大学が休みでみんな帰っちゃうんでみんなで飲む日を作ったというわけです。 ソンっていうのは、もともと小児ガン患者のためのチャリティーイベントで、それがめちゃくちゃ大きなイベントで、参加者は48時間2日間踊り続けるっていうイベントです。
聞き手:着色料たっぷりのグリーンビールもすごいけど、48時間踊り続けるって本当ですか?
山本さん:しかも寝られないんですよ(笑)。踊り方も毎年違う振り付けだし。
阿久澤さん:BJCというバスケットボールとかするスタジアムがあるんですよ。とにかくでかいホールでそこでみんなが踊るんですよ。
山本さん:サークルごとに一人ずつ出して、その人がサークルを代表してサークル全員でその人を応援する。その人が48時間は踊り続ける!
阿久澤さん:それも大学の新聞とかネットバージョンでもリアルタイムで配信されているし、めちゃくちゃ盛り上がる、みんなが盛り上がる、そんなイベントです。
聞き手:疲れて寝ている人とかいないんですか?眠らなくて大丈夫なの?
山本さん:座っちゃいけないって決まりがあって、眠れない。休憩時間っていうのがあって5分間だけマッサージを受けたりとか水分補給したり。それ以外は、休めません(笑)。
阿久澤さん:彼らはタフなんです(笑)。
聞き手:山本さんやアビーさんは参加したんですか?
山本さん:私は見ているだけだったんですけど(笑)。後半の方になってくると、がん患者の子供達の過去のビデオを観せたり、その親達が参加してくれてありがとうって手紙読んでくれたりとか。感動的な部分があって、それで頑張れるんですよ。
聞き手: モチベーションをあげるわけね。
阿久澤さん:もの凄い額の寄付があつまるんですよ。いくら集まるんだっけ?
アビーさん:たしか記憶では日本円で5億円とか集まったと思う。
聞き手:ヘーすごい!それは見にきている学生とか街の人たちとかが寄付をするんですか?
阿久澤さん: そうですね、街ぐるみで寄付をします。
山本さん:私のルームメイトもそのサークルに所属していて「今日も行くわよ!」って。「そんなの疲れないの?だって貴方が踊っているわけじゃないんだから寝てもいいんじゃない?」っていったら、「でもその子供達のためにみんな頑張っているんだから私も行かないわけにいかないじゃん!」って。
阿久澤さん: それから,アートフェスティバルっていうのは,5月7日~8月後半まで夏休みで人がいなくなってゴーストタウンみたいなっちゃうんですね。その夏の1週間ぐらいやっているイベントで,それぞれが作った作品を街中で売ることができるんですね。
聞き手:売れるの?
阿久澤さん:売れますよ。僕は時間がなくて準備できなかったんですけど。それから,外国人と仲良くなるコツは「ハーイ」っていっても仲良くなれない,飲みにいって,話して,分かれて,次ぎのパーティいって「お前この前いたよね?」ってなる。そこから輪が拡がっていく。なので,なるべく「飲みにくる?」って誘われた時には必ず行きましたね。サンクスキビングは11月にあるんですけど,友達のリンチファミリーに招待してもらって,家族の中に入って食事したり,フットボールしたりしましたね。それから,他の友達のお母さんがダンススクールの先生で,チャリティーイベントがあるっていうんでカメラマンで行ったら,マドンナのバックダンサーとか来てて楽しかったですね。
聞き手:休日の楽しみ方が上手でボランティア精神に溢れている。そういう文化の中で,皆さんも充実した毎日を過ごしていたのが目に浮かびます。
阿久澤さん:とにかくチャリティの意識は凄いですね。じつは,僕らも留学中に日本で震災が起こった時に「何かやろう!」って。ちょうどその時ペンステートがサマーバケーションだったので,学生がいないところでやっても仕方ないので,学生が帰ってくる3月13日に話し合ってどんなことやろうか,何やろうかって。日本人会で日本の震災に関する街頭イベントをやったんです。
聞き手:そうだったんだ。何人ぐらいの日本人会メンバーでやったんですか?
阿久澤さん:100人ぐらいのメンバーで2週間やりました。
聞き手:反響はどうでしたか?
阿久澤さん:日本って経済大国じゃないですか。それなのに大学には他の発展途上国の人達もいるのに,発展している日本が「私たちはかわいそうだからお金をください」っていうのはちょっとおこがましいんじゃないかって声もありました。けれども「僕らがこういう被害を受けたことを忘れないでください,そしてもし貴方がお金を出してくれるなら僕達はありがたく受け取ります」っていうスタンスで行いました。
山本さん:嬉しかったのは日本人だけじゃなくて,ボランティアの授業を取っている人たちも助けてくれて。それにアラブの国の人たちが何も言ってないのに「日本のために」って自発的に呼びかけをしてくれて。いろんな国の人に輪が拡がっていったんですよ。
阿久澤さん:最終的には日本円で200万円ぐらい集まったんです。
聞き手:それはすごいね。主にどこの場所でおこなったんですか?
阿久澤さん:キャンパスです。キャンパスが,一番人がいるので。とくに人が集まるハブって場所だったり,授業の最後の5分間だけ時間くれませんかって先生に交渉してみんなに呼びかけたり,それぞれのイベントにいってプレゼンしたりとか。
聞き手:思ったことを即行動に移した,それがなにより素晴らしいですね。
阿久澤さん:とにかく同じ世代もチャリティ意識は高いです。
聞き手:どっぷり1年間海外生活していると日本語を忘れないですか?
阿久澤さん:これがちょっと問題でたまに日本語も英語も出てこない時があるんですよ,確実に何もしゃべれない状態になっちゃう。それが本当に困るんですよ。あの単語なんだったっけな?って(笑)。
聞き手:夢はどっちでみる?
阿久澤さん:今は日本語の夢と英語の夢と半々ですね。
聞き手:山本さんも?
山本さん:やっぱりそうですね。
阿久澤さん:帰る2~3ヶ月前から英語の夢見るようになって。アドバイザーから英語の夢をみるときは転換期だよって言われて。「あっ今だ!やったー!」って。
聞き手:帰国したときに、米国はどうだった?って聞いたら即「今すぐでも戻りたい!」って、言っていたよね。
阿久澤さん:そうですね、すぐにでも戻りたいですね。日本では美味いものはだいたい食ったので(笑)。
聞き手:街はハッピーバレーって呼ばれていますね。街の魅力を知りたいんだけど。
阿久澤さん:人が温かいですね。それから緑がいっぱいですね。湖や丘もあります。
山本さん:そうだね。それと、大学の敷地内はユニバーシティーパークっていうひとつの街で、街の人たちが自由に楽しんでいますね。
聞き手:10万人収容のフットボールスタジアム(注1)にゴルフコース、大学の飛行場やブロードウェイによる公演が行われたりする施設もあったり、とにかく規模がすごいね。(注1/ ペンステート大のあるState College市の人口は5万人ほどで、学生を合わせても10万人です)
阿久澤さん:そうなんですよ。でも一番はみんなペンステートが好き。地域ぐるみで大学が好き。日本だとなかなかそこまでないじゃないですかね。
聞き手:ほとんどの日本の大学って門と塀で囲まれちゃって、市民との接点が少ないのはたしかにあるね。キャンパスの緑を楽しみたくてもセキュリティー上入っちゃいけなかったり。
阿久澤さん:クローズされていて、入りにくい雰囲気ありますよね。ペンステートは環境も含めてすごくオープンなんです。しかも何かしらみんなペンステートに思い入れがあって。自分の娘が行っているとか、自分の出身校だとか。
聞き手:歴史もあるのかな?
阿久澤さん:たしか1855年だったと思います。
アビーさん:いま確認できたんだけど、さっきのソンの寄付、去年は9億5千万円集めたそうです。小児ガン全般のために寄付しました。
聞き手:ありがとうございます。すごいねー。あらためて意識の高さに驚くね。日本でも大手ファーストフードさんが入院している子供達の親が安心して看病に専念できるように宿泊施設を造るっていう基金をやっているよね。これも基本的には米国企業だね。
阿久澤さん:チャリティが多い、そういうところも街の魅力なんじゃないですかね。あとビールが安いんですよ(笑)。
山本さん:また飲む話?!(一同笑)。?
聞き手:参考までに日本円でいくらですか?(笑)
阿久澤さん:バドワイザーとかは、チケットだすとBarでタダで飲める時があります。僕はイングリングっていう地ビールが好きです。Barで飲んでも2ドルぐらいです。
聞き手:そもそもなぜこの大学を選んだのですか?
阿久澤さん:千葉工大から留学できる大学がある国は4つで、フランスか中国かカナダか米国だったんです。初めから英語圏に行きたいと決めていたし、カナダは寒いのでペンステートにしました(笑)。 実は、富山先生が「ペンステート行け、行け」っていつも言っていて、そんなに面白いのか?って。
聞き手:なるほど、Dr.富山に背中を押してもらったんだね。Dr.富山もペンステートで6年ぐらい教鞭を執っていたんですよね。
阿久澤さん:そうです。米国16年間の内の6年間をペンステートにいらっしゃいましたね。
聞き手:そういう意味でも自分の教え子に行ってもらいたいって思いがあったのでしょう。
阿久澤さん:昔から言っていたんです。「海外に行け、お前ら!」って。全員じゃなくて「行きたいやつは行け!」って。その影響は大いにありますね。あと、富山先生が「アメリカ人は強いぞ」「ガツガツ貪欲だぞ」って。本当かな?って思って、そんな言うほど凄くないんじゃないかとも思った。でも鵜呑みにするのは良くないんで、確認したいとも思いましたね。
聞き手:実際どうでしたか?
阿久澤さん:先生が言ったとおりでした。ガツガツ貪欲(笑)。自分がAを取れない授業はとらないし、必ず自分の成績を第一に考えて行動しているんですね。日曜日の朝から金曜日の夕方まで徹底して勉強して、金曜日夜からガッと遊ぶ。フレキシブルですね。自分のスケジュールで動く。自分のやりたいことが決まっているので、ここは譲れないって一線がありますね。
聞き手:なるほど、自律しているね。案外アバウトかと思ったらオンオフがしっかりしている。
阿久澤さん:始めは、それにとまどっていて、そんなにガツガツくるの!って思っちゃいまして。始めはいいよいいよって言ってたんですけど、だんだん相手に合わせて譲歩すると相手も図に乗るじゃないですか。ある時から、こいつと仲良くするために来たんじゃないしなって思って。「俺のアイディアはこれだよ!」って、ガンガン行くようにしました。
聞き手:自分の意見を主張したんだね。失敗談はありますか?
阿久澤さん:失敗談、沢山ありますよ(笑)。研究の面で言ったら、初めはナーバスというか、もともと向こうがやってる研究を引き継いでいるので向こうの方針があるからって、それに合わせて受身だったんですよね。向こうの意見を聞こうとして。だから研究者じゃなくて、ただのエンジニアとして12月ぐらいまでやっていたと思うんですよ。何処で加工していいかわからないし、行っても「君、免許持ってないからダメだよ」って言われたり、やっと出来ると思ったら機械が壊れちゃってるからダメだったり。自分で解決しちゃったというのが失敗ですね。もっと早くこいつらと仲良くするために来たわけじゃないと思えばよかったですね。向こうもそれを期待したわけじゃないけど、はじめ気にしないでいいよ、何かあったら質問してねっていうのをもっと真剣に考えれば良かったなと。気を使いすぎたのは一番の大失敗でしたね。 
聞き手:なるほど、後に続く人の参考なりますね。他にはありますか?
阿久澤さん:2つ目はハロウィンの時ですね。飲み過ぎて(この先に興味のある方はご本人に直接お聴きください)・・・失敗談はそんな感じですかね(笑)。
聞き手:では、留学生活の中で感動したことは何ですか?
阿久澤さん:最近のことなんですけど、最後帰国する時に泣いてくれる友達ができたことですね。ケイティと ジュソンとタカヤとケイトリンってベストフレンドが出来て、最後にみんなでニューヨーク行って、僕は気分的には帰国するっていう感覚じゃなくて、ちょっと日本食を食いに行ってくるよ、ぐらいの感じで帰国したんですけど、ケイトも泣くしジュソンも泣いてくれるし、ジュソンは会って3週間くらいしか経ってないのに泣いてくれるし、そいういところに感動しましたね。僕は。他にも感動はいっぱいありましたけど、そのことが一番の感動かな。

留学後・・
聞き手:米国へ留学して、例えば言葉の違いだとか、人種の違い、価値観の違いとか、そういう環境にポンと飛び込んでみてこの1年自分がどう変わったと思いますか?
阿久澤さん:そうですね、自分が思っていた以上に日本が好きだなって思いました。それに気付いたのが今年の6月ぐらいです。友達にニューヨーク大学で映画を専攻しているやつがいて、ドキュメンタリー専門で撮っていて、近くカミングアウトするんですけど、その映画が「サード・カルチャー・キッズ」っていう題名で。サード・カルチャー・キッズって、日本で生まれたけど、例えば中学まで日本にいて高校からアメリカへ3年間行く。また日本に戻ってきた時に、高校3年間が抜けてるからその部分の文化が違う訳ですよ。かといって日本が合わないからアメリカに行っても中学生までの文化が違うんでみんなと共通のところが笑えないとか、自分の居場所がわからないっていう学術的な定義なんだけど、それがサード・カルチャー・キッズです。
聞き手:最近良くある話しですね。
阿久澤さん:それで4人でそれを話していて、日本の震災のこととか話していると、僕は日本のために何かしたいとか、僕が何とかしないとって思っていたんですけど、何て言うか日本人は僕だけじゃないのに、かと言って日本だけフォーカスしても今僕は米国にいるし。僕は考え方とかが、純粋な日本人と違うと思うんですよね。でも話しているときに日本のことばっかり話すので、エマって友達が「お前本当に日本好きだなって」って言われて「日本好きかもしれないな」って気が付いたんですよ。
聞き手:なるほど。
阿久澤さん:何でかなって、それは日本を守りたいって思いがあったからなんですよね。でもそれはちょっと気負いすぎだなってことに気が付いて。自分が自分が、だと他の人が何かやっても評価できないし、自分がやらないと評価できないじゃないですか。自分がやらなくても日本がよくなる道、世界がよくなる道っていうのがいろいろあるはずで、今僕はアメリカにいるんで、海外を経験した僕が今やるべきなのかなと思って。そうやって日本から気持ちが離れたっていうのが、それが変わったところですかね。
聞き手:山本さんは変わりましたか?
山本さん:私はまだ気付けてないんですよ、実は。でも今までは凄く保守的だったと思うんですけど、それはちょっと変わってきたなっていう感じはありますね。具体的にはどうって言うのはわからないですけどね。実は就職したら北海度に戻ろうって思って。というのは家族もいるし北海道で育ってきたし、もう帰りたい、帰りたいって思っていました。でも一回海外に出ちゃうとまた海外に行きたいという思いが強くなった。東京も一回出てみなきゃ始まらないってどんどん出て行こう出て行こうっていう気持ちが出てきたのは変わったのかな。他にも変わっていると思うんですけど、今はちょっとわからないです。
聞き手:活躍するある企業経営者が「小さい池では大きな魚は育たない」って言っていたんだけど、みなさんを見ていると外の世界に勇気を持って飛び出して、海外から日本はもとより自分自身を見つめることができて、そして何かしらの変化をもたらしたのは収穫じゃないかな。
阿久澤さん:逆に僕は、日本で頑張るのも手だと思うんです。僕は、日本が合わないと思ったんで海外に行って良かったんですけど。逆に日本で頑張る人達も必要だし。僕の好きな日本を頑張って守って、って思っちゃうんですね。でも海外に行く人の割合が低すぎるというか、行きたいなって思っているのに行かない人が多いのは問題ですね。そこは変わらないといけない。
聞き手:そうですね。大いに外に出てほしいね。ところでアビーさん、日本はどうですか?
アビーさん:東京しか見てないけど人々も街もいいけど、人々がちょっとシャイね(笑)。カレッジタウンだとフレンドリーなので、ハイッ!人のつながりがあるんだけど、日本って田舎もあるけどペンステートからみればどこも大都市なんですね。そういう意味ではちょっと冷たいのかな。
聞き手:フィルム科ってどんな学科ですか?ムービーの勉強をしているんですよね?具体的には?
アビーさん:映画を撮るんじゃなくて監督、ディレクターの勉強をしています。私がやりたいのは映画を撮る方じゃなくてテレビのディレクターをやりたいです。でも日本で英会話の先生になりたいというのも考えています。
聞き手:このインタビューを「未来ロボティクス学科に行きたい」っていう高校生や中学生が見てくれると思うんだけど「海外留学って道もあるんだ」「面白いな」って参考しにしてくれると嬉しいね。さらにその子達に伝えたいことがあるとすれば何かな?
阿久澤さん:短い言葉で言えないですけど、自分の性格とかテンションが海外の生活にもフィットした、それを知ることができたっていうのが、すごく良かった。日本って「狭っ苦しいな!」っていつも思っていたので。海外ではフィレンドリーに抵抗なくなれる気がしたので、それが自分にできるってことが知れたのが一番のポイントですね。英語をゲットしたとか、技術をゲットしたとかじゃなくて、自分がどこに合うかっていうのがわかったってこと。目標が定まったってことですね。
聞き手: 阿久澤さんは、未来ロボティクス学科の1期生で、留学第一号ですよね?これから留学を目指す後輩達も数多く続くと思うんですけど、彼らにアドバイスはありますか?
阿久澤さん:一言で言うと「好きにやれば」っていうことですね。ちょっとやりたいなと思うときに人の目とか、お金が無いとか、いろんな理由をつけてやらないのが一番かっこ悪い。やりたいと思ったら、やってみて失敗したら笑えばいい。その時いっしょに笑ってくれる友達を見つけておけばいいし、周りにだれもいなきゃ一人で笑えばいいわけで「笑って楽しく好きにやれば」っていうのがメッセージですかね。
聞き手:阿久澤さんらしいメッセージありがとうございます(笑)。今日は3人にお越しいただき留学や海外生活のエピソードを楽しく語っていただきました。みなさんの貴重な経験は、これからの人生に大いに役立つと信じています。そして何よりもみなさんの一年間の挑戦が、後輩達の希望になると感謝しています。本日はありがとうございました。
三人:こちらこそ、ありがとうございました。
URL:ペンシルバニア州立大学 http://www.psu.edu/
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