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インタビューシリーズ:interview-15

「卒業生に訊く! 」 未来ロボティクス学科2期生の善教さんに就職してからの今を訊く


聞き手:社会で活躍している未来ロボの卒業生に様々なお話を伺う「卒業生に訊く!」,シリーズ第4回ですが,今日は,2期生の善教さんに来ていただきました.
現在就活中の後輩たちに先輩としてエールをお願いしたいと思っております.
宜しくお願いします.
では,まず,自己紹介からお願いします.
善教さん:よろしくお願いします.
未来ロボティクス学科2期生の善教 雅貴です.
大学では,富山教授の研究室に所属していました.
千葉工業大学で未来ロボティクス専攻を修了後は,村田製作所で働いています.
今年(2015年)で社会人3年目になります.
善教さん

善教さん

聞き手:さて,大学時代の話から伺いますが,どのような学生生活でしたでしょうか.学業,サークル,バイトなど,最も熱中したテーマをお聞かせください.
善教さん:学生生活で一番に思い出せるのは「学業」です.
ロボットは様々な分野の技術の集合ですから,制御工学から回路設計,機械加工等,学ぶことが多くて大変でした.
その分,自分が作ったロボットが動いた時は嬉しかったですね.
未ロボは,実習形式の講義が多かったので,特にその印象が強いのだと思います.
2年生の時に作った倒立振子を安定して立たせようと,四苦八苦したことは今でもはっきり思い出せます.
聞き手:倒立振子は現代制御の基本ですね.理論が分からなければひたすらトライ&エラーの繰り返しになります.数値モデルが成り立つように精度よく機体を作ると,理論式どおりにピタリと静止します.それにしても最も熱中したのが学業というのはさすがです.
未来ロボは1年生では製作実習が多く,2年生になると理論をメインに学び,3年生で研究室に配属されますね.
3年生になると生活が一転したと思いますが,どのような感じでしたか.
善教さん:やるべきことが一気に増えたように感じました.
研究室に所属すると何らかの研究,もしくはプロジェクトに関わるようになります.
ゼミもありますし,学生主導で勉強会を開くこともありました.
研究室での活動は,講義をただ受講するのとは違って,自分で何をすべきか考えなくてはいけません.
だから色々と試してみて,失敗したり回り道をしたりしながら,やるべきことを少しずつ消化していました.
また,研究室に所属すると,色々なことに挑戦する機会が増えたと思います.
私も,学外からの依頼でイベントに出すブースをデザイン学科と協力して作製しました. また,外資系企業に1ヶ月間インターンに行ったり,海外で研究成果を発表したりと,色々な経験をさせていただきました.
このような機会を通じて,自分の視野や考え方を広げることができたと思っています.
聞き手:確かにずいぶん成長していました.何にでもチャレンジする感じでしたね.
インターンシップも社会の仕組みを学べていい経験になります.
私も3年生の夏休みに2週間ほど会社の寮に泊めて頂いて,半導体の開発を手伝いました.
何ものにも代えがたい経験ですね.
では,研究室でのテーマについて少し掘り下げてお聞かせください.
善教さん:私が所属していた富山研究室では,テーマの一つとして「擬似感性」を研究していました.
擬似感性とは,ロボットに感性的な振る舞いをさせるための技術です.
簡単に説明すると,ロボットの表情やデザインではなく,動きで感情を表現することを目的としています.
私もこの擬似感性の研究に関わっていました.
具体的には,私は感情の中でも「驚き」に着目していました.
自然な驚きをロボットに表現させるには,驚きに特化したシステムが必要だと考えたのです.
そして,それまでの擬似感性の技術を応用して,驚きを表現するためのシステムの開発・評価を行いました.
聞き手:まさにこれからのロボティクスに必要な分野,ヒューマン・ロボットインタラクションですね.
この研究成果として,英語で論文を執筆し,海外で研究発表をしたわけですが, どのような経験でしたか.
善教さん:英語の重要性を実感させられました.
ライティングもスピーキングも,自分の伝えたいことが上手く伝わらなくて大変でした. 論文は何度も教授に添削していただきましたし,発表の準備にも非常に時間が掛かりました.
更に,教授とは現地集合,現地解散だったので,会場のホテルに辿り着くだけでも一苦労でした.
しかし苦労した分,発表後の達成感も大きかったです.
日本以外の文化と世界の最先端の研究発表に触れられたことも,刺激になりました.
海外で研究発表をしたことは,私にとって非常に有意義な経験でした.
もし,海外での研究発表に少しでも興味がある学生がいたら,是非挑戦してみて欲しいです.
聞き手:みな通る路ですね.いい経験です.私も最初の国際会議はかなりの珍道中でした.
さて,次に会社のお話をさせて頂きたいと思います.
まずは,現在の仕事内容をお聞かせください.
善教さん:少し前までは,組み込み開発の現場でソフトウェアの開発を行っていました.
現在は,MATLAB/Simulinkを使用したモデルベース開発の要素技術開発を行っています. 今,様々な業界で,効率的なシステム開発手法としてモデルベース開発が注目されています.
村田製作所でもモデルベース開発に注目し,製品開発の現場へと採用し始めています. 私は,モデルベース開発を最大限活用するためにはどうすればよいか,調査・研究を行っています.
聞き手:ロボットの業界では,たびたび村田製作所の「ムラタセイサク君」,「ムラタセイコちゃん」が話題になりますが,ここで簡単に紹介していただけますでしょうか.
善教さん:ムラタセイサク君,ムラタセイコちゃんは共に,村田製作所が開発したロボットです.
最近,新しく「村田製作所チアリーディング部」が加わりました.
ムラタセイサク君は自転車に乗ったロボットです.
ジャイロセンサで傾きを検知し,倒れる方向と同じ方向に体のホイールを回すことで,反作用の力でバランスを保ちます.
ムラタセイコちゃんは自転車ではなく一輪車に乗っています.
ムラタセイサク君と同様に倒れることなく,一輪車で移動できます.
新しく加わった村田製作所チアリーディング部は,ボールに乗って移動するロボットです.
ボールから落ちないだけでなく,10台のロボットで協力して,チームワークばっちりのチアリーディングを見せてくれます.
どのロボットも村田製作所の部品と技術が詰まっていますので,非常に良いPRになっています.
ムラタセイサク君のお陰で会社の知名度がかなり上がったみたいですね.
聞き手:そうですね.先日も学生たちが展示会を見に行って興味津々のようでした.
それでは,そんな村田製作所までたどり着くまでの就職活動はどのようなものでしたか.
善教さん:私は先ず,合同説明会で色々な会社の説明を聞きました.
そして,説明を聞いて魅力的に感じた企業にエントリーしていきました.
そのため,エントリー数は他の人と比べると少なかったはずです.
その分,エントリーシートや面接練習に時間を掛けました.
エントリーシートや面接練習で重要だと思ったのは,人に見てもらうことです.
自分では気づいていなかった長所や,言いたいことが分かりにくい部分などを指摘してもらい,とても助かりました.
特に面接練習は何度も繰り返すことをお勧めします.
練習を繰り返すことで,良く聞かれる質問への対策ができますし,自分の考えも整理されていきます.
事前に面接練習をしておくことで,本番でもある程度の余裕を持つことができたと思っています.
聞き手:では,現在の仕事において,未来ロボティクスでの経験はどのようなところで活かされていますか.
善教さん:未来ロボティクスでは,広い分野の技術を学べるので,ハードウェアと関わりが強い組み込みソフトウェア開発でその経験が活きました.
また,現在の仕事であるモデルベース開発は,MATLAB/Simulinkがデファクトスタンダードになっています.
そのため,未来ロボティクスで学んだMATLABの基本的な操作方法が役立ちました.
MATLABなどの実用的なツールを気軽に利用できる環境と言うのは大きな利点だと思います.
逆に,英語はもっとやっておけば良かったと思っています.
海外での研究発表など,英語に触れる機会は少なくありませんでしたが,社会に出てから自分の英語能力の未熟さを実感しています.
もし,海外留学を考えている学生がいたら,行ってみるべきだと思います.
聞き手:語学の大切さを入学当時の学生が理解するのはなかなか難しいですね.
研究室に入って論文やマニュアルが英語だったり,国際会議で発表するときになって初めてやっとけばよかったと反省するんですよね.
いつでも大歓迎ですので研究室に遊びに来て,学生たちに伝えてください.

善教さんは働き始めて3年近くになりますが,実質的な面,精神面において,社会人と学生時代の一番の違いは何でしょうか.
善教さん:社会人と学生では,「安全」に対する意識が違うと思います.
正直,学生時代は「動けばいい」という意識が多少はありました.
しかし,社会人になると,そういうわけにはいきません.
電源を入れれば確実に動き,非常時には安全に止まるものを開発しなければいけません.
そういった「当たり前」を実現するために掛ける時間が,桁違いに多くなりました.
聞き手:これ重要ですね.でもなかなか学生には伝わりません.
一発動いた動画が撮れれば,後は壊れてもいいというようなものを作ってきますね.
「チャンピオンデータが良ければOK」という感じです.
10回やって10回成功するものを作りたいですね.

では,最後に,未来ロボの学生たちに社会人として一言アドバイスをお願いします.
善教さん:学生時代に色々なことを経験してください.
講義であれ,海外での研究発表であれ,学生時代に経験したことは大きな財産です.
学生時代の経験は,将来きっと役に立ちます.
不安に思うこともあると思いますが,学生時代にしかできないことも多いです.
思い切って挑戦してみてください.
聞き手:本日は,貴重なお話ありがとうございました.