インタビューシリーズ:interview-21
- interview-21:「卒業生に訊く! -10- 」
- interview-20:「卒業生に訊く! -9- 」
- interview-19:「卒業生に訊く! -8- 」
- interview-18:「卒業生に訊く! -7- 」
- interview-17:「卒業生に訊く! -6- 」
- interview-16:「卒業生に訊く! -5- 」
- interview-15:「卒業生に訊く! -4- 」
- interview-14:「卒業生に訊く! -3- 」
- interview-13:「卒業生に訊く! -2- 」
- interview-12:「卒業生に訊く! -1- 」
- interview-11:「海外留学インタビュー」
- interview-10:「実用化に適したロボット創りを目指す」
- interview-09:「超人技ロボット」の開発
- interview-08:「卒業後の進路は?」
- interview-07:「新しい教育スタイルへのチャレンジ」
- interview-06:「蝶型の飛翔ロボットの実現を目指して」
- interview-05:「完全優勝したロボカップジャパンオープン2009(ヒューマノイドリーグ)」
- interview-04:「興味から専門:ロボット創造」
- interview-03:「プロの夢 ―― 18mのガンダムをつくる」
- interview-02:「ロボカップヒューマノイドリーグへ向けて」
- interview-01:「入学後半年経た一年生にナマの声を聞く」
「卒業生に訊く! 」 未来ロボティクス学科6期生の益子さんに就職してからの今を訊く
聞き手: | 社会で活躍している未来ロボの卒業生に様々なお話を伺う「卒業生に訊く!」シリーズですが,ついに10回目を迎えまして,本日は6期生の益子さんに来ていただきました.たっぷりと当時のお話を伺っていきたいと思います.では,自己紹介からお願いします. |
益子さん: | 6期生の益子です.日野自動車(株)車両実験部で働いております. |
聞き手: | このシリーズ,だいたい大学時代の話と会社での話を聞いていますが,まず始めに,どのような学生生活でしたでしょうか. |
益子さん: | 私の大学生活は大きく二つに分かれていて,3セメまでは講義が楽しくて講義に集中していて,その後は友人に誘われロボカップに参加していました. セメ:セメスター.千葉工大は一年間を二期に分けるセメスター制をとっている.4年間で8セメスター.
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聞き手: | 3セメということは,2年生の前期まで講義に集中していて,2年生の後期からロボカップのグループに入ったということですか.1年生からやっていると思っていましたが,意外でした.どのような分野を担当していましたか? |
益子さん: | ソフトウェアの開発で,主に認識機能のプログラミングをしていました. |
聞き手: | オレンジで丸いボールや,青くて四角いゴールを見つけるやつですね. |
益子さん: | それらはもう大体出来あがっていて,私がやっていたのは,画像変換処理の高速化とボール位置の推定でした.理想状態ではみんな見えるんですけど,実際は難しいです.ロボットは動き回っていますし,ボールやラインの色は照明や影で変化します. これらの情報からボールの位置を推定して,ボールが存在する確率分布のマップを作ります.これが無いと,ボールを見失うとずっと発振する(キョロキョロし続ける)破目になります.ボールの確率分布のマップがあれば,ボールを見失ったときボールがありそうな方向に歩いてくれます. シミュレータと実機で実験をしていたのですが,時間の流れの違いなどがあり,結局,最後には実機で調整していました. こういった細かい改良による安定化と新型戦略(AI)、チームワーク(ロボット運用能力)が合わさって2014年の世界大会で完全優勝(リーグ戦、テクニカルチャレンジ、ルイビトンカップ獲得)を果たしました. ボールが存在する確率分布のマップ:ボールが存在する確率が高いところと低いところを等高線のように表現した地図
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聞き手: | あのときは,沸きましたね,ネット上でも盛り上がっていました. |
2014年大会のワンシーン.背の高い方が千葉工大チーム | |
益子さん: | ブラジルのジョアンペソアの大会でした.キッドヒューマノイドで24チーム参加していたと思います. キッドヒューマノイド:ヒューマノイドリーグはサイズによっていくつかの部門に分かれている.
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聞き手: | 強豪校は? |
益子さん: | 2013年まではアメリカのチームダーウィンでした.今は,イランや中国が強いです. 私たちの2014年は,予選を3回ぐらい戦って,決勝トーナメント3回勝って優勝だったのですが,決勝以外は無失点で,決勝は3-2でした. 思い出深いのは準決勝のイラン戦です.イランチームは会場でロボットを組み立てていました.来たときは1台だったのに,試合になったら3台になっていました.「えっ!? 今作るの?」と思いましたね. このチームはそれまで,別リーグで万年王者だったドイツチームにコールド勝ちし,ドイツ全盛時代を終わらせたチームでした. |
聞き手: | でも,そのチームにも勝ったんですよね. |
益子さん: | チームメイト(がプログラムしたゴールキーパーロボット)のスーパーセーブがすごかったです. イランは,コートの何処からでもロングシュートを打てるすごいロボットだったのですが,止めました. 前夜にデータ収集したのがよかったですね.前の晩,同じフィールドで練習(調整)だったのですが,「(こっちのゴールに)蹴って来いよっ!」と言って蹴らせて,ちゃっかりデータをとって解析しました. |
聞き手: | さすがです. |
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益子さん: | でも,試合の後の飲み会で,イランチームの人たちが「おめでとう」と言ってくれた時にはとてもうれしかったですね. 体感的に二日間かけて行ったブラジル大会で,12人で行きましたが,荷物のほとんどはロボット.ロボットの間に歯ブラシを入れて行きました. 2013年のオランダ大会ではボコボコにされましたが,テクニカルチャレンジで1位をとれたので何とかその後につながり,2014年の結果に結び付けられたのだと思います. |
聞き手: | すばらしいの一言です. 物品管理を任されて調べたら管理帳10倍の物品が出てきた話とか,帰りが遅いために寮の風呂が水風呂になっている話とか,飢餓と寒さの限界に挑戦した話とか,黒板だけでなく先生の話す一語一語までノートを取りまくった勉強法とか,畠山賞を受賞した話とか,たくさん,たくさん,お話したいのですが,紙面の都合上,次の話題に移りたいと思います. |
黒板に書いたことよりも,その間に先生が話していることに大切なことがあるのだ」と言われ,書けるだけ書きまくったノート | |
聞き手: | 現在は,会社でどのような仕事をされているのでしょうか. |
益子さん: | 今は,車両実験部でまだ1年を過ぎたばかりです.工場で半年間実習したため実質6ヶ月です.車両の性能機能を満たしているかどうかを試験で確認する部署です. 試験の方法を考え,現場の方,開発部と打ち合わせして,性能機能を保証する部署です. 面白いところは,試験の目標値自体をこちらで提案できるところです.基本的な性能を満たしていても実は不十分な場合があったり,その逆もあったりして,車作りを左右できます. 中でも私は,中トラを担当しています. |
聞き手: | 中型トラックですね.小トラ,大トラもありますね.最近,CMで「トントン,トントン」を耳にします. |
益子さん: | あれは,小トラ(2t車)です.私はレンジャー(8~20t以下)を扱っています. |
聞き手: | バスとか,大型も扱っていますよね. |
益子さん: | はい.ただ乗用車とは違い、トラックの場合、荷台部分はお客様に合わせて作るため、キャブ(運転席)とシャーシ(台車)だけの車が工場から出発していきます. |
聞き手: | そうなんですね.架装(荷台部分)は冷凍食品から動物まで,いろいろなものを運びますからね. 就職活動のとき自動車業界,そして,大型車がメインの日野自動車を選んだ理由は何だったのですか? |
益子さん: | これは,面接のときにも言ったことなのですが,「スポーツカーは走ることに価値があるが,商用車はものを運ぶ能力が価値を決める.自動運転が求められるのはスポーツカーではなくトラック」と思い,日野自動車に決めました. |
聞き手: | 確かに自動運転が求められるのは商用車でしょうね.運転自体が大好きな人は自動運転には興味ないかもしれませんね. 大型車にもハイブリッドの波が来ていますし,バスも自動運転になるのですかね. |
益子さん: | 千葉工大にも1台,ハイブリッドのバスがあるのを知っていますか? プリウスのようなハイブリッドとはちょっと違うのですが. |
聞き手: | えっ,知りませんでした. |
益子さん: | 残念ながら,わが社のハイブリッドではないのですが... ちょっと話は変わりますが,実はトヨタのプラド、FJクルーザーなども日野の羽村工場で作っています. |
聞き手: | 黄色いの,よくみますね... 注:実はこの後,話が盛り上がり,延々と話し込んでしまいました... さてさて,まだまだ話はつきないのですが,この辺でまとめたいと思います. 未来ロボの学生たちに先輩として一言アドバイスをお願いしたいと思います. |
益子さん: | 学生時代,自分をどこまでも追詰めて,そのときに,どこまでなら自分の性能を維持できるのかということをやっていました.未来ロボは限界を超えるチャレンジが出来ます.自分自身を実験台としてどこまでチャレンジできるか頑張ってください. |
聞き手: | 一時間以上にもわたるインタビューありがとうございました.紙面の都合上,ここでは書けないいい話がたくさんありました.また何かの機会にでもぜひ紹介したいと思います. ありがとうございました. |