学科について教員紹介菊池 耕生ワークス1

菊池 耕生

【形態知能研究室】Morphology/Intelligence Laboratory

ひらひら飛ぶ小型はばたきロボットの開発

飛翔昆虫は,高い運動能力を持っています. 飛行機や飛行船,ヘリコプターなど,人間が考え出した飛行様式は数多く存在しますが,重力の数倍で加速する垂直離着陸,直角に近い旋回,瓦礫のすきま等もすり抜ける高速移動,1,000kmを超える「渡り」を実現する長距離飛行など,昆虫が利用している「はばたき」には多くの真似し難い優れた能力が秘められています.昆虫は,はばたきによって翅のまわりに作り出した渦を操り,その渦と相互作用することによって大きな力を得ていると考えられています.近い将来,農園で蜜を集めたり受粉させたりする蜂ロボットや,倒壊現場などで飛び回って救助活動を支援するトンボロボット等が当たり前のように見られるようになるかもしれません.菊池研究室では,1秒間にはばたく回数が少なく,比較的関節数が少ない蝶の飛翔に着目し,
(a) 3台の高速度カメラによる蝶の飛翔メカニズムの解析
(b) コンピュータシミュレーションによる渦の再利用メカニズムの解析
(c) 風洞実験による渦の可視化
(d) 解析されたメカニズムを実現する数センチ,数mgの蝶型はばたき飛翔ロボットの開発
を行っています.

羽ばたき羽ばたき羽ばたき

(左)蝶(クロアゲハ)の写真(中)蝶ロボットのCADモデル(右)蝶ロボットの写真.翼幅11cm,質量500mgです.フラッピング角が大きく,フラッピング運動と同時にリードラグ運動と腹振り運動を行う

高速度カメラで撮影した蝶ロボットの飛び立ちの映像です.1,000fpsで撮影されています.飛び立ちは,対気速度がないなめ,はばたきのみで自重以上の揚力を生み出す必要があります.

シミュレーションによるはばたき飛翔のデモです.流線(太いほど,赤いほど流速が速いことを表しています),等圧力線(赤いほど圧力が高く,青いほど圧力が低いです),流速(矢印が長いほど速度が速いことを表しています)を表しています.翅の周りに渦が出来ていることが分かります.飛翔昆虫は,この渦を捕まえたり離したりしながら飛翔しています.

流線を前,上,側面から見た映像です.赤いほど流速が速いことを示しています.翅の前縁,翼端の形状に沿って流れを作り出しています.

Y=2の平面における等圧力線図と流速です.青いほど圧力が低く,赤いほど圧力が高く,矢印が長いほど流速が速いことを示しています.打ち下ろし時には,翅の上面の圧力が低く(青く)なり,翅の下面の圧力が高く(赤く)なることにより圧力差が生まれ,上昇力になっています.打ち上げ時には,この逆になり,ピッチ角が大きくなっているため推進力になっています.

高速度カメラによる蝶の飛翔の様子です.翅の打ち下ろし時に体を起こしながら上昇し,打ち上げ時に体を沈めながら前進しています.このとき,翅のフラッピングと逆に腹を振っています.階段状に飛翔していることが分かります.


蝶ロボットのクランク機構の動画です.剛体リンクとは違い,弾性体リンクを用いているため,おおきなはばたき角を実現しています.