「インタビュー 藤井先生に聞く」先生と恩師について II

前半からの続きです。

内湾の船渠から社会という大海へ就航

藤井先生:研究はしたかったのです。大学に入って今も尊敬している新井民夫先生という恩師がいて、その先生が本当に素晴らしい方だったので、大学の教員もいいのだろうなって思っていたのですね。それ以上に研究やりたいなって思いもあって。ただ当時、すごい苦学生でお金がなかったんですね。

訊き手:そうでしたか。切実な問題ですね。どのようにして工面されたのですか?

藤井先生:このままじゃ大学続けられないぞ、みたいな状態でした。とにかく大学を続けるために毎日バイト漬けでした。バイトが終わり夜23時ぐらいに研究室戻って研究するみたいなことをずっとやっていて、体を壊してしまい、もう就職しようと思って修士を卒業して就職しました。

当時、新井先生からは博士進学のお声かけを頂いていて、海外留学先とかも紹介してくださっていたのですけど。その時は、目先の経済的な部分が頭の大半を占めていたので、結局は勤めました。

訊き手:うーむ。そうでしたか。差し障りがなければ就職先はどちらだったんですか?

藤井先生:ソニー株式会社です。

訊き手:社会人は何年ぐらい経験されたのですか?

藤井先生:6年間いました。

訊き手:結構長くいらしたのですね?なんでソニーに6年間お勤めして大学に戻ってこられたんですか?

藤井先生:最初はソニーの研究所に勤めていたんですね。「好きな研究をしながらお金もらえるならこんなにいいことはない」って思って。就職して間もなくリーマンショックが勃発して。

訊き手:ありましたね、2008年の秋でした。しかしすごいタイミングですね。

藤井先生:はい。それで、どの会社もそうだったのだと思うのですが、採算が取れない研究部門などは縮小される風潮でした。私が入所した研究所も1年で無くなってしまって、そこから他の部署に社内異動しました。

訊き手:波乱万丈な話です。いきなり荒波をかぶりましたね。

藤井先生:移った先でソニーの新規事業を立ち上げるという話になり、いろいろあって結果としてできたのがタブレット端末でした。当時はアンドロイドの端末が世の中でまだ珍しい頃で、「ソニータブレット」というものをつくるときに一緒にやらせていただきました。

訊き手:なるほど。

藤井先生:乗り掛かった舟なので、結果が出るまで、製品の第一号機が出るまではいようと思って。

訊き手:そこまでを一区切りの目標として退職しないで頑張ろうと?

藤井先生:そうですね。何かを作り上げた、ってところまでは居ないと出て行っても恥ずかしいなって思って。

訊き手:なるほどー。

藤井先生:研究所に1年いて、2~3年かけて製品が世に出たのですけれど、その後も、会社合併や出向など色々バタバタしてしまって。グループ会社への転籍と30歳になる節目が重なったので、えいやで退職しました。

訊き手:退職をするにあたって次の道は決めていらっしゃったんですか?

藤井先生:明確な人生設計は無かったのですけど、やっぱり研究をしようと思って日本国内のいろんな研究所のことを調べました。当時私も無知だったので、恥ずかしながら後でそういうものなのだなってわかったのですけど、研究機関の中途採用ってだいたいどこも博士の学位を持っていないと入れない。そりゃあ、当然ですよね。そして、私は持ってないわけで。じゃあ博士を取りに戻ろうって思って、人事に「ソニーにいながら博士を取らせてくれ」と相談したら「勝手にやってくれ」って言われて。その時に、会社からはサポート的なものが受けられないとわかりました。

訊き手:支援したくてもそれが出来ない社会状況にあったと思います。厳しい時代でした。

藤井先生:はい。論文博士を取るにしても、まだ論文も無いですし、研究も初めのうちはやっていましたけど、途中から開発に回っていたので。もう一度大学に入り直すのがいいかな?って思いました。ただ、ソニーに腰掛けて学位をとるにしても、平日は休めませんし土日に授業はないですし。社会人博士という手段も選べなくて、辞めることを選択しました。

訊き手:新井先生のもとに戻ったんですか?

藤井先生:そうですね、新井先生のところに戻りたかったのですが、新井先生がもう2、3年前に東大を退職されていたタイミングで、それで新井先生のところで博士を取って教員をやっている先輩教員のところにお世話になりました。

訊き手:そうでしたか、そこでは何年ぐらい?

藤井先生:そこでは博士を3年で取得して、運よく翌年に助教にしていただいて、また次の年に講師にしていただき1年間勤めました。結局は、東大に戻ってからは正味で5年間、前職の研究室にお世話になってこちらにきました。

訊き手:なるほどー。そうなんですか。既にそうかもしれませんけどサラリーマン時代の経験がこれからいろんな場面で生きてきそうですね。

藤井先生:それは本当に東大の中でも共同研究とかする上で、企業側の論理と言いますか、企業側にいた人間なのでわかる部分も多々ありましたね。

訊き手:そうですよね。

藤井先生:そういう意味では、社会人経験のおかげで活動の幅は広がったと思います。

訊き手:研究者として研究重視でいいという時代もあった。今は研究者という立場と教員という立場で、学生との関わりのバランスが大きく変化してきているのかなと感じていますが、そういう意味でも企業の中でプロジェクト等、やってきたことを今度は学生とのかかわりの中で大いに生かせていけるのでは?

藤井先生:そうですね、私にとってそれはひとつの強みかなって思っています。

訊き手:先日、感じたんですけど藤井先生が新しく研究室に配属になった学生さん達との関わりを見ていて楽しそうにやっているなって思ったんですね。先生ってとにかく多忙ですし、用件を伝えたら、ぱっていなくなっちゃうイメージなんですが、学生さん達の行動を楽しそうに見ていらしたんで、来たばかりに見えないなって。すごくフレンドリーだった印象ですね。

藤井先生:私がっていうより学生の方が親しくしてくれています(笑)

恩師とは航海における羅針盤なり

訊き手:あのー少し話を戻して、大学時代の恩師である新井先生ってどんな方なのか知りたいんですが。人生の影響を受けた先生の人となりや、どういった部分に影響を受けて先生って大きいなって感じられたんですか?

藤井先生:なんでしょうね、私がいた学部は4年生から配属されるのですけど、これは研究室にまだ配属されていないときの話です。新井先生の講義を受けに行ったのですね。で、何となく疑問に思ったことがあって講義が終わってから前の方に質問に行くと、なんかすごく丁寧に接してくださって。そこまでは他でもある話で普通はそこで終わるのですけど、ちょっと来なさいって研究室まで連れて行ってくださって、本を1冊貸して下さったんですね。「君はこれで勉強をするといいよ」って。

訊き手:それは質問に関連する本ですか?

藤井先生:はい、「君の話を聞いているとまずはこれを勉強した方がいいと思う」といって貸してくださったんです。

訊き手:なるほどヒントをくださったわけですね?

藤井先生:はい。当時、私たち学生からすると東大の教授の先生はすごく偉くて遠い存在だったので、そこまでしてくださったことにまず感動したっていうのが一つですね。

訊き手:しかも大好きな本を貸してくださった(笑)

藤井先生:研究室に所属してからも、研究のことはもちろん見てくださったのですけど、当時の私は体調を少し崩していて、それを本当に自分の子供のように心配してくださって。

訊き手:そうだったんですか。

藤井先生:はい、なんか妙に動悸が激しいというか。それで、そのことを少しお話したときに、その場でご自分の知り合いのお医者様に電話をして予約まで取ってくださったんです。

訊き手:えー。それはすごい。

藤井先生:それで「ここは心臓の外科医の名医だからここに通いなさい」って通わせてくださって。結果として、心臓のちょっとした欠陥が発見されて適切な治療を頂いて。おかげさまで今は元気です。

訊き手:感激ですね。その人格的な部分に影響をされたことが大きいんですね。

藤井先生:はい。研究の意味でも、もちろんすごく尊敬しているのですけども。実は先日、新井先生の70歳の記念パーティーに出席して、その時のことなのですが、パーティーの最後のスピーチで「学生に対しては何ができるわけではないから、取りあえず誠心誠意接することだけを心掛けてきた」って自然体でおっしゃるんですね。あーやっぱり、そういうことをちゃんと言える先生は素晴らしいな、って改めて教えていただきましたね。

訊き手:すごいですね。重みのある一言。

藤井先生:はい、すごく尊敬しています。

訊き手:それはよき恩師と出会えましたね。「千葉工大の先生になりました」っていうことを報告されましたか?

藤井先生:はい。ただ、そこはなかなか恐れ多いのもあって、言うタイミングを逃しているうちに、結局バタバタしてご報告が遅れたところもあるのですが。

訊き手:そうですか、よくわかります。

藤井先生:すごく尊敬しているだけに、「私ごときの近況」みたいなことはなかなか報告しづらいです。

訊き手:じゃあ「半径5メートル以内は近寄れない」みたいな感じですか?

藤井先生:「師の影を踏まず」みたいな感じです(笑)

訊き手:なるほど(笑)必ず「恩師はどなたですか?」って先生方に聴くんですけど、必ず一人は大事な恩師という大きな存在がいらっしゃいますよね。そんな藤井先生ですが、学生さんと接する場面がこれから更に多いと思うんですけど、接するにあたって心掛けていることはありますか?

藤井先生:東大で後輩をたくさん持たせてもらったのですけど、その時からずっと思っていたのは一人一人とちゃんとコミュニケーションをとることですね。ルールを決めて、従わせておけばいいという先生もいると思うのですけど、学生一人ひとり人間なので例外だらけですよね。そういう一般的な総論で、対応すべきではないと個人的には思っていて、人数が増えてくればもちろん大変だと思いますが、それでも折角縁があったのですから、やっぱり総論ではなくて各論で一人一人の学生に接していきたいなって思っています。私もそうやっていただいた記憶があるので、そこは守りたいなって。

訊き手:研究室から将来活躍をしていく学生さんが陸続と出ることが楽しみですね。彼らがどのように伸びていくかわからないし、どのよう可能性を秘めているかわからないですからね。

藤井先生:はい、その通りだと思います。

訊き手:研究室では特にこれっていうテーマはもうお考えですか?

藤井先生:東大でやってきたテーマはもちろんあるのですけど、それをそのままこちらで続けられるかというと、共同研究のからみや機材的な問題もあるので、そのままはなかなかやりづらいところもあります。ただ今までやってきた建設ロボットで災害対応をやるだとか、いわゆる無人化の技術を研究してきたので、運よくこちらで共同研究先が見つかれば、そういうことに取り組んでいきたいなと思っていますね。あとは、もちろんそういう災害対応などの重要な課題は、大きなテーマとして今後も続けていきたいのですけど、小さいテーマとしては人の役に立つようなものや技術についても、初心に返って取り組んでいきたいなと思っています。テーマはチャンスをうかがっているような状況です。

訊き手:そうですね、着任1ヵ月。これからですね。現実的な課題としては何かありますか?

藤井先生:しばらくは研究費を稼がないといけないですね。前職では大きな研究室にいましたので、有難いことに機材とかPCなどで困ったことはないのですが、こちらではそういうわけにはいかないので、まずは研究費の確保を、と思っています。

訊き手:なるほど。全て1からのスタートなのですね。さてインタビューを読んでくれている「未ロボを目指したいな」あるいは「ロボットのことを勉強したいな」という中学生・高校生達にアドバイスやメッセージ、こんなことしたらいいよってありますか?

藤井先生:今、ロボットは特に盛り上がっていますが、表面的だけではなく本質的にも急速かつ大きな進歩を続けている分野だと思います。なので、興味を持っている学生の皆さんは、やはり常に最先端のことを追っかけて行くのが良いかなとは思いますね。
でも、それはとても大変なことだとも思います。たぶんロボットに限らず、全ての研究分野がそうなのでしょうけど、あることを研究しようと思うと、まずは古いこと・既存の技術を勉強しなければいけません。でも、進歩が速いので、学ばなければいけないことが次から次っていう話で。例えば、今は私が学生の時からは信じられないぐらいの多機能・高性能なツールがオープンソースで出てきています。我々が汗水たらして、それこそ1年ぐらいかけてやってきたことを、皆さんがオープンソースを組み合わせて数時間でやっちゃうような時代になっちゃっています。ただそれを使うっていうのならまだ良いのですが、使いこなしたりそれを応用したりするために、本質的なところを理解しなければならない。真面目に取り組もうとすると、それだけ大変だと思うのです。巨人の肩の上に立つって話がありますが、肩の上に立つためにはハシゴを掛けてでもいいから巨人に登らないといけない。技術でご飯を食べていくためには、古典を勉強して、そのうえで最新の技術を学び、その上により新しいものを作っていく必要があります。なので、学生の皆さんには最先端のことには常に触れつつ、同時に,自分で考えることができるようになるために本質的な勉強もしていって欲しいなって思います。
あとは、これは学生にも言っている話なのですけど、自分ひとりでやっていても限界は絶対にくるので「人に質問できるようになりましょう」と。わかんないことは別に恥じゃないので。「わからないことをわかっているだけでましだ」って話ですね。

訊き手:そうですね。聞くことは一時の恥であって聞かない方がマイナスですよね。

藤井先生:はい、今の時代は知らないことを聞くことは情報スキルなので恥でもなんでもないので。

訊き手:最後になりますが本学で「こうしていきたい」っていう意気込みをお聞かせいただけますか?

藤井先生:まずは「藤井研」って言ったら、こういうことをやっている研究室なのだって言う代名詞的な研究を早めに確立したいと思っています。准教授なのに、まだそんなことを言っているのかって話ですけど、それを早急にやりたいというのが、近い将来の目的ですね。あとは継続的な目標で言うと、学生が卒業していった後に、また顔を出したくなるような研究室を作りたいなって思っています。

訊き手:ぜひそのような伝統がある研究室なりますよう私も願っております。今日は、ご自身ことを含めて赤裸々にお話しいただき感謝いたします。また貴重なお時間をありがとうございました。

藤井先生:こちらこそありがとうございました。

藤井研究室 http://www.rsa.it-chiba.ac.jp/fujiilab/

「インタビュー 藤井先生に聞く」先生と恩師について I

2018年5月11日午前 津田沼校舎2号館にて

訊き手:今日は2018年度から未来ロボティクス学科に着任された藤井浩光准教授にお話をうかがいたいと思います。藤井先生、どうぞよろしくお願いいたします。

藤井先生:こちらこそよろしくお願いします。

未ロボに着任して感じたことは?

訊き手:まず藤井先生はこの4月に着任をされましたが、未来ロボティクス学科の先生方は大きくわけて、機械工学系・電気工学系・ネットワーク工学系、それからハードか?ソフトか?に、分類されると思いますが、藤井先生の研究はどういった分類になりますか?

藤井先生:はじめに本学にエントリーするときの公募には「ロボットビジョンの教員を募集」しているってありまして、私自身はロボットビジョンをずっと専門でやってきた人間ではないのですが、特に博士課程以降に「ビジョンの研究」をすることが多かったので、ちょうどいいと思って手をあげました。私は、どちらか寄りか?ハードか?ソフトか?と言えばソフト寄りの人間です。

訊き手:そうしますと前回インタビューした上田先生に近い?(上田先生:インタビュー参照

藤井先生:そうですね。近いというかご存知かもしれませんけど上田先生と私は同じ研究室出身なので。

訊き手:そうなんですか?!出身大学が同じという認識だけでした。

藤井先生:私の先輩なのです。上田先生は。

訊き手:じゃあ同じ研究室で重なっている時期があったんですか?

藤井先生:ありました。私がB4で入ったとき、上田先生は当時助手。今でいう助教ですね。

訊き手:先ほどの「ビジョン」っていう言葉は聞きなれないんですが、例えば中学生や高校生に分かりやすく説明するとどんな研究なんですか?

藤井先生:画像を扱う研究ですね。ビデオなどの動画像も含めてなんですけど、そういったものから情報を抽出したり加工したり。画像を使うときは何かの目的があると思うのですけど、より目的に合ったような提示の仕方だとか、余計なものが映っていたら消すだとか、そもそも目的のための計測の仕方だとか。

訊き手:はいはい、なるほど。

藤井先生:一般的な画像処理全般から、ロボットビジョン、たとえばそれはロボットの目に相当して、周囲をセンシングした結果から何らかの情報を得る手法を研究したりします。

訊き手:ではこちらの研究室でもこの4月から徐々にそういったことの研究を始めていらっしゃる?

藤井先生:そうですね。

訊き手:メインになるわけですね?

藤井先生:そうです。とくに3年生の学生はそういうことを期待して研究室にきていると思うので、ぜひやっていきたいと思っています。

訊き手:じゃあ普段の講義の方ではそういった部分の担当をさせているのですね?

藤井先生:はい、冬学期から3年生向けに「ロボットビジョン」っていう授業をやらせていただきます。

訊き手:いまの授業はどういった内容の担当なんですか?

藤井先生:研究室の立ち上げのバタバタを考慮していただいているのか、今年(2018年度)の夏学期は千葉工大では授業がありません。

訊き手:なるほど。そうですか。

藤井先生:全員の教員でやるようなオムニバス形式のものは、担当させてもらったりするのですけど。シラバス上に載っている授業はないです。

訊き手:ざっくばらんに千葉工大に着任されてイメージはどうですか?まだ1か月ちょっとですけど。

藤井先生:はい、表面的なイメージでいうとキャンパスがとにかく綺麗だということと、システム化を意識されているなというイメージがあります。

訊き手:今までとは違うのですか?

藤井先生:はい、今までの東京大学は国立ですから“古き良き”みたいな感じで、授業の配布資料とか、千葉工大がiPadを使って行っている出欠チェックも紙ベースですし、古い建物なども多いのですが文化遺産になっていたりして改修工事ひとつ行うのも大変みたいです。

訊き手:取り壊す壊さないをニュースで報道されていたことがありましたね。ちょうどその前後だったか所用で本郷へ行ったとき立派な樹が伐採されていて、その時の木の香りを今でも思い出します。

藤井先生:ああいうレトロな雰囲気が好きな人には良いのかもしれないですけども、いかんせん機能性の観点では、新しいほうが良いってこともありますね。私は生活をするなら近代的な綺麗な方が好きです。

訊き手:他に何かありますか?

藤井先生:他はですね、まだ千葉工大の学科はここしか知らないのですけど、先生方の仲が良いのとフランクだなっていう感じがします。

訊き手:なるほど、なるほど。

藤井先生:あと “会議を減らそう”みたいな、そういうポリシーを皆さん意識されていて、積極的に実践しているのはとても好感が持てました。会議やミーティングに割く時間は、前職から圧倒的に減りましたね。

訊き手:圧倒的ですか?

藤井先生:はい、そういう拘束時間は減りましたので非常にありがたいですね。

訊き手:おそらく学科として努めてそういう雰囲気なんですかね?

藤井先生:そうですね、はい。そういえば、ここに来る前にも、上田先生から「この学科の良いところの一つは会議が少ないことだ」と伺っていました。

訊き手:そんな話があったんですか(笑)今まで多かったんですね?

藤井先生:そうですね。限られた時間なのでそこは大きいですよね。前職の時には私は学科でも一番の新参者だったので、出席して発言権はあるのでしょうけれども、発言する場がなくて、それで基本的に「何で私ここにいるのかな?」って(笑)

訊き手:なるほど(笑)たしかに結論が出ないで終わってしまう会議とか多いかもしれません。一般的に(笑)そういう部分で今までと全く違うと。

藤井先生:文化の違いを感じましたね。良い面も悪い面も相互にあると思いますが。例えば、こちらの大学ではボールペン1本から検収を受けるっていうのは、さすがにちょっと驚きましたね。

訊き手:どうせやるなら徹底的にやらないとタガがどんどん外れるからというのはあるんでしょうね。若い先生が比較的多いというのはありますか?

藤井先生:あっ、それも思いましたね。学科長の菊池先生もお若いですし。学長もご自分でおっしゃっていましたが、若い方ですよね。

訊き手:そうですね、お若いです。非常に気さくですしね。若い分、活力がみなぎっていると感じています。

藤井先生:私もそういう意味では、環境的にはすごくやりやすく感じています。

雪はじゃれるもんじゃない闘うものだ!?

訊き手:なるほど。話題をかえて、藤井先生はどちらのご出身ですか?

藤井先生:出身は福井県です。

訊き手:そうですかー。おいくつまで福井にいらしたんですか?

藤井先生:18歳ですね。大学受験といっしょに出てきて、ちょうど人生の半分は東京で過ごしています。

訊き手:福井の有名なものは何でしょうか?

藤井先生:よく聞かれますが、答えに困ります。福井に詳しくなる前に上京してしまったもので。今となっては多くは止まってしまいましたが、原発銀座って言われたほど原子力発電所がたくさんあったり、食べ物だとカニとかソースカツ丼だったり、工業製品だとメガネですかね?

訊き手:鯖江ですね。なるほどそうですか。じゃあ福井の方に今も帰省されたり?

藤井先生:はい。母や弟妹が福井に住んでいるので。

訊き手:私はここが地元なので故郷があって帰省できる人がうらやましいです。たまに帰省って楽しみですね?

藤井先生:そうですね。ところで、福井県って冬の空がとても暗いのですね。11月~2、3月あたりまで、鉛色の空で…。

訊き手:あーわかります。まさに曇天、鉛色。

藤井先生:私は、あの冬の雰囲気が嫌いで。寒いですし、雪かきとかしなきゃいけないですし(笑)

そういう意味で、東京に受験に来たとき、2月ですかね。2月なのに青空で、そこにすごく感動して。ああ、もう東京に来ようって思ったんです。それぐらい感動しました(笑)

訊き手:・・・青い空が感動ですか、あああなるほど(笑)

藤井先生:福井自体は好きなのですけど、やっぱり冬の雰囲気が…。

訊き手:冬のスポーツとかいかがですか?

藤井先生:からっきしですね。ぜんぜんやらないです。

訊き手:ちなみに未ロボの先生ってバスケットをやってた方がなぜか多いですね。太田先生・青木先生それから菊池先生?上田先生もやっていらした。あと藤江先生。大久保先生はバスケットボールの弾道の研究。

藤井先生:そうなのですね。私はバスケットどころか、雪国出身なのにウィンタースポーツすら1回もやったことないです。スキー・スケート・スノボやったことないですね(笑)

訊き手:そうですか。へえー。なるほど。

藤井先生:東京に来てからもウィンタースポーツに誘われるたびに言うのですが、「雪はじゃれるものではなく闘うものだ」って、理解をしてもらったことはないですが。

訊き手:闘う!?なるほどそうですか(笑)

藤井先生:福井でも少数派ですけどね(笑)

あの頃一番嫌いなのは学校の先生だった

訊き手:今の研究を目指そうと思ったきっかけは何ですか?

藤井先生:きっかけですか。・・・先ほどもありましたが、もちろんここの学科では“ビジョン”を頑張ってやろうと思っているのですけど、もともとは制御寄りのことをやっていたり、最適化だとか、機械学習とかもやっていたりしたので、分野としては広く浅く散らばっている人間ですね。そういう人間にとって、要素技術の集合体であるロボティクス分野っていうのは、進路として実に都合がよかったのです。だから、これがやりたいと志してこの分野を選んだというよりは、何でもありなのでロボティクス分野を選んだみたいなイメージです。非常に恥ずかしい話なのですけど、研究していること自体が好きなので、研究できれば比較的なんでも受け入れる立場の人間だったりしますね。

訊き手:なるほどー。それは遡ると、高校とか中学とか小学生のときからそういう物事を突き詰めることが楽しいって?

藤井先生:小中高の時はもちろん研究なんてやっていないのですけど。頭を使って何かに没頭・没入していることが好きだったので、目の前に対象があったら取り組むみたいな、そういうことをやりたくて。

訊き手:小中高ぐらいの時は没頭していることって何があったのですか?

藤井先生:なんでしょうねー?うーん。ただ普通に勉強はしていましたよね。

訊き手:勉強に没頭することが楽しかった?

藤井先生:はい。新しいことを次から次に知れたので、教科書とかも授業前にもらったらすぐに一通り読んじゃう人間でした。

訊き手:ほーなるほど。図書館なんか行ったらパラダイスですね?

藤井先生:はい、本は好きでしたね。

訊き手:それは小学生?

藤井先生:はい、小学校・中学校・高校と本は好きでよく読みましたね。

訊き手:なるほど、図書館にこもった方ですか?

藤井先生:図書館にはこもらずに借りてきて自宅でずっと読んでいました。おかげで目を悪くしちゃったのですけど。

訊き手:そういった性格的なところっていうのは、ご両親から受け継いでいるものなのですか?例えばお父さんがひとつのことに没頭する人だとか、おじいちゃんがそうだとか?性格とかって遺伝的なことがあったりするじゃないですか?

藤井先生:そうですねー。誰に似たとかわからないのですけど、兄が分野は違いますが、のめり込んだら調べつくすような人でしたので、系譜にそういう傾向はあったのだと思います。父親はどちらかというと浅く広く興味を持って、たぶん私の性格は父親からなのだと思いますね。だと思っています。

訊き手:そうですか。じゃあ将来「学校の先生になろう」というよりも没頭する中で気がついた時に先生になっていた?っていうタイプでしょうか?

藤井先生:先生になるつもりはまったくありませんでしたね。小中高のときにも、一番嫌いな職業が「先生」でしたから。もちろん個人としては素敵な先生もいらっしゃいましたが。

訊き手:そうでしたか、お嫌いでしたか(笑)このことって分かれますね。「先生になる」と目指していた方と、全くその分野へ行くと予想もしていなくて、でもメカが好きで気が付いたら「なってしまった」と。お嫌いだったんですか?

藤井先生:はい、大嫌いでしたね(笑)

訊き手:先生が(笑)

後編は近日公開です。

卒業生に訊く!未来ロボティクス学科1期生 菜花健作さん

聞き手: 社会で活躍している未来ロボの卒業生に様々なお話を伺う「卒業生に訊く!」、久しぶりのシリーズ第11回ですが、今日は一期生の菜花さんに来ていただきました。卒業後の将来像を描いてもらう3年生の授業「キャリアデザイン3」にたまたま来て頂いた関係で、今回のインタビューと相成りました。現在就活中の後輩たちに先輩としてエールをお願いしたいと思っております。

では、まず、自己紹介からお願いします。

菜花さん: 株式会社ゲームフリークに勤めている菜花健作です。未来ロボティクス一期生として大学に入学し、大学院を出た後今の会社に入社しました。

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「インタビュー 藤江先生に訊く」 藤江研究室ってどんな研究をしているの?ⅠI

場所:藤江研究室,日時:2016年秋

前回に引き続き藤江先生にお話を聞いていきます。

訊き手: なるほど。さて、研究室の方のお話を少し具体的にうかがいたいと思います。

藤江先生: 始めに説明しました通り、音声を研究している学生、画像を研究している学生、ロボットあるいはシステムを研究している学生がいます。研究の内容としては音声とか画像を扱っている学生は音声から感情を読み取ったり、画像から表情を読み取ったりしています。システムを扱っている学生は、対話システムや会話ロボットを実際に作って、人と自然な会話ができるかを確認するといった研究をやっています。

訊き手: それらの研究は、どちらかというと研究内容としては遠い未来に形ができあがる基礎的な研究というよりも、近いところで形になっていくイメージの研究ですね。

藤江先生: そうですね。

訊き手: ちょっと前までは見たことのなかった画像認識や音声認識も、最近では生活の中で見かける場合も出てきましたね。そういったところのさらに進んだ部分の研究をされているのですね?

藤江先生: そうですね。今まさに巷で、人工知能ブームで、今の技術でやれば何でもできると思っている人も多いと思うんですけど、そう簡単ではありません。問題を見つけるセンス、観察力というものが必要ですし、実際に物を作って使ってみて初めて分かる問題点というのもたくさんあるわけです。例えばPepperをはじめとして市場にロボットが出てきていますが、使ってみて全然ダメだねと言ってポイと捨てちゃうような感じでは研究になりません。その何がダメなのか、ダメとわかったところを埋められるかどうかというところが勝負ですね。とは言え、そのような場当たり的なことだけやっているだけではなく、遠い未来を見据えて研究をすることも大切だと思いますね。

学生時代に身につけたいこと

訊き手: なるほど。藤江先生の研究室の学生さんが頑張っている姿をガラス窓越しに拝見することが多いのですが、研究をするにあたって、これは大事だよって伝えていることは何かありますか?例えば忍耐力とか?(笑)

藤江先生: はい…(かなりの間があって)「疑い」ですかね。

訊き手: 疑いですか。物事に対して常に疑うという視点を持つということですか?“常識”と言われるものにとらわれない、ということですね?

藤江先生: そうですね。ちょっと夢の無い話かもしれませんけど。研究者にとっては大事な視点です。何にでもそういう視点を持つというのは、学生にも必要だと思いますね。1年生の初めに話すときも、伝えるようにしているのです。教科書を信用するなと。教科書すら信用するなって(笑)。

訊き手: 「教科書を信用するな」それは面白いお話ですね。学生さんはどんな風に聴いていますか?うなずいていますか?

藤江先生: 残念ながらうなずいてはいないですね(笑)。先生から「なんでこうなるの?」と質問をされたときに「ここにこう書いてあるから」と答える学生がいることは、他の先生もよくおっしゃっています。多くの人は、大学に入るまでは失敗することや疑問を持つ機会が少なくて、教科書に書いてあることや先生が言ったことはすべて「正しい」と信じ込むというのに慣れてしまっていると思うんです。研究を始めるといろんな論文を読むことになりますが、論文はいろんな人が主張したいことや、実験をやって証明してみましたみたいなことが書いてあるわけです。でもその実験がどれくらい信用できるものなのか?という視点が大事で、絶対鵜呑みにしちゃいけない。

訊き手: 厳しい指摘ですが、おっしゃることは同感します。

藤江先生: だけども、疑問を持たずに鵜呑みすることに慣れてしまうと、「そういう意見もあるかもしれないけど私は違うと思う」とか「私は違うやり方があるのじゃないかと思う」と考えることができなくなってしまうと思うのですよ。そこのところはちょっと鍛えないといけないなって思います。ではどうやればいいかってところは難しいところではありますね。

訊き手: 意図的でも物事に疑問を持つってことを習慣づけるって意外と大事だと思います。

藤江先生: 大事ですねー。

訊き手: 無理やりでもやっていけば、だんだんそういう視点になってくるのかもしれませんね。

藤江先生: バランスが大事だと思うんですけどね。

フィールドにはヒントが隠されている

訊き手: 藤江研究室の紹介ボードが廊下に大きく貼り出してありますね?あそこに介護が必要な高齢者に「漢字の問題を出して回答する…」あれはどんな狙いがあるのですか?

藤江先生: 会話ロボットでフィジカルなサポートは難しいので、会話を活かしてやりましょうという方針がありました。そこで実際、僕と博士課程の学生がいっしょに施設に一日お手伝いに行って、ロボットにできることがないか探しました。そこでやっていた、介護士の方が司会をやって本を見ながら「これは何と読みますか?」と質問をして、高齢者の方が「漢字の読みを当てる」というクイズゲームを見て思いつきました。このゲームは、これをきっかけにみんながワイワイしゃべって欲しい目的があるはずです。ロボットをこの中に混ぜて「盛り上げる」ことはできないか?と考えたんですね。ロボットを司会にして何かやらせるっていう発想が普通だと思うのですが、それは技術的にも難しいし、本来の目的はゲームの進行をするというよりは、面白い雰囲気、楽しい雰囲気をつくることだから、ロボットは高齢者側に入れて「ちんぷんかんぷんな回答」をしたりとか「変なことを言う」と雰囲気が和んで、他の高齢者の方たちが回答しやすくなったりするなどの効果があるんじゃないかって仮説を立てたんです。

訊き手: おもしろいですねー。和ませるのも計算は入っている?

藤江先生: そうですね。今どの問題を出されているかは、人間の司会者がiPadで選んでいるのでロボットはわかっています。その問題に合わせた「面白いエピソード」とか「ちんぷんかんぷんな回答」とかっていうのを適切なタイミングでしゃべるような工夫をしています。みんながじゅうぶん盛り上がっている時は、無理に割って入って変なこと言う必要もないので、ちょっと静かにしています。

訊き手: それは空気を読むってことですか?すごく難しそうですね。

藤江先生: そんなに難しいことはやっていないです。高齢者の方たちはマイクを付けているので、その声が入っているとか、発言が減っていないかとかを見ています。あとは、司会者から話を振られたら言いましょうとか、最低限、参加者としては守るべきことは守ったうえで、ちょっと盛り上げられそうだったら、盛り上げる振る舞いをするようにしています。そういうのはロボットならではだと思います。

訊き手: それは、プログラムを作って実現するのですか?

藤江先生: プログラムですね。もともとロボットはあって、動作などは一通り揃っています。あとは、どういうことを言わせたいとか、どういうタイミングで言わせるかっていうことをプログラムしていくことになりますね。

訊き手: いろんなデータを取ってそれをもとに作り上げていくっていうことですか?

藤江先生: そこまでできれば立派ですね。

訊き手: そこまでは難しいのですか?

藤江先生: 会話のデータをたくさん取って、こうしたときにはこうした方がいいねということを見ていくのが理想的です。音声認識なども大量のデータを集められるようになって発展してきました。しかし、現場に持っていける機会は限られているので、たくさんデータを集めるという方法は取りづらいです。これは会話ロボット、対話システムを研究している皆さん共通の悩みだと思うんです。特に学生の研究の実験では、所属する研究室の学生二十人にアンケートを取ることが限界だったりします。

訊き手: なるほどー。時間とお金がかかるのでデータをとるのが大変だと言うことですね。限られた中でどのように工夫をするか。

藤江先生: そうです。不特定多数の人にお願いをした場合、ありがとうございましたとお礼を言うだけではやってもらえません。限られた条件の中でどうやっていくのかがこれからも苦労するところでしょうね。

訊き手: おじいちゃんやおばあちゃん方との「漢字クイズ」は盛り上がるのでしょうか?先輩方は博学ですから。

藤江先生: そうですね。大変盛り上がります。ただ以前、漢字がとても得意な方が一人いて、うまくいかなかったときがありました。どんなに難しい問題を出してもその人がすぐに答えちゃう。ロボットが用意した面白い回答を言う暇もないぐらい(笑)。

訊き手: なかなかの想定外ですね。今後はどのような方向を考えていますか。

藤江先生: いま研究室にいる3年生の学生のおばあちゃんが、高齢者や認知症の方がいらっしゃる施設で、傾聴という「話を聴いてあげる」ボランティアをしているんです。

訊き手: 最近流行っていますね。

藤江先生: はい、それをロボットにさせられないかな?という話をしていて。

訊き手: なるほど、それはなかなか面白い視点ですね。

藤江先生: それはもともと僕もやろうと思っていたことです。ロボットに「うなずき」をさせたり「相づち」を打たせたりする研究を以前からやっていたので。傾聴のとき、そういったことをどのようにやってあげれば満足するか?ということが分からないので研究テーマとして魅力的です。他の研究者の人達も一生懸命頑張っていて、何かを言ったらそれに対して「適切な質問を返してあげる」とか「感心してあげる」とかそういうことを進めています。

訊き手: そこには、うなずきの他に、顔の表情とか身体の動きとかの関わってくるのですか?広がり過ぎるときりがない?

藤江先生: そこは難しいところですね。人の数だけ様々ですし、表面的に聴いてあげてるよってゆうふうにしていればそれでいいのかも分かりません。

訊き手: 満足度ということですか?

藤江先生: そうです。少なくとも、ボランティアが必要ということは、ぬいぐるみに対して話しかけて満足するということではないはずなので、何かしら反応を返してあげなければいけないということはわかります。しかし、人によっては今まで話したことに対してどう思いますか?と適切に返してあげないと「この人ちゃんと聴いてくれない」と不満を感じるかもしれません。その学生が言うには認知症の程度によっても変わるということです。認知症が重い人は、質問をしたときに満足しているかどうかがはっきりとはわかりません。でも、それでも話しているからそれでもいいかもしれない。一方で、本当の意味で会話をしたいと思っている人は、もしかしたら適当に反応しているだけでは、満足してもらえないかもしれません。

訊き手: 対象が人間である以上、現実を見据える厳しさと優しさを兼ね備える必要があるのですね。

藤江先生: 感心したりすることが機械にできるのかっていう疑問はあって、最終的には人の手が入らなければいけないのかなと思っています。現実的には、人がずっとしゃべるのに付き合っていると時間がどんどん奪われてしまいます。一時的な相手はロボットにしてもらって、録音なり録画したものを自動的にダイジェストにして、今日は太郎さんがこんなことをしゃべりました、花子さんはこんなことしゃべりましたよってことを、職員さんが見て感想を書きとめておくと、それをロボットを介して返してくれるといったこともできるかもしれないと思います。必ずしも高齢者とロボットの一対一で共有した時間だけじゃなくて、周りにいる人たちとうまく連携して高齢者のクオリティ オブ ライフ(QOL)を 全体として上げられるような仕組みですかね。そういう風に考えていかないと、変なものを作っちゃうと思うんですよね。ロボットなのだから何でもやってあげなきゃいけないって発想だと凄く狭いものになるし、満足いくものがなかなかできないってことになっちゃう。

訊き手: そうですね。これは必要な研究であることがわかってきました。

藤江先生: これからますます高齢者が増えるし、人手も足りなくなりますからね。最後は人同士が繋がりたいっていうのがあると思うので、ロボットはクッションのような働きをするのがよいと思います。いまはどうしても相手ができないのだけどっていう人と、今どうしても相手をしてもらいたいっていう人の間にいて、時間をずらして繋がれるように。空間を超えるという発想もよくありますよね。

訊き手: ぜひ良い成果がでることを願っています。

ロボットをもっと勉強したい中高生へアドバイス

訊き手: 中学生とか高校生で、ロボットを勉強したいなと思っている人たちに、中学・高校の時はどんなことをしたらいいよっていうアドバイスはありますか?

藤江先生: どうでしょうねー。さっきの話の続きじゃないですけど、世の中に売っているロボットのキットとか、そういうものを作って、経験するっていうのはいいと思ういます。でも、そこでいろんな失敗とか、いろいろ疑問を持ってみるといいと思うんですよね。例えば電子工作とかで、ここに何オームの抵抗を付けましょうとか、LEDをつけましょうかとか、いろいろ手順は書いてあると思うんですけど、なぜここにこういうものを付けなきゃいけないかとか、なぜここをこう繋げなきゃいけないかって考えられるともっといいと思う。それを取ったらどうなるかとか、切ったらどうなるかとか、そういうことをたくさんやって、壊してみてもいいと思うのです。僕もパソコンを壊したりしました(笑)。そういうことをやっておくと、勉強が楽しめるきっかけにもなりますね。あの時のあれは、こういう理屈で壊れちゃったのかということがよく分かる。

訊き手: その他に何かありますか?例えば大学の研究室に配属されると体力勝負になるから今から身体を鍛えておいた方がいいよとか(笑)。

藤江先生: 人付き合いがけっこう大事ですよね。当たり前なことかも知れませんが、やっぱり友達は大事ですね。天才以外は、友達と協力し合いながら、教えてあげたりとか、教えてもらったりしないと先に進めないと思います。会話のロボットは、たくさんの技術を詰め込んだものなので、1人で作るのは不可能に近いということもあり、私自身もその大切さを痛感しています。ただ人付き合いが得意である必要はないと思う。そこも疑問を持ってほしいですよね。自分が友達をつくるのが苦手だったら、何でできないのかなって。

訊き手: なるほど、それは大事ですね。社会に出た時にそれは身に染みてわかります。企業に入ってものごとを進めるときに個人プレーはないですね。チームがあってプロジェクトがあって。いろんな分野の人が集まってということを考えるとコミュニケーションは目標達成への大事なファクターですね。

藤江先生: そうです。自分が実際になる前は、研究者は実験室にこもって研究をして、論文を書けばいいのかなって思っていたんですけど(笑)、そういうわけでもないです。結局、人に認めてもらうには、人に伝えなければいけない。みなさん、得意・不得意はあると思いますけど、人付き合いを一生懸命やっていらっしゃる。

訊き手: なるほど。いま目の前にいる友達を大切にするということですね。実感としてそのことが良くわかります。今日は研究のご苦労話やプライベートなことまで楽しくお話くださりありがとうございました。

藤江先生: こちらこそ、ありがとうございました。

千葉工業大学 藤江真也研究室 http://www.fujielab.org

 

「インタビュー 藤江先生に訊く」 藤江研究室ってどんな研究をしているの?Ⅰ

場所: 藤江研究室,日時:2016年秋

今同士の会話に自然に溶け込むことで、人から‹仲間›として信頼され、様々な仕事をこなすロボットの実現」をめざして日夜研究に励む、藤江研究室の藤江真也准教授にお話をうかがいました。

訊き手: 藤江先生、こんにちは。今日は日ごろ研究室で行われているロボットに関する研究のことや、藤江先生ご自身のことをざっくばらんにうかがいたいと思います。先に断っておきますと、興味を持ってここをご覧いただく小学生や中学生、高校生に比べて、訊き手である私にはロボットに関する知識がまったくございません。彼らの中に素人の大人がぽつんと一人参加しているイメージで(笑)、お話しいただければと思います。

藤江先生: わかりました、よろしくお願いします。

訊き手: 最初に、藤江先生の研究室はどんなことを研究しているのですか?

藤江先生: 人とロボットが楽しく会話をする、快適に会話をするという研究をしています。

訊き手: ロボットと楽しく快適にといいますと?私はロボットがしゃべるだけで、感心しちゃうのですけど。

藤江先生: 会話というところがポイントです。コミュニケーションには様々な手段がありますが、その中でも言葉、声を使うことが中心になります。声でコミュニケーションを取るというと、音声を聞いて理解する能力だったり、しゃべる能力があればいいですよね?ちょっと難しい言葉でいうと「音声認識」と「音声合成」という技術さえあればできるかなと思うかもしれません。しかし、実はそれだけではできません。

訊き手: それだけではできない?それはどういうことでしょうか?

藤江先生: 実際に僕が今しゃべる時も、体や手を動かしたり、相手の人をちらちら見たりします。逆に、僕の話を聞いている人も、うんうんとうなずいたり、「おや?」と思うことがあれば表情を変えてみたり、時には驚いてのけぞったりとかしますよね?

訊き手: そうですね。無意識のうちに体や表情など、どこかしら動いています。

藤江先生: 人同士の会話は、場所とか時間を共有しながら、言葉だけじゃないもののやりとりがあって成り立っています。そういう意味で「快適」という言葉を使ったのです。ロボットやスマートホンなどの機械と会話をする機会は多いと思いますが、その会話はどこかぎこちなく「快適でない会話」ではないでしょうか。

訊き手: なるほど。場所や環境、その場の空気を含めて「快適」ってことですね。

藤江先生: そうですね。すぐに人と同じ能力持たせるのは難しいと思うので、「音声認識」や「音声合成」などの技術を中心に、どう能力を拡げていけば「快適な会話」に近づくか?ということを一つ一つ進めています。

訊き手: その「快適な会話」が藤江研究室での基礎的な研究になるわけですね。そこのところも後ほど詳しくお訊きしたいと思います。

千葉工業大学に着任して思ったこと

訊き手: 藤江先生は、2014年に千葉工業大学に着任されましたね。

藤江先生: はい、千葉工業大学に着任して2年半になります。

訊き手: 2014年というと「ロボットの千葉工業大学」というのが社会的にも注目を集めていたと思いますが、着任されて印象はいがかですか?

藤江先生: 研究室を構えるのは初めての経験なのですよ。それまでいた早稲田大学では、自分が学生の時の先生の研究室に所属して、先生が見ていらっしゃる学生の一部、指導教員の先生の研究室の学生のうち10人くらいの学生を受けもって、いっしょに研究したり発表したり面倒を見ていましたなどしていました。千葉工業大学では人数も増えましたし、3年生を受け持つのは初めてです。未来ロボティクス学科の印象ですが、ここの学科は色々な意味で、かなり特殊ですよね。

訊き手: かなり特殊?それはどんなところでしょうか?

藤江先生: 僕は電気工学科で学んだのですが、実習っていうのはあまりなかったですね。電気工学科だというのにハンダゴテを持って電気工作をやることがほとんどありませんでした。ロボットを作るにはそういった工作は避けて通れません。着任してすぐ、1年生の始めの授業「ロボット体験実習」を担当することになり、いきなりこういうことをやるんだなと思い意外でした(笑)。

訊き手: 初めてハンダゴテを持つ1年生は意外と多いと聞いていましたが、それを聞いたら1年生も安心して授業に向き合えますね。

藤江先生: あと、早稲田大学のロボットは比較的大きいですね。ロボットの研究をしている機械系の学科の人たちも、何人かのチームで1体のロボットを製作していました。例えば、二足歩行ロボットとか、発声ロボットとか、1人ではとうてい面倒を見切れないようなものを、チームを組んで作っていることが多かった。ロボットの研究は全てそういうものなのかな?と思っていたら、この学科では米田先生や青木先生、他の先生の研究室でもそうかもしれませんが、1人1体、自分のロボットを製作している。そういうスタイルもあるのだなと思いました。

訊き手: 研究内容にもよりますけど、たしかに1人1体が多いかもしれません。1年生のスタートからロボット製作だったり、研究室で1人が1体のロボットの製作に取り組んでいるのは、藤江先生のご経験からは特殊だったのですね。

藤江先生: そうですね。僕の研究室では、1人1テーマはあるんですけど、みんなで協力して研究を進めることが多いです。例えば、製作する会話ロボットで「音声を担当する人」もいれば「表情の認識を担当する人」もいる。いろいろな技術を集めるので、それぞれ分担しています。僕や大川先生の研究室を希望する人は、基本的にはパソコンを使った情報処理に関係したことをしたい人だと思いますが、中には機械製作の得意な学生もいて、会話ができる小さめのロボットを製作したりもしています。僕自身はあまり機械加工などをやってこなかったので、新しいロボットを製作するのは難しいのではと思っていましたが、学生の得意なところを活かして、会話に役立つしぐさを仕込んだ新しいロボットの製作ができています。色々な特性をもった学生がいることは、研究の幅も拡がるのでとてもいいことだと思いますね。

訊き手: なるほど。だんだん研究室のことがわかってきました。研究室の学生さんはご自分の担当を熱心に頑張っているでしょうね。卒業生はもう出ましたか?

藤江先生: はい。みんな個々に頑張っています。卒業1期生の1人は音声認識の会社に就職しました。研究してきた音声認識の分野で仕事をすることを選んでくれたのは嬉しいと思います。

訊き手: そうですね。研究したこと、好きなことを活かして就職するのは理想的ですね。

子供の頃はどんなことをしていましたか?

訊き手: さて、話題を変えて藤江先生ご出身はどちらですか?

藤江先生: 埼玉県です。

訊き手: 小さなころはどんな子供さんでしたか?

藤江先生: 期待されるような面白いエピソードはないですけど(笑)。どうだろうなー。コンピュータは比較的小さい頃からいじっていましたね。

訊き手: えっ?失礼ですが、その時代は今みたいにコンピュータが一般家庭に普及していない時代ではないですか?

藤江先生: そうですね。父親が買ってきたのが、僕が小学校の5年生ぐらいの時だったと記憶しています。当時はファミコンなどのゲーム機はあっても、コンピュータがある家庭は少なかったかもしれません。

訊き手: ちなみにどこのコンピュータですか?

藤江先生: NECのPC9801という機種です。

訊き手: なるほど懐かしい響きですね。あの時代の匂いがしてきます。

藤江先生: 僕らの世代だと、ぎりぎりフロッピーディスクを知っているか知らないかの世代ですね。大学に入った時は「データを記録する時に使うのでフロッピーディスク1枚持ってきてね」と呼びかけがあったり、なかったり(笑)。PHSやインターネットの登場もそれぐらい。「大学生になってからコンピュータを触った」という人がほとんどで、それより前に触っていたというのはめずらしかったと思います。

訊き手: そうですね、私の住む町でも「あそこの家にはコンピュータがあるんだって。へえーそうなんだ。すごーい。」みたいな真面目にそういう時代でした(笑)。そのコンピュータでどんなことをしていたのですか?

藤江先生: 専門雑誌を買ってきて、その雑誌の中に載っているプログラムを打ち込んだりして。ゲームですけど(笑)。

訊き手: 何事も導入部分は、楽しさから入らないと長続きしないものですからね。

藤江先生: 自分で考えて作ったりもしましたけど、デザインとかゲームをつくるというセンスは無かったので、それはものにはなりませんでした。でも、プログラムに必要な知識は一通りそれで得ましたね。

訊き手: では小学生の時は、家にコンピュータがあってそれに夢中だったと。ロボットとの関連はその時はまったくないのですね?

藤江先生: そうですね。正直に言うと、SFはあまり好きではなくて、ガンダムとかは見ていないです。スターウォーズも見てないし。「ガンダム好き」とか「スターウォーズ好き」の先生がわりと多くいらっしゃいますよね。僕はどちらかというと「鉄腕アトム」が好きです。アトムって人間臭いじゃないですか。捨てられたり、泣いちゃったりとか(笑)。ロボットって言ってもアトムだとかドラえもんだとか、ちょっと抜けている感じの、人と接するロボットみたいな。そちらのストーリーの方が好きですね。

訊き手: 手塚治虫先生の作品には人間を見据えた哲学的なものを感じますしね。では子供のころの夢は何になりたかったのですか?

藤江先生: コンピュータそのものに興味があって、大学で研究室を選んだ時も、「人工知能」というキーワードはありました。今でも人工知能の勉強がしたいという学生は、ひとりでに勝手に育つ知能や機械みたいなものを想像しがちですけど、同じようにそういうものを想像していましたね。そんなものをやりたいなっていうのはぼんやりとありましたね。

訊き手: 藤江先生は、運動とかスポーツはされていましたか?

藤江先生: 中学生の時までバスケットボールをしていました。

訊き手: バスケットボールをやっていた、あるいは今もやっているという先生がなぜか多いですね?大久保先生は研究もされていますし、青木先生も菊池先生も太田先生もやってらっしゃいますね。

藤江先生: 去年のスポーツフェスティバルに出場しましたよ。藤江研チームと教員チームの両方で出ました。しっかり1ゴールずつ得点決めていますから(笑)。小学生の頃は、当時はやり始めていたサッカーをやっていました。バスケットボールを始めたのは、中学の時に兄がやっていたので僕も中学になったときにやってみようかって。人口でいうと、サッカー・野球は多くて、バスケットボールは僕らが中学、高校に入るぐらいの頃、スラムダンク(マンガ)で人気が出てきたような感じでした。

訊き手: 小中も運動をされていて、コンピュータをいじるのも好きだし、バランスがとれていますね。どちらか一方に偏ってとか、閉じこもってとかじゃない?

藤江先生: そうですね。ただ最近は運動不足ですねー。

訊き手: それは先生がた、みなさん同じことをおしゃっていますね。お腹触りながら太ったーとか(笑)。運動してきたことやコンピュータを触っていた、そしていま教員をされているというのは、ご両親の影響を受けたとかありますか?受け継ぐものってあるじゃないですか?

藤江先生: 家にあったコンピュータは、小学校5年とかだったから10歳ぐらいですよね。兄はそのころ大学受験を控えていたので僕ほど触っていなかったと記憶していますが、今はその関係の難しい研究をやっていますね。

訊き手: ある日、お父さんが買ってきたコンピュータ。家にあった1台のコンピュータからご兄弟の将来まで広がってくるお話ですね。高価なものだから触るなよとか、壊すなよって言われなかったことも凄いと思います。

藤江先生: たしかにそうかもしれないですね。

訊き手: お父さんもまったく使わないものを買ってくるわけがないから、ご自分でも興味があったのでしょうね?そういう意味ではお父さんの影響を受けていらっしゃる?

藤江先生: そうでしょうね。単純に理系という意味ではそうかもしれませんね。大学に入るときの学科選びで、自分の中で数学・情報・電気みたいな順番がありました。数学は就職先を見ると、専門家になるか、あるいは全然関係ないものになるかしかなくて、これはちょっと将来不安だなと思って避けました。コンピュータに興味があるので情報が一番自分には合っているとも思いましたが、コンピュータだけだとやはり就職先が限られてしまうのではないかと思いました。じゃあ電気にするかということで、電気工学科にしました。

訊き手: 電気工学科を選んだっていうのは、その先に先生になるという選択肢はあったのですか?

藤江先生: 大学の先生ですか?どういう気持ちだったかはっきりは覚えていないですけど、大学に入る時点では修士課程を終えたら就職すると言っていましたね。僕らの時代は修士課程に半分以上の学生が行っていましたので。その先に博士課程に進むことは考えていなかったかもしれません。

 

IIにつづく

千葉工業大学 藤江真也研究室 http://www.fujielab.org

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