「インタビュー 藤江先生に訊く」 藤江研究室ってどんな研究をしているの?ⅠI

場所:藤江研究室,日時:2016年秋

前回に引き続き藤江先生にお話を聞いていきます。

訊き手: なるほど。さて、研究室の方のお話を少し具体的にうかがいたいと思います。

藤江先生: 始めに説明しました通り、音声を研究している学生、画像を研究している学生、ロボットあるいはシステムを研究している学生がいます。研究の内容としては音声とか画像を扱っている学生は音声から感情を読み取ったり、画像から表情を読み取ったりしています。システムを扱っている学生は、対話システムや会話ロボットを実際に作って、人と自然な会話ができるかを確認するといった研究をやっています。

訊き手: それらの研究は、どちらかというと研究内容としては遠い未来に形ができあがる基礎的な研究というよりも、近いところで形になっていくイメージの研究ですね。

藤江先生: そうですね。

訊き手: ちょっと前までは見たことのなかった画像認識や音声認識も、最近では生活の中で見かける場合も出てきましたね。そういったところのさらに進んだ部分の研究をされているのですね?

藤江先生: そうですね。今まさに巷で、人工知能ブームで、今の技術でやれば何でもできると思っている人も多いと思うんですけど、そう簡単ではありません。問題を見つけるセンス、観察力というものが必要ですし、実際に物を作って使ってみて初めて分かる問題点というのもたくさんあるわけです。例えばPepperをはじめとして市場にロボットが出てきていますが、使ってみて全然ダメだねと言ってポイと捨てちゃうような感じでは研究になりません。その何がダメなのか、ダメとわかったところを埋められるかどうかというところが勝負ですね。とは言え、そのような場当たり的なことだけやっているだけではなく、遠い未来を見据えて研究をすることも大切だと思いますね。

学生時代に身につけたいこと

訊き手: なるほど。藤江先生の研究室の学生さんが頑張っている姿をガラス窓越しに拝見することが多いのですが、研究をするにあたって、これは大事だよって伝えていることは何かありますか?例えば忍耐力とか?(笑)

藤江先生: はい…(かなりの間があって)「疑い」ですかね。

訊き手: 疑いですか。物事に対して常に疑うという視点を持つということですか?“常識”と言われるものにとらわれない、ということですね?

藤江先生: そうですね。ちょっと夢の無い話かもしれませんけど。研究者にとっては大事な視点です。何にでもそういう視点を持つというのは、学生にも必要だと思いますね。1年生の初めに話すときも、伝えるようにしているのです。教科書を信用するなと。教科書すら信用するなって(笑)。

訊き手: 「教科書を信用するな」それは面白いお話ですね。学生さんはどんな風に聴いていますか?うなずいていますか?

藤江先生: 残念ながらうなずいてはいないですね(笑)。先生から「なんでこうなるの?」と質問をされたときに「ここにこう書いてあるから」と答える学生がいることは、他の先生もよくおっしゃっています。多くの人は、大学に入るまでは失敗することや疑問を持つ機会が少なくて、教科書に書いてあることや先生が言ったことはすべて「正しい」と信じ込むというのに慣れてしまっていると思うんです。研究を始めるといろんな論文を読むことになりますが、論文はいろんな人が主張したいことや、実験をやって証明してみましたみたいなことが書いてあるわけです。でもその実験がどれくらい信用できるものなのか?という視点が大事で、絶対鵜呑みにしちゃいけない。

訊き手: 厳しい指摘ですが、おっしゃることは同感します。

藤江先生: だけども、疑問を持たずに鵜呑みすることに慣れてしまうと、「そういう意見もあるかもしれないけど私は違うと思う」とか「私は違うやり方があるのじゃないかと思う」と考えることができなくなってしまうと思うのですよ。そこのところはちょっと鍛えないといけないなって思います。ではどうやればいいかってところは難しいところではありますね。

訊き手: 意図的でも物事に疑問を持つってことを習慣づけるって意外と大事だと思います。

藤江先生: 大事ですねー。

訊き手: 無理やりでもやっていけば、だんだんそういう視点になってくるのかもしれませんね。

藤江先生: バランスが大事だと思うんですけどね。

フィールドにはヒントが隠されている

訊き手: 藤江研究室の紹介ボードが廊下に大きく貼り出してありますね?あそこに介護が必要な高齢者に「漢字の問題を出して回答する…」あれはどんな狙いがあるのですか?

藤江先生: 会話ロボットでフィジカルなサポートは難しいので、会話を活かしてやりましょうという方針がありました。そこで実際、僕と博士課程の学生がいっしょに施設に一日お手伝いに行って、ロボットにできることがないか探しました。そこでやっていた、介護士の方が司会をやって本を見ながら「これは何と読みますか?」と質問をして、高齢者の方が「漢字の読みを当てる」というクイズゲームを見て思いつきました。このゲームは、これをきっかけにみんながワイワイしゃべって欲しい目的があるはずです。ロボットをこの中に混ぜて「盛り上げる」ことはできないか?と考えたんですね。ロボットを司会にして何かやらせるっていう発想が普通だと思うのですが、それは技術的にも難しいし、本来の目的はゲームの進行をするというよりは、面白い雰囲気、楽しい雰囲気をつくることだから、ロボットは高齢者側に入れて「ちんぷんかんぷんな回答」をしたりとか「変なことを言う」と雰囲気が和んで、他の高齢者の方たちが回答しやすくなったりするなどの効果があるんじゃないかって仮説を立てたんです。

訊き手: おもしろいですねー。和ませるのも計算は入っている?

藤江先生: そうですね。今どの問題を出されているかは、人間の司会者がiPadで選んでいるのでロボットはわかっています。その問題に合わせた「面白いエピソード」とか「ちんぷんかんぷんな回答」とかっていうのを適切なタイミングでしゃべるような工夫をしています。みんながじゅうぶん盛り上がっている時は、無理に割って入って変なこと言う必要もないので、ちょっと静かにしています。

訊き手: それは空気を読むってことですか?すごく難しそうですね。

藤江先生: そんなに難しいことはやっていないです。高齢者の方たちはマイクを付けているので、その声が入っているとか、発言が減っていないかとかを見ています。あとは、司会者から話を振られたら言いましょうとか、最低限、参加者としては守るべきことは守ったうえで、ちょっと盛り上げられそうだったら、盛り上げる振る舞いをするようにしています。そういうのはロボットならではだと思います。

訊き手: それは、プログラムを作って実現するのですか?

藤江先生: プログラムですね。もともとロボットはあって、動作などは一通り揃っています。あとは、どういうことを言わせたいとか、どういうタイミングで言わせるかっていうことをプログラムしていくことになりますね。

訊き手: いろんなデータを取ってそれをもとに作り上げていくっていうことですか?

藤江先生: そこまでできれば立派ですね。

訊き手: そこまでは難しいのですか?

藤江先生: 会話のデータをたくさん取って、こうしたときにはこうした方がいいねということを見ていくのが理想的です。音声認識なども大量のデータを集められるようになって発展してきました。しかし、現場に持っていける機会は限られているので、たくさんデータを集めるという方法は取りづらいです。これは会話ロボット、対話システムを研究している皆さん共通の悩みだと思うんです。特に学生の研究の実験では、所属する研究室の学生二十人にアンケートを取ることが限界だったりします。

訊き手: なるほどー。時間とお金がかかるのでデータをとるのが大変だと言うことですね。限られた中でどのように工夫をするか。

藤江先生: そうです。不特定多数の人にお願いをした場合、ありがとうございましたとお礼を言うだけではやってもらえません。限られた条件の中でどうやっていくのかがこれからも苦労するところでしょうね。

訊き手: おじいちゃんやおばあちゃん方との「漢字クイズ」は盛り上がるのでしょうか?先輩方は博学ですから。

藤江先生: そうですね。大変盛り上がります。ただ以前、漢字がとても得意な方が一人いて、うまくいかなかったときがありました。どんなに難しい問題を出してもその人がすぐに答えちゃう。ロボットが用意した面白い回答を言う暇もないぐらい(笑)。

訊き手: なかなかの想定外ですね。今後はどのような方向を考えていますか。

藤江先生: いま研究室にいる3年生の学生のおばあちゃんが、高齢者や認知症の方がいらっしゃる施設で、傾聴という「話を聴いてあげる」ボランティアをしているんです。

訊き手: 最近流行っていますね。

藤江先生: はい、それをロボットにさせられないかな?という話をしていて。

訊き手: なるほど、それはなかなか面白い視点ですね。

藤江先生: それはもともと僕もやろうと思っていたことです。ロボットに「うなずき」をさせたり「相づち」を打たせたりする研究を以前からやっていたので。傾聴のとき、そういったことをどのようにやってあげれば満足するか?ということが分からないので研究テーマとして魅力的です。他の研究者の人達も一生懸命頑張っていて、何かを言ったらそれに対して「適切な質問を返してあげる」とか「感心してあげる」とかそういうことを進めています。

訊き手: そこには、うなずきの他に、顔の表情とか身体の動きとかの関わってくるのですか?広がり過ぎるときりがない?

藤江先生: そこは難しいところですね。人の数だけ様々ですし、表面的に聴いてあげてるよってゆうふうにしていればそれでいいのかも分かりません。

訊き手: 満足度ということですか?

藤江先生: そうです。少なくとも、ボランティアが必要ということは、ぬいぐるみに対して話しかけて満足するということではないはずなので、何かしら反応を返してあげなければいけないということはわかります。しかし、人によっては今まで話したことに対してどう思いますか?と適切に返してあげないと「この人ちゃんと聴いてくれない」と不満を感じるかもしれません。その学生が言うには認知症の程度によっても変わるということです。認知症が重い人は、質問をしたときに満足しているかどうかがはっきりとはわかりません。でも、それでも話しているからそれでもいいかもしれない。一方で、本当の意味で会話をしたいと思っている人は、もしかしたら適当に反応しているだけでは、満足してもらえないかもしれません。

訊き手: 対象が人間である以上、現実を見据える厳しさと優しさを兼ね備える必要があるのですね。

藤江先生: 感心したりすることが機械にできるのかっていう疑問はあって、最終的には人の手が入らなければいけないのかなと思っています。現実的には、人がずっとしゃべるのに付き合っていると時間がどんどん奪われてしまいます。一時的な相手はロボットにしてもらって、録音なり録画したものを自動的にダイジェストにして、今日は太郎さんがこんなことをしゃべりました、花子さんはこんなことしゃべりましたよってことを、職員さんが見て感想を書きとめておくと、それをロボットを介して返してくれるといったこともできるかもしれないと思います。必ずしも高齢者とロボットの一対一で共有した時間だけじゃなくて、周りにいる人たちとうまく連携して高齢者のクオリティ オブ ライフ(QOL)を 全体として上げられるような仕組みですかね。そういう風に考えていかないと、変なものを作っちゃうと思うんですよね。ロボットなのだから何でもやってあげなきゃいけないって発想だと凄く狭いものになるし、満足いくものがなかなかできないってことになっちゃう。

訊き手: そうですね。これは必要な研究であることがわかってきました。

藤江先生: これからますます高齢者が増えるし、人手も足りなくなりますからね。最後は人同士が繋がりたいっていうのがあると思うので、ロボットはクッションのような働きをするのがよいと思います。いまはどうしても相手ができないのだけどっていう人と、今どうしても相手をしてもらいたいっていう人の間にいて、時間をずらして繋がれるように。空間を超えるという発想もよくありますよね。

訊き手: ぜひ良い成果がでることを願っています。

ロボットをもっと勉強したい中高生へアドバイス

訊き手: 中学生とか高校生で、ロボットを勉強したいなと思っている人たちに、中学・高校の時はどんなことをしたらいいよっていうアドバイスはありますか?

藤江先生: どうでしょうねー。さっきの話の続きじゃないですけど、世の中に売っているロボットのキットとか、そういうものを作って、経験するっていうのはいいと思ういます。でも、そこでいろんな失敗とか、いろいろ疑問を持ってみるといいと思うんですよね。例えば電子工作とかで、ここに何オームの抵抗を付けましょうとか、LEDをつけましょうかとか、いろいろ手順は書いてあると思うんですけど、なぜここにこういうものを付けなきゃいけないかとか、なぜここをこう繋げなきゃいけないかって考えられるともっといいと思う。それを取ったらどうなるかとか、切ったらどうなるかとか、そういうことをたくさんやって、壊してみてもいいと思うのです。僕もパソコンを壊したりしました(笑)。そういうことをやっておくと、勉強が楽しめるきっかけにもなりますね。あの時のあれは、こういう理屈で壊れちゃったのかということがよく分かる。

訊き手: その他に何かありますか?例えば大学の研究室に配属されると体力勝負になるから今から身体を鍛えておいた方がいいよとか(笑)。

藤江先生: 人付き合いがけっこう大事ですよね。当たり前なことかも知れませんが、やっぱり友達は大事ですね。天才以外は、友達と協力し合いながら、教えてあげたりとか、教えてもらったりしないと先に進めないと思います。会話のロボットは、たくさんの技術を詰め込んだものなので、1人で作るのは不可能に近いということもあり、私自身もその大切さを痛感しています。ただ人付き合いが得意である必要はないと思う。そこも疑問を持ってほしいですよね。自分が友達をつくるのが苦手だったら、何でできないのかなって。

訊き手: なるほど、それは大事ですね。社会に出た時にそれは身に染みてわかります。企業に入ってものごとを進めるときに個人プレーはないですね。チームがあってプロジェクトがあって。いろんな分野の人が集まってということを考えるとコミュニケーションは目標達成への大事なファクターですね。

藤江先生: そうです。自分が実際になる前は、研究者は実験室にこもって研究をして、論文を書けばいいのかなって思っていたんですけど(笑)、そういうわけでもないです。結局、人に認めてもらうには、人に伝えなければいけない。みなさん、得意・不得意はあると思いますけど、人付き合いを一生懸命やっていらっしゃる。

訊き手: なるほど。いま目の前にいる友達を大切にするということですね。実感としてそのことが良くわかります。今日は研究のご苦労話やプライベートなことまで楽しくお話くださりありがとうございました。

藤江先生: こちらこそ、ありがとうございました。

千葉工業大学 藤江真也研究室 http://www.fujielab.org

 

「インタビュー 藤江先生に訊く」 藤江研究室ってどんな研究をしているの?Ⅰ

場所: 藤江研究室,日時:2016年秋

今同士の会話に自然に溶け込むことで、人から‹仲間›として信頼され、様々な仕事をこなすロボットの実現」をめざして日夜研究に励む、藤江研究室の藤江真也准教授にお話をうかがいました。

訊き手: 藤江先生、こんにちは。今日は日ごろ研究室で行われているロボットに関する研究のことや、藤江先生ご自身のことをざっくばらんにうかがいたいと思います。先に断っておきますと、興味を持ってここをご覧いただく小学生や中学生、高校生に比べて、訊き手である私にはロボットに関する知識がまったくございません。彼らの中に素人の大人がぽつんと一人参加しているイメージで(笑)、お話しいただければと思います。

藤江先生: わかりました、よろしくお願いします。

訊き手: 最初に、藤江先生の研究室はどんなことを研究しているのですか?

藤江先生: 人とロボットが楽しく会話をする、快適に会話をするという研究をしています。

訊き手: ロボットと楽しく快適にといいますと?私はロボットがしゃべるだけで、感心しちゃうのですけど。

藤江先生: 会話というところがポイントです。コミュニケーションには様々な手段がありますが、その中でも言葉、声を使うことが中心になります。声でコミュニケーションを取るというと、音声を聞いて理解する能力だったり、しゃべる能力があればいいですよね?ちょっと難しい言葉でいうと「音声認識」と「音声合成」という技術さえあればできるかなと思うかもしれません。しかし、実はそれだけではできません。

訊き手: それだけではできない?それはどういうことでしょうか?

藤江先生: 実際に僕が今しゃべる時も、体や手を動かしたり、相手の人をちらちら見たりします。逆に、僕の話を聞いている人も、うんうんとうなずいたり、「おや?」と思うことがあれば表情を変えてみたり、時には驚いてのけぞったりとかしますよね?

訊き手: そうですね。無意識のうちに体や表情など、どこかしら動いています。

藤江先生: 人同士の会話は、場所とか時間を共有しながら、言葉だけじゃないもののやりとりがあって成り立っています。そういう意味で「快適」という言葉を使ったのです。ロボットやスマートホンなどの機械と会話をする機会は多いと思いますが、その会話はどこかぎこちなく「快適でない会話」ではないでしょうか。

訊き手: なるほど。場所や環境、その場の空気を含めて「快適」ってことですね。

藤江先生: そうですね。すぐに人と同じ能力持たせるのは難しいと思うので、「音声認識」や「音声合成」などの技術を中心に、どう能力を拡げていけば「快適な会話」に近づくか?ということを一つ一つ進めています。

訊き手: その「快適な会話」が藤江研究室での基礎的な研究になるわけですね。そこのところも後ほど詳しくお訊きしたいと思います。

千葉工業大学に着任して思ったこと

訊き手: 藤江先生は、2014年に千葉工業大学に着任されましたね。

藤江先生: はい、千葉工業大学に着任して2年半になります。

訊き手: 2014年というと「ロボットの千葉工業大学」というのが社会的にも注目を集めていたと思いますが、着任されて印象はいがかですか?

藤江先生: 研究室を構えるのは初めての経験なのですよ。それまでいた早稲田大学では、自分が学生の時の先生の研究室に所属して、先生が見ていらっしゃる学生の一部、指導教員の先生の研究室の学生のうち10人くらいの学生を受けもって、いっしょに研究したり発表したり面倒を見ていましたなどしていました。千葉工業大学では人数も増えましたし、3年生を受け持つのは初めてです。未来ロボティクス学科の印象ですが、ここの学科は色々な意味で、かなり特殊ですよね。

訊き手: かなり特殊?それはどんなところでしょうか?

藤江先生: 僕は電気工学科で学んだのですが、実習っていうのはあまりなかったですね。電気工学科だというのにハンダゴテを持って電気工作をやることがほとんどありませんでした。ロボットを作るにはそういった工作は避けて通れません。着任してすぐ、1年生の始めの授業「ロボット体験実習」を担当することになり、いきなりこういうことをやるんだなと思い意外でした(笑)。

訊き手: 初めてハンダゴテを持つ1年生は意外と多いと聞いていましたが、それを聞いたら1年生も安心して授業に向き合えますね。

藤江先生: あと、早稲田大学のロボットは比較的大きいですね。ロボットの研究をしている機械系の学科の人たちも、何人かのチームで1体のロボットを製作していました。例えば、二足歩行ロボットとか、発声ロボットとか、1人ではとうてい面倒を見切れないようなものを、チームを組んで作っていることが多かった。ロボットの研究は全てそういうものなのかな?と思っていたら、この学科では米田先生や青木先生、他の先生の研究室でもそうかもしれませんが、1人1体、自分のロボットを製作している。そういうスタイルもあるのだなと思いました。

訊き手: 研究内容にもよりますけど、たしかに1人1体が多いかもしれません。1年生のスタートからロボット製作だったり、研究室で1人が1体のロボットの製作に取り組んでいるのは、藤江先生のご経験からは特殊だったのですね。

藤江先生: そうですね。僕の研究室では、1人1テーマはあるんですけど、みんなで協力して研究を進めることが多いです。例えば、製作する会話ロボットで「音声を担当する人」もいれば「表情の認識を担当する人」もいる。いろいろな技術を集めるので、それぞれ分担しています。僕や大川先生の研究室を希望する人は、基本的にはパソコンを使った情報処理に関係したことをしたい人だと思いますが、中には機械製作の得意な学生もいて、会話ができる小さめのロボットを製作したりもしています。僕自身はあまり機械加工などをやってこなかったので、新しいロボットを製作するのは難しいのではと思っていましたが、学生の得意なところを活かして、会話に役立つしぐさを仕込んだ新しいロボットの製作ができています。色々な特性をもった学生がいることは、研究の幅も拡がるのでとてもいいことだと思いますね。

訊き手: なるほど。だんだん研究室のことがわかってきました。研究室の学生さんはご自分の担当を熱心に頑張っているでしょうね。卒業生はもう出ましたか?

藤江先生: はい。みんな個々に頑張っています。卒業1期生の1人は音声認識の会社に就職しました。研究してきた音声認識の分野で仕事をすることを選んでくれたのは嬉しいと思います。

訊き手: そうですね。研究したこと、好きなことを活かして就職するのは理想的ですね。

子供の頃はどんなことをしていましたか?

訊き手: さて、話題を変えて藤江先生ご出身はどちらですか?

藤江先生: 埼玉県です。

訊き手: 小さなころはどんな子供さんでしたか?

藤江先生: 期待されるような面白いエピソードはないですけど(笑)。どうだろうなー。コンピュータは比較的小さい頃からいじっていましたね。

訊き手: えっ?失礼ですが、その時代は今みたいにコンピュータが一般家庭に普及していない時代ではないですか?

藤江先生: そうですね。父親が買ってきたのが、僕が小学校の5年生ぐらいの時だったと記憶しています。当時はファミコンなどのゲーム機はあっても、コンピュータがある家庭は少なかったかもしれません。

訊き手: ちなみにどこのコンピュータですか?

藤江先生: NECのPC9801という機種です。

訊き手: なるほど懐かしい響きですね。あの時代の匂いがしてきます。

藤江先生: 僕らの世代だと、ぎりぎりフロッピーディスクを知っているか知らないかの世代ですね。大学に入った時は「データを記録する時に使うのでフロッピーディスク1枚持ってきてね」と呼びかけがあったり、なかったり(笑)。PHSやインターネットの登場もそれぐらい。「大学生になってからコンピュータを触った」という人がほとんどで、それより前に触っていたというのはめずらしかったと思います。

訊き手: そうですね、私の住む町でも「あそこの家にはコンピュータがあるんだって。へえーそうなんだ。すごーい。」みたいな真面目にそういう時代でした(笑)。そのコンピュータでどんなことをしていたのですか?

藤江先生: 専門雑誌を買ってきて、その雑誌の中に載っているプログラムを打ち込んだりして。ゲームですけど(笑)。

訊き手: 何事も導入部分は、楽しさから入らないと長続きしないものですからね。

藤江先生: 自分で考えて作ったりもしましたけど、デザインとかゲームをつくるというセンスは無かったので、それはものにはなりませんでした。でも、プログラムに必要な知識は一通りそれで得ましたね。

訊き手: では小学生の時は、家にコンピュータがあってそれに夢中だったと。ロボットとの関連はその時はまったくないのですね?

藤江先生: そうですね。正直に言うと、SFはあまり好きではなくて、ガンダムとかは見ていないです。スターウォーズも見てないし。「ガンダム好き」とか「スターウォーズ好き」の先生がわりと多くいらっしゃいますよね。僕はどちらかというと「鉄腕アトム」が好きです。アトムって人間臭いじゃないですか。捨てられたり、泣いちゃったりとか(笑)。ロボットって言ってもアトムだとかドラえもんだとか、ちょっと抜けている感じの、人と接するロボットみたいな。そちらのストーリーの方が好きですね。

訊き手: 手塚治虫先生の作品には人間を見据えた哲学的なものを感じますしね。では子供のころの夢は何になりたかったのですか?

藤江先生: コンピュータそのものに興味があって、大学で研究室を選んだ時も、「人工知能」というキーワードはありました。今でも人工知能の勉強がしたいという学生は、ひとりでに勝手に育つ知能や機械みたいなものを想像しがちですけど、同じようにそういうものを想像していましたね。そんなものをやりたいなっていうのはぼんやりとありましたね。

訊き手: 藤江先生は、運動とかスポーツはされていましたか?

藤江先生: 中学生の時までバスケットボールをしていました。

訊き手: バスケットボールをやっていた、あるいは今もやっているという先生がなぜか多いですね?大久保先生は研究もされていますし、青木先生も菊池先生も太田先生もやってらっしゃいますね。

藤江先生: 去年のスポーツフェスティバルに出場しましたよ。藤江研チームと教員チームの両方で出ました。しっかり1ゴールずつ得点決めていますから(笑)。小学生の頃は、当時はやり始めていたサッカーをやっていました。バスケットボールを始めたのは、中学の時に兄がやっていたので僕も中学になったときにやってみようかって。人口でいうと、サッカー・野球は多くて、バスケットボールは僕らが中学、高校に入るぐらいの頃、スラムダンク(マンガ)で人気が出てきたような感じでした。

訊き手: 小中も運動をされていて、コンピュータをいじるのも好きだし、バランスがとれていますね。どちらか一方に偏ってとか、閉じこもってとかじゃない?

藤江先生: そうですね。ただ最近は運動不足ですねー。

訊き手: それは先生がた、みなさん同じことをおしゃっていますね。お腹触りながら太ったーとか(笑)。運動してきたことやコンピュータを触っていた、そしていま教員をされているというのは、ご両親の影響を受けたとかありますか?受け継ぐものってあるじゃないですか?

藤江先生: 家にあったコンピュータは、小学校5年とかだったから10歳ぐらいですよね。兄はそのころ大学受験を控えていたので僕ほど触っていなかったと記憶していますが、今はその関係の難しい研究をやっていますね。

訊き手: ある日、お父さんが買ってきたコンピュータ。家にあった1台のコンピュータからご兄弟の将来まで広がってくるお話ですね。高価なものだから触るなよとか、壊すなよって言われなかったことも凄いと思います。

藤江先生: たしかにそうかもしれないですね。

訊き手: お父さんもまったく使わないものを買ってくるわけがないから、ご自分でも興味があったのでしょうね?そういう意味ではお父さんの影響を受けていらっしゃる?

藤江先生: そうでしょうね。単純に理系という意味ではそうかもしれませんね。大学に入るときの学科選びで、自分の中で数学・情報・電気みたいな順番がありました。数学は就職先を見ると、専門家になるか、あるいは全然関係ないものになるかしかなくて、これはちょっと将来不安だなと思って避けました。コンピュータに興味があるので情報が一番自分には合っているとも思いましたが、コンピュータだけだとやはり就職先が限られてしまうのではないかと思いました。じゃあ電気にするかということで、電気工学科にしました。

訊き手: 電気工学科を選んだっていうのは、その先に先生になるという選択肢はあったのですか?

藤江先生: 大学の先生ですか?どういう気持ちだったかはっきりは覚えていないですけど、大学に入る時点では修士課程を終えたら就職すると言っていましたね。僕らの時代は修士課程に半分以上の学生が行っていましたので。その先に博士課程に進むことは考えていなかったかもしれません。

 

IIにつづく

千葉工業大学 藤江真也研究室 http://www.fujielab.org

過去のインタビュー